第3話 執事

「.......」


起きたのはまだ日付が変わらない頃だった

目が覚めたとの同時に夕食は準備ができたと言われたが食べる気力はもうないので断っておいた

それにより時間が出来やらなければいけないことが山ほどあった

まずは取り掛かったのは情報集めである

ここを知っている事は記憶で除く限りの情報しかなくこの世界を知るには情報量が少なすぎた

それにはたくさんの知識が必要だがそれに適したこの大きな屋敷の中に書斎部屋中にあった記憶がある



「よしまずは......」


自分の部屋から抜け出して

もし雇っているであろう使用人たちに見っていろいろ聞かれたら面倒になるので

なるべく隠れながら書斎を探す

部屋のドアを手当たり次第開けていると

ついに本が一面に並んである

書斎らしき部屋を見つけさっそくその中に入る

ありとみわたす一面いちめん

本棚ほんだなで埋まっておりその中にはびっしりと並べてある

私はすぐそばにあった一つの本を手に取ってそのまま木の板らしき床に座って見ようとするが......


「そこで何をしているんですか?」


声をかけられ後ろに振り返るとそこに執事らしき服装の一人の白髪の老人が

中腰になって床に座ろうとしていた私を上から見下ろすように見つめ私の感覚が一瞬で凍りついた

その目は日常に感じているようなあの目ではなく目の奥から凄まじい何かを感じる黒い目だった

その執事はいま私が持っている本をチラり見て


「歴史の本をみているのですか?」


そう私に視線を合わせながら距離を感じるような口調で聞いてきた

別に怪しい行動をしていないのでなにか疑われることはないので平然を装いながらそのまま返事を返す


「......そうだ。どうかしたのか?」


相変わらず口調がおかしいままだが気にしないようにする

それにしても誰なんだ

記憶を探ってもあのメイド同様なにも印象に残っていない


「……それにしてもいつからここに?」


......なんだかこの執事が前のめりになりながら距離を詰めているように感じるのは気のせいだろうか?


「......さっき来たばかりだ。」


「......そうですか。......何を読もうとしていたのですか?」


「うん?これだが......」


右手に持っていた本を持ちながら左手の人差し指で示す


「......なぜこれを?」


「?......読みたいから手に取った......それが?」


「読めるのですか?」


なんだ?

いくらこの体が子供でも7歳になったら文字くらいは読める


「......当たり前だろ?」


「そうですか。.......本当にそれだけですか。」


「.......ああ。そうだ。」


「.......わかりました。では私はこれで......」


「.......」


執事が書斎から何やら紙や本を出して手に持ち私に一礼してからその場から離れる......

いったい何だったんだ?

しかしよくわからないものはわからないので放置しておく......


「さてこの本を開いて......うん?」


目を凝らしてじっと見つめるが......読めない

いや文字は読めるだが.......


「何だこの単語は.......意味がわからない。」


どうやらこの本に書かれているものは

専門用語せんもんようごらしきものがほとんどで

到底とうていこの私にはまったくもってわからない.......次の本を本棚から出した


「次は.......これはなんとなくだが分かりやすそうなものが出てきたな。なになに.......」



***



今から昔



遠いはるか昔のことでした



その頃は人間と魔族が争っていました。



魔族たちはこの世のものとは思えない強力な力で人びとを襲い人類をおびやかしました




そんなところに一人の少年が立ち上がりました。




その少年が剣を取ると天を切り裂き



魔法を使えば大地をも叩き割りました




その神の力を宿った少年は魔族たちを圧倒していきました





この少年が後に勇者と名乗り魔族の王

魔王を倒し世界は平和になりました……




めでたし.......



めでたし.......




***




「……」


ありふれた勇者の物語か.......

異世界とはいえこの世界にもそんなものがあるんだな

以前の私......前世の記憶を持つ前の私だがこれが好きだったらしく

話がよく入り込んでくる

今はこんな勇者や魔族など存在いないらしいが.......


「……」



『勇者』と『魔王』



本に書いてあるその二つの単語を眺めていた.......




---------------------------




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る