紋白蝶

紫陽花の花びら

紋白蝶

 菜の花畑の上で、紋白蝶が舞っていた。ゆらり、ゆらり、と羽ばたき、黄色に染まった景色の中で、白を誇っていた。鶯の鳴き声に合わせて、踊っているようだった。紋白蝶は、青空へと昇り、雲の白へと溶けていった。

「あっ」

 その光景を眺め、少年は声を漏らした。

「なにか、あったのかい?」

 と、少年の祖母は尋ねた。少年は口を半開きにしながら、紋白蝶が溶けていった雲を眺めていた。

「今、紋白蝶が……」

 と、少年が言いかけたとき、雲を抜けた紋白蝶が、群青の青空に現れた。空を舞う紋白蝶は、華麗だった。少年は、青空を舞う紋白蝶の美しさに心を奪われ、ただ、それを眺め続けた。すると、少年には、紋白蝶の背後にある青空は、みるみる鮮やかな青に感じられ、青空を舞う紋白蝶は、よりみずみずしい純白だと感じられた。少年の視線の先にある紋白蝶を見つけた祖母は

「あぁ、あれは、綺麗ね」

 と、優しい声でつぶやいた。


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紋白蝶 紫陽花の花びら @ajisainohanabira

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