第25話 社畜、宇宙人をみつける
「ダンナ様は私と乗るんです」
「とーたんはここ!」
「違います!」
「いやいや、スクーターの運転はオラが――」
「犬は黙りなさい!」
「リーじえっと、シッ!」
落ち込むリーゼントを俺は撫でて慰める。
どうやら俺がスクーターを運転して、ホワイトが後ろに乗るのか。
それともゴボタが押す手押し車に乗るかを争っていた。
しかも、体感的には20分ぐらいは言い合いをしている。
俺も止めたがどっちが良いのかと問われてしまった。
俺としては後ろにホワイトを乗せるのも色んな意味で怖いし、ゴボタの押す手押し車は恐怖だ。
ただ、俺の疲労感にも限界がきていた。
「なぁ、もうそこまでにして拠点に戻らないか? 俺眠たくて意識飛びそうだわ」
普段なら名付けた時にそのまま眠っていたが、今回はみんなに起こされてしまった。
まぁ、何が起きているのかわからない状況で寝るのもどうかだしね。
結局人間みたいな人が犯人だと分かったが、なぜ爆発したのかまではわかっていない。
「もうボスがオラの後ろに乗れば良いんじゃない?」
たしかにこのまま待っていたら、いつまで経っても帰れなさそうな気がする。
俺はリーゼントが運転するスクーターの後ろに座る。
よくよく考えたら犬の後ろに座って、スクーターで移動するのってリスクが高いな。
ただ、すでにリーゼントは行く気満々のようだ。
「ボス、いきますぜぇー!」
――グワアアアア!
聞いたことのない咆哮のようなエンジン音が聞こえると、そのままスクーターを走らせる。
「とーたん!?」
「ダンナ様!?」
そんな俺達に二人は気づいたのだろう。
お互いに顔を見合わせると、ホワイトが手押し車に乗ってゴボタが追いかけてきた。
「私達を置いていくってどういうことですか?」
「ゴボオオオオオ!」
いや、あれは確実に怒っているだろう。
顔が鬼のようになっている。
「おい、もうちょっと速く走れないか?」
「ボス、生粋のツッパリは安全運転だぞ?」
「いやいや、そこは速度制限オーバーして逃げ切れよ!」
相変わらずリーゼントが言う生粋のツッパリはわからない。
ただ、怖い顔をした二人がすぐそこまで来ているのだ。
何をされるのか考えただけでも怖い。
ゴボタは物理的に体がもたないだろうし、ホワイトは本当に何をするのかわからない。
俺が寝ている間に接吻をするつもりだったと言うぐらいだからな。
そもそも幼い少女から接吻という言葉を聞くとは思わなかった。
キスならまだ可愛い感じだが、接吻だと変なものに聞こえてしまう。
そんなことを思っている俺とは反対に、ゴボタとホワイトは楽しそうに何かを話していた。
「ゴボタ、これって大好きな人を追いかけて仕留めるやつじゃないかしら?」
「ゴボォ? しちょめる?」
「ええ、これで私達のダンナ様になるのよ」
「ゴボォ……とーたああああああん!」
何が起きているのかはわからないが、二人してさらに勢いが増している。
ホワイトは魔宝石を両手に持って、何かを放ってきた。
「うおおおおお、風が強いですぅ」
急に風が吹いてスクーターを横に押し倒していく。
一体何のために争っているのだろうか。
ただ、俺も負けじと緑の魔宝石を使って、スクーターが倒れないように持ち直す。
そんな戦いをしていたおかげで、拠点が見えてきた。
「ねぇ、ボスあれはなんです?」
「あれは……鎧って流行ってるのか?」
そこには鎧を着たやつや、ローブを着た人がいた。
まるでゲームから出てきたキャラクター達だ。
俺はそいつらを見ていると、鎧は背中に背負っていた盾を構えて家に突撃した。
「うわあああ、あいつら俺の家を壊しやがった!」
追随するようにローブのやつは杖を構えた。
何かを唱えると、ハンモックに火がつく。
「くそっ!」
遠くからでも見てわかる。
あいつらは俺の敵だ。
やっとできた俺の家に、無限の夢を見させてくれるハンモック。
それをやつらは全て壊しやがった。
それにゴブリンの集落を壊したのはあいつらだろう。
あれは人間じゃなくて宇宙人だ。
人間ならあんな酷いことはしないからな。
するのは会社にいた課長ぐらいだ。
「リーゼント、ゆっくりと近づいてくれ!」
「ボス、任せな!」
さぁ、俺の大事なものを壊した罪は償ってもらおうか。
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