第13話
「私は・・・、男どもは信頼しない」
「そうか・・」ちょっとショックだった。しかし、続きがあった。
「オマエは、私が信頼してこなかった男どもとは大分違うようだ。
銃を渡した時も、精液をくれた時も、治療をしている時も、私の友達のことも、家に来いと言ってくれた時も、オマエは、私のために行動しようとしてくれた。どれも私の世界の男はやらない行動だ」
オレに対しての信頼を示す言葉のように聞こえた。
「私の世界の男は、自分の意見や価値観を周りに押し付け、他人の意見を聞かず、自分のことしか考えずに、自分だけの利益を優先する。うまくいかないと、怒鳴り散らして他人を責める奴ばかりだ」
「ウッワ~。そりゃ、強烈だな」と、結構驚いてしまった。
「私は、それが当たり前で生きて来たから、オマエの方が不思議な存在なんだ」
「オレだって、表面上いい人間を装ってるだけかもしれないぞ」
彼女は、申し訳なさそうな表情をしながら。
「これは私の世界では、マナー違反なんだが、オマエの個人的な情報も少し流れ込んできたんだ」
「もしかして、さっきのビリビリキスの時か?」
「そうだ。私たちの種族の場合、そういう個人的なことは、ロックをかけて他人に渡らないように、脳内で制御するんだ。
だがオマエの脳は低スペックで、そういう制御ができないようなんだ。流れ込んできた情報から、オマエがいい人間を装ってるわけじゃないと、私にはわかるんだ。
なぜなら、脳は嘘をつけないから。だから私は、オマエという男を信用しようと思う」
信用すると言われた喜びと、そんな個人情報まで洩れちゃうのかという困惑とで笑顔が引きつっていると。
彼女が美しい佇まいに改めて、オレをまっすぐ見つめてきた。
「初めての世界で、初めて会う人種だったので、事前にどういう人物なのか知っておきたかったんだ。これからは勝手に個人の情報を抽出したりしない。すまなかった、二度としない」
ほんと、マジメな奴だな。何とか言い逃れしようとか思わずに、正面突破か、でも心地いい。
「ああ、気にするな。オレも自分が悪人じゃないって分かってホッとしたよ」
「いいのか? 私達の世界なら裁判沙汰だぞ」
オレと彼女は、異なる価値観や行動様式を持ってる状態だから、ホントの信頼関係はこれからだ。
「そうなの? では沙汰を言い渡す。裁判はなし。しかし、明日、オレをまた抱っこして空を飛ぶことを命じる。以上」
「そんなことでいいのか?」
「ああ、雪が残ってる山の方に行ってみよう」
「オマエって奴は、ホント変な、いい奴だな」
異なるバックグラウンドを持つ二人でも、お互いの信頼を築くために努力する姿勢があれば、問題ないでしょ。
「これが大岡裁きよ。ここはオレの世界だ。オレ流の男のやり方でやらせてもらうぞ」
彼女の美人顔が迫ってきた。またビリビリ無しのキスだった。
「礼だ」
「1回だけか?」
「1回だけだ」
「ケチだな」
「うるさい」と、人差し指をオレの唇に押し付ける。
笑顔でこんな会話ができる女性は、初めてだ。
何か、映画のワンシーンのように感じてしまった。
やばい、完全にやられてしまった。惚れてまうやろ。
「他にもオレがいい人間だっていう情報は、あったか?」
「あー?、そうだなー。・・・女が好き。女の裸が大好き。女のオッパイが大、大、大好き。ってことかな」
「ゲゲッ? そんな事までわかるのか?」
「オッパイには、こだわりがあるようだな。色とか形とか柔らかさとか。オッパイマニアって言うのか?」
「あのそれは、言いふらさないで」
「口止めのためには、見返りが必要だな。そうだな・・見返りは、せ~・・・」
彼女はもったいぶって、「せ」しか言わない。
「わかった、精液って言わせたいんだろ」
「よし。取引成立。言いふらす相手はいないがな」と、してやったりの清々しい表情をしている。
しまった! と、オレの表情が凍り付く。
今まともな状態なのはオレたち二人だけだった・・。嵌められた。
彼女は、そんなオレの表情を見て、ニコニコ笑っている。
なんだかいいな、この感じ。いい関係、いい距離感なのだ。
凄い美人で、すごくタイプな女性なのだけれど。
異世界人だからなのか、彼女に気に入られようとか、自分をよく見せようとか、尊宅しようとか言う気にならない。
気負うことなく、正直な素の自分でいられる。なんでだろう?
いつもだったら、カッコつけて気を引こうなんて姑息な事をするオレなのに。
こびへつらうことを考えずに済み、何か、対等なのだ。
恋人や夫婦関係ではないから言えることなのだろうか?
彼女の方も、力も能力も男のオレの遥か上を行っているし、魔法まで使える。
でもだからといって、上から目線でオレを見るようなことはしない。
むしろ、オレとこの世界に興味を持ってくれているようだ。
オレも、彼女について知りたいし、話を聞きたい。
そうしているうちに、お互いの文化や価値観に触れて、理解を深めていけるといいんだけど。
異性間、異世界間の親友関係は、成立するのだろうか?
互いに信頼し、尊敬し、支え合い、楽しみ合えるのだろうか?
異世界人だからこそ、オレは、彼女と素直に接することができるのだと思う。
彼女には、恋愛という風習はないけれど、せっかくの出会いだし、絆の様なものが結べるといいな。
でもあれだな・・・。
彼女には、恋愛観的な風習がない。友人だが、恋人ではない。
セックスの習慣もない。
でも射精はする。
・・・ウ~ン・・なんか、変な関係だ。
この先どうなるのか、想像もつかん・・・・楽しくなることを期待するしかないな!
前向き、前向き、っと!
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