第三頁 自宅にて朝食を

「……疲れた」


 界刻は戻って早々、自分のベットに雪崩なだれの如く沈んだ。

 脳のエネルギーも体力のも素寒貧すかんぴんだ。ゲームで例えるならHPとMPがどちらもゼロになりかけてGAMEOVER必須である。


「界刻、大丈夫ですか?」

「……お前が働かせたんだろうが」

「ふふふ、心が痛みますねぇ」


 けらけらと笑う相棒が腹正しくて仕方がない。

 コトコトと、何かに詰めている音もする。

 料理上手と設定をあえて組み込んだコイツなら、問題ない味のはずだ。

 最初はその設定を外していたから、凄い物を食べさせられたが。まあ、コイツのことをどう扱えばいいかの勉強になった日でもあったな、最初の頃は。

 ベットから見えるテーブルの上には皿が置かれていく。

 香り的に梅干入りのおかゆが妥当だろう。

 作ってくれた礼として、それ以上の文句は言わないことにした。


丹精たんせい込めて愛情もたーくさん注いだんですから、食べてくださいね」

「……ん」


 界刻は床に座り、テーブルの上に置かれた食事に手を合わせる。

 レンゲを手に取って一口、おかゆの米を口にした。


「……コンソメおかゆか」

「今は、そっちの方が元気が出るでしょう? 梅干の追加は最低でも三つまでですよ」

「20個でもいいだろうが」

「塩分摂りすぎですよ!! 健康に悪いですっ! もう、この梅干マン!!」

「誉め言葉だな」

「疲れてますね、本当に」


 何を言っているんだ、この怪異様は。

 ……梅干しは塩分とクエン酸がとれるから効率がいいだろうに。

 最初の頃は、おかゆすら作れなかったんだよな。


『――悟さん』


 ……ああ、わかってるよ××。

 お前のことを忘れるわけないじゃないか。

 界刻は、ぼんやりと背後にいる大切だった彼女の声に思考を捕らわれていた。

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