Vol:3 起きてください①
そして、今、現在に至る。
つい最近、引っ越してきた隣に住む、
バカップルによる騒音被害で、一人の時間を過ごせる
夜の平穏が、脅かされている日々。
もはやどこにも、静かに暮らせる場所が、無い。
それが、これまでの竜司の積もりに積もった、
コンプレックスが爆発する、キッカケになった。
今まで、彼が無視してきた現実を、突きつけられたのだ。
パンドラの箱が、強制的に、開かれてしまった。
異性との交際する以前に、そもそも会話がままならない、
低学歴、安月給、童貞...etc
他人を惹きつける魅力やカリスマ性もない事実を、
これでもかと、容赦無く、叩きつけられた。
すでに、それらを抱えられる、容量を超えてしまっていた。
そして、彼が気づいていない間に、精神的な限界も達していた。
「もう、イヤだ...。」
「こんな世界に生きているのに、何の価値がある...。」
遂に、竜司の口から、今まで出なかった弱音が漏れた。
そこから、次々と、これまでの鬱憤が溢れ出す。
ーーどうして、自分ばかり、こんな目に遭うのか?
ーー神様はどうして、不平等な世の中にしたのか?
ーーどうして、こんな辛い目にばかり...
竜司の心は、暗闇に満ちており、慟哭していた。
今、彼自身の生きている人生に、嫌悪している。
すでに、コップの水は、満杯であった。
しかし、それ以上の水が、なおも注がれており、
案の定、こぼれ落ちるかの様に、竜司は、
自身の感情が、吐き出されていく。
「誰でもいいから、この世界を変えてくれよ...。」
もはや、彼自身ではどうしようもない程、
大きな壁が、目の前に、立ちはだかっていて、
誰かの助けがないと、やっていけない心境だった。
ーーこれから先、どんな事が、降りかかってもいい。
ーーただ、このクソッタレな現実を変えられるならば...
ーーその為なら、俺は、何だって、やってやるのに!
不幸とも呼べる、不名誉な人生とは、サヨナラをしたい。
そして、新しく、生まれ変わり、新しい現実を生きたい。
竜司の心の渇望が、奥底から、湧き上がっていた。
しかし、明日もまた、同じ繰り返しの日々がやってくる。
瞼を閉じて、眠りについた後、何時間か後も経てば、
再び、あの、憂鬱な時を過ごさなくてはならないのだ。
容赦、情けのない現実の波が、押し寄せてくる。
ーー分かってるさ。
ーーそんな簡単に変えられるならば、今頃はとっくに...。
何度も、変わりたいと、思ってきた。
だが、竜司は、これまでも、その期待は何度も裏切られ、
打ちのめされてきた、歴史を繰り返してきた。
容易に、現実を変えられたら、とうに、幸せになっているはず。
そう妄想する他、逃げ道がなかったのだ。
巷で、流行っている、ある日突然、異世界に転生したり、
有名人や著名人、勝ち組の子供として生まれ変わる、
ご都合な展開が、フィクションなのも、理解している。
あるのは、クソッタレな日常を、迎えなければならない現実。
ーー分かっているさ。
ーー自分は、そんな特別じゃないって事くらい...。
竜司は、その絶望を前に、唇を噛み締めるしか、
せめてもの、抵抗の手段がない。
どれだけ、目が覚めていても、無理矢理に、目を閉じ、
狸寝入りをして、現実を誤魔化し、否定する。
やがて、眠気に誘われていく中、意識の遠のくと共に、
竜司の感情や心もまた、深淵に沈んでいくのだった。
「起きてください。」
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