第3話

東京が核攻撃されたかと思った。


すぐにスマホを取り上げて情報収集してみると、おかしい・・・? 

ここ数時間内に、更新された国内の情報がない。

それになんだ、この写真や動画は? 外国の空に何かある。それも一か所ではない。

数カ国の人たちが、同じような現象を写真や動画で上げている。

何かの攻撃なのだろうか?

空の一部分が破かれたようになって、別の空が見えている感じだ。

東京が攻撃されたという情報を見つけることはできなかった。

東京がやられたにしても、日本全国が一日でやられるわけないし、何の情報もないなんてことあるか?

現にオレがいるこの場所は被害がない。と窓の外に目を向ける、いつもの景色が広がっているので少し安心した。

いや、おかしい。

もう10時近い。天気の良い日の、この時間なら家庭菜園で作業している人がいておかしくない。

隣の家の、いつも野菜をくれる老夫婦も、外に出てきていない。

オレは勝手口から外に出て、隣の家の様子を見にいくことにする。

外に出て周りを見回すが、誰も見つけられない。人の気配がないと言ったほうがいいかもしれない。

若干、妙な気分を引きずりながら、辺りを見回しながら、歩き出す。


隣の家は、常日頃からドアに鍵をかけない家だったのでドアを開け、あいさつをした。

「おじちゃーん、おばちゃん、おはよう!」と言いながら、聞き耳を立てる。

物音ひとつしない。

どころか、窓のカーテンは閉められたままで部屋の中は薄暗い。

発作でも起こしたのかと思い、呼びかけながら部屋を見て回っていった。

二人は寝室にいた。

呼びかけるが、二人ともピクリとも動かない。

部屋の電気をつけ、二人の顔をを見て腰を抜かした。

死んでる~ぅー! 目をかっと見開いて、天井を凝視して全く目玉が動かない。

うわ~~ぁ~、110番、じゃなかった119番だ。

家の固定電話に飛びつき通報する。

誰も出ない。もう一度だ。

誰も出ない。くそ~なんなんだ、じゃぁ、110番だ。

誰も出ない。

・・・ ハッ⁉ TVの時と同じだ、誰も・・いない・・。

どうなってるんだ?

それにしても、いくら年老いてるとはいえ、寝てるときに夫婦一緒に亡くなるなんてことあるのか?

もう一度、寝室を見に行き、今度は少し落ち着いて、二人を観察した。

二人とも、目を見開いた状態のままで、黒目は一点を見つめたまま、微動だにしない。

こんな死に方あるのかな~? 不思議だ。

「おじちゃん?」呼びかけるが、何の反応も示さない。

今度は、肩に手をかけ揺すってみる。「おじちゃ・・・あれっ? 暖かいな。」

えーと、なんだっけ? 動脈だ、どこだ? 首筋か。弱いが脈が触れてるぞ。

胸は? 動いてるじゃん、よかったよ~。

でも、オレ一人じゃ、どうにもならない。もう一軒隣に応援頼もう。

「待ってろ、おじちゃん応援読んでくるよ」

叫ぶなり、走って家を飛び出す。


しかし、デッカイ違和感を感じる事がある。

あの目、変だよな~、絶対死んだ魚の目みたいに見えるんだけどな~。


もう一軒隣の家の玄関は鍵が掛かっていた。呼び鈴を鳴らしても、誰も出てこない。

まーた、反応なしかよ、何かおかしいな。

居間の方の窓に回ってみることにする。

窓のカーテンが、強い力で引っ張られたのか、斜めに垂れ下がっていて、室内を覗き見ることができた。

(うわっ!)真っ裸の男が・・・なんかフラフラ室内を歩き回ってる。

フラフラ~家具にぶつかり方向転換、またフラフラ~壁にぶつかり方向転換、これの繰り返しだ。

さらに、おかしい事は視界にオレの姿が入っているはずなのに、何の反応もせず、フラフラしてるだけだ。

そして気が付いた。(あっ! この人も目が同じだ)目玉動かず、生気のない死んだ魚の目。

何で二軒とも同じことが起こってるんだ? おかしいだろ!

それに何であんな状態で、歩きまわれるんだよ。

何なのこれ⁉ 怖いと言うより笑ってしまう。

アドレナリンでも出てきたのか、テンションが上がってきた。

オレは、男に向かって大きく手を振った、無視された。

それならオレを、攻撃したりしないってことだよね。

恐怖心より、興味と覗き見の好奇心が勝った。

足元にあった、手のひら大の石を窓めがけて投げつける。

大きな音を立てて、ガラスが割れるが、それに反応する人間は現われなかった。

割れたガラスの隙間から手を入れ、カギを開け部屋の中に入った。

男はやはり何の反応も見せず、フラフラしているだけだった。

部屋の様子を窺うが、特に変わった様子はないように思えた。

鈍感なオレが、気づかないだけかもしれないが。

おっと、床に未開封のコンドーさん発見。・・ということは、あれですね。

寝室を覗いてみると、ベッドの上に、全裸の女性発見。

この人も、死んだ魚の目だ。胸は動いてるから息はしているのか?

と、全裸の女性をまじまじと観察する。

異常な状況下のせいか、オレのお股のジョンは、高血圧にならなかった。

でもなんで2軒ともなんだ?・・・核兵器じゃなくて、細菌兵器か!?

オレもヤバいじゃん、超ヤバイ!! えーと、えとえと、何すりゃいいんだ?

あ~あれだ。炭疽菌騒ぎになるドラマがあったよな、最初に何をしたんだっけ?

あ~・・シャワーだ!家に駆け戻り、風呂場に直行。脱いだ服を窓から捨て、水量全開でシャワーを浴びる。

何が正しいやり方なのかもわからないので、頭からボディソープをかけ全身をくまなく擦りまくった。

泡を流し、指で目をおおきく見開かせ、鏡に映して観察する。

いつもの目玉だよな~、そうであってくれ~!

目玉を上下左右に動かしてみる、一応動いてる、OKだ。

でもなんか、のどがイガイガするような、しないような・・・。

身体を拭き、服を漁りながら、これからどうするかを考える。

どうするどうする? オレもあんな感じになっちゃうのかな?

取り合ず、救急車か、自分のスマホで再度、119番通報するが、やはり繋がらない。

電話がだめなら消防署に直接行くか。それに何か詳しい情報があるかもしれない。

落ち着けー・・・オレ。

車庫に向かって歩き出すが、車のキー忘れた。

そそくさとキーを取りに戻り、今度こそ。

(あー!くそっ!!)免許証の入った財布を忘れていた。

今度今度こそ出発。町までの下り坂を車でカッ飛ばす。


走りながら、周りの様子を窺ってみる。

道路の左右にある畑にも、人は出ていない。

ポツン、ポツンとある住宅の周りにも、人は見えない。

まさかみんな、おじちゃん達みたいに、寝てる間になんか起きたのかな?

ってことは何かー?、あの一軒、一軒の家に死んだ魚の目の人がいるのかな?

救急車1台じゃ、足りないじゃん。

もうダメ。オレは、関わりたくない。消防署に丸投げして・・・。

そもそも、消防署の人たちって無事・・なのか?

電話掛けてみよう。そうだ!、友人に掛けてみよう。友人知人に電話掛けまくる。

(ガ~ン!!)一人も電話に出る奴がいない。

TVもやってない、遠方の友達も電話に出ない、これは、この地域限定じゃないってことか?

もしかして、世界にオレ一人だけだったりして。

映画のアイアムレジェンドみたいに、アハハッ。

と、から笑いしてみるが、胃がムカムカし、えずいてきた。

すると、国道との交差点に到着。

ちょうど青信号だったので、減速しつつ4-3-2とシフトダウンして左折。

加速しようとしたところで、急ブレーキをかけ、くそっ!!と、ハンドルを殴りつける。

「もうなんなんだよー!! 午前11時前の国道だぞ、なんで車が1台も走ってないんだよ!?」

前を見ても、後ろに振り向いても、反対車線を見ても、見通しのいい4車線の国道には・・・。

「オレだけだ・・・、なんだよここは、ラクーンシティか!?」


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