第21話

アリーシャが、気だるそうに立ち上がり、オレの横にスッと寄り添い、見上げてくる。

「今日は結構、魔力を使ってしまったな。治療魔法に飛行魔法、オマエの病気の検査に、この・・カ・ラ・ダ」

そう言うなり、オレの尻をペチペチ叩いてくる。

「魔力残量がからっけつ、という訳ではないんだけどさ、少なくなってくると不安なんだ。

オマエにとっては、不快な行為だと分かってはいるんだが・・。この筋肉のお代だと思って、どうだろう? ジョンはOKだと、言ってくれているようだが・・」

アリーシャは、ジョンを指先で、ツンツンと突っついてくる。

魅力的な女性の前で、全裸で立っているのだ。ちょっと前からボッキー・ジョンな状態である。

オレも車に乗っていて、ガソリンが減ると早めに満タンにしたいタイプだ。

気持ちはわかる。

「どうぞ、お気に召すまま。このカラダ、ありがとう。」

「良かった。気に入ってもらえたか」

するとアリーシャは、嬉しそうな笑顔全開で、早ワザを見せてくれる。

あっという間にキスされ、オレは精さんの自動販売機と化した。

アリーシャの白い肌が、また金色に輝きを放ち始める。恍惚とした表情からは満足感が滲み出ている。

「毎回、金色に輝かせてくれるのだな。やはり素晴らしい効力だ。これを知ってしまうと、他の女には渡したくないな。独り占めしたい」

精さんのことではあるが、独り占めしたいなどと言われたら、ちょっとうれしい。いや、かなりうれしい。

「独り占めしてるだろ」

「これからもずっとだ。いや、だめだ。レイラを元の世界に連れ戻って、医療魔法士に診せなければならない」

「戻ったら、もうこの世界に帰って来れないんだよな?」

アリーシャは、宙に目線をさまよわせながら、必死に考えていたが。

「実際今私は、ここにいるのだから、方法はあるのだろうが・・・。

向こうに戻ったら、いろんな研究をしている魔法士たちに聞いてみようと思っているが、この世界に戻って来れるかどうかは、・・・正直、分からない・・・」

アリーシャと視線を合わせることは、できなかった。

「そうか」

「オマエも来るか? 私たちの世界に?」

「オレはいいよ。魔法も使えないし。自分の身も、守れそうにないから」

「・・そうか」

今度は、オレがアリーシャの視線を避けてしまった。

重苦しい空気が流れる中、オレたちはそれ以上この話題 に踏み込むことはできなかった。


体型変化の方は、アリーシャが魔法注入を頑張ってくれたが、オレたちの種族相手では、筋肉の変化が精一杯だった。

この世界の人間を超えるような、スピードやパワーを得ることは、なかった。

元々、ナイスバディが目当てだったので、目的は達成している。ただ、ちょっとだけヒーローのような力にも憧れた。

「確認したいので、もう一度キスさせてくれ」とアリーシャは何かに期待するようなまなざしで聞いてきた。

「ああ、いいけど」

そして口付けと共に、アリーシャは再び脳裡に魔力流を流し込んできた。

それは、まるで雷が頭を駆け巡るような感覚だったが、気絶するほどではなかった。

キスを交わした後、彼女の表情は少し曇っていた。「あれほど魔力を注ぎ込んだのに」と独り言をブツブツ漏らしている。

「どうしたんだ?」と聞いてみると。

「何でもない、大丈夫だ」とアリーシャは言うものの、その返事には自信がない。

「ホントか? まさか欠陥ボディを売りつけたんじゃないだろうな?」

冗談めかして笑みを浮かべたオレに、アリーシャは「そんなことする訳ないだろう。大丈夫だって」と強く言い切った。

しかし、彼女の態度や表情から、何かを隠している様子が窺えた。

何か、追及されたくなさそうな雰囲気を感じ取ったので、オレはそれ以上のツッコミは控えることにした。


「オレ、夕飯の食材を調達に行ってくるから、アリーシャ留守番しててくれ」

「あら、私も一緒に行くわよ」と彼女が言う。その声には軽やかな冗談混じりのトーンが混ざっている。

「気色悪い。似合わねぇー」オレはからかうように言った。

「女の私が、女言葉使って似合わねーとは、どういうことだ?」

「いい男っぷりってことだろ」とオレは言うと。彼女は少し考えた後、小さく笑った。

「それは、褒めてるんだろうな?」彼女の細い眉が軽く上がった。

「当然だろ、オレを疑うのか?」オレは身体の後ろで、人差し指と中指をクロスさせていた。

「一人で、チャチャッと行ってきちゃうよ。レイラを置いて行くの心配だし。それに射精の動画を見て勉強したいって言ってたろ」

アリーシャと二人で、そんなもん見たら、オレがアリーシャを襲いたい衝動に駆られるから、一人で見てくれ。

「そうか。そうさせてもらおうかな」

「電話番号、書いておくから。何もないとは思うけど、何かあったら連絡して」

パソコンと電話の使い方を説明すると、一回で覚えてしまう。

さすが優秀な脳ミソをお持ちで、羨ましいいです。

クルマのキーを手にして、出かけようとすると。

「ちょっと待て、出かける前に念のため、私の乳君を摂取してから行け」

その言葉に驚いていると、彼女が無造作にシャツのボタンを外し始める。

オレは思わず息を呑んで見とれてしまう。

ゆっくりとはだけていく服の隙間から、淫らに露わになっていく、白皙な肌と乳神様。

やれやれ、すでにオレはこのたわわに実った乳神様の虜になっている。

オレは心酔の余り、ひざまずいて静かに両手を合わせ、拝むように乳神様を仰いだ。

「また、何やってんだ。そのポーズは、何の意味があるんだ?」

アリーシャは、困惑の色を浮かべ腰に手を当てて、前かがみになった。

超スライム軟乳の乳神様は、生々しくプルンプルンと揺れ動きまくる。

オレは崇敬の念を込めて、両手をすり合わせ。「ありがたや、ありがたや」と唱えた。

「私のオッパイに言ってんのか? こんなもんの何が有難いんだ? アホか、オマエは」

アホかと、きたか。打ち解けてきてるようで、うれしい。

その撥ね除ける様な物言いが、かえって新鮮で愉快だ。

「おれ、魔法使えないから、手から摂取できないけど?」

「乳首から吸い出せ」

アリーシャは無造作に、オレの頭を両手でつかみ、豊かなバストに押し付ける。

顔面がプニプニの柔らかさに包まれ、オレは天国を味わった。

唇もオッパイに押し付けられてるせいでオレは、もごもごとしか喋れない。

「あの~、乳首に口つけちゃっていいのか?」

アリーシャは顔をしかめつつも大して気にもとめぬ様子だ。

「他にどうやって飲む方法がある? 変なコト言う奴だ」

いかにも当たり前だろ。みたいな感じで言ってくるが、オレからすれば、アリーシャの方がかなり変わり者だ。

しかしそんなアリーシャの非常識な一面が、かえってオレを魅了してしまう。

世間から遠く離れた存在であるが故に、あまりにも単刀直入で率直すぎるその人となりに、新鮮な魅力を感じるのだった。

「じゃ、いただきま~す」

唇に、こつぶちゃんを含み、吸い付くと、母乳がふわりと口内に広がってくる。

強く吸い出さなくても、飲むことが出来た。

だが、その味は、予想外の一言だった。「うーん、おいしくな~い! これは…ちょっと薬っぽいかも?」と、顔を歪める。

それでも、信じて飲み続ける。そして、次の瞬間、何かが変わった。

まるで、頭のてっぺんから足の先まで、充実感が行き渡り、若返ったような軽やかさを感じ始める。

10代の頃の活力と身体能力が甦ってきたかのように感じられ、正直驚いた。

身体の調子が良すぎて、絶好調と叫びたくなるほどだ。

これを、栄養ドリンクにして売ったら、売れるぞ。大ヒット間違いなしだ。

乳神水が出なくなったと思ったら、アリーシャが、オレの頭をオッパイから引きはがす。

唇から、こつぶちゃんがつるんと抜けてしまった。

「そのくらいにしておけ」

「何かすごい。身体が軽くなったよ!」と、驚きの声を上げる。

「もう効果が出たのか? やっぱり、オマエと私は、身体の相性がいいんだな」

オレには、いやらしい意味に聞こえる。

「魔力のない種族にでも、健康にいい効果があるみたいだぞ。でも他種族の者は、飲みすぎると中毒症状が出るから、飲みすぎてはダメだ。私が寝てる間に、盗み飲みとかするなよ」

と、彼女は厳しく忠告する。

「じゃぁ、盗みお触りは?」

「触るだけなら、中毒にならないから、別にかまわないぞ」

オレは、視線だけで、アリーシャのたわわに実ったバストをなぞる。そして彼女から見えないところで、薄く笑った。

へっへっへ。オレはお触りだけで、オッパイ中毒になれる自信がある。と、自分だけの小さな勝利を味わうのだった。


「じゃ、言ってくるからな」

「身体が変化したばかりだ。脳が身体を動かそうとする感覚的と、実際に身体が動く感覚がマッチするのに時間がかかるもしれない。

違和感が出ても、一時的なものだから心配はいらんと思うが、一応注意しろ」

「了解。注意するよ」

オレは、レイラにも行ってくるな~と、手を振る。

アリーシャが、「ケツ出せー」と言うので。何事かと思いつつ、尻を突き出すと。

景気よく、パシーーッと叩かれた。

「よし行ってこい!」

これがオレたち二人の、風習になるのかな。

異世界生まれの圧倒的なパワーがこめられたその一振りは、結構痛いんだけど。

世間離れしたこの女性との日常は、常に予測がつかない出来事の連続だ。

しかしそんな非常識さ故に、新鮮で心躍る思いを覚える。

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