第3話

四日後、俺は再び事務所を訪れた。

 「おはよー」

 事務所の扉を開けると、コーヒーの匂いが漂ってくる。

 「あ、おはようございます、仁さん」

 前回同様、ひょっこりとカウンターから顔を出したのは創太だ。

 「創太、今日、出社じゃないのに来てくれて本当にありがとう。俺が創太のコーヒー飲みたいなんて言ったばっかりに・・・」

 「いえいえ、今日は午後からバイトが入ってるだけなので大丈夫です・・・って仁さん、クマすごいですよ!」

 俺はカウンター席に座ると、荷物を隣の席に置いて、少しでも年齢相応に見られようとワックスで整えた髪型を崩さないように、テーブルに突っ伏した。

 「こういう時に限って、急に仕事って入るよな。まぁ、九割がた親父のせいなんだけど。この間の緊急修正案件の仕事、結局、打ち合わせも付き合わされた・・・」

 「うわぁ・・・お疲れ様です・・・」

 創太がそう言いながら、コーヒーをカウンターに置く。俺は突っ伏した頭を持ち上げて、コーヒーを口に運んだ。

 「あーうまい」

 「それは良かったです」

 ニコニコと創太が笑う。うちに手伝いに来てくれるスタッフの中で、創太は完全に癒し系だ。

 「仁さん、今日の依頼主の模様替え案、どんな感じに仕上がったんですか?」

 創太が入れてくれたコーヒーでじんわりと脳を覚醒していると、創太がちらちらと俺の荷物を見ながら、話しかけてきた。創太は、部屋のインテリア等が好きらしく、俺が作成した模様替え案を見るのも好きらしい。

 「今日の依頼主の希望が、違う部屋にしたいっていう事だったから、五個ぐらいテーマを決めて、そこから三パターンぐらい予算に合わせて選べるように作ってみたけど、どれになるかなぁ」

 そう言いながら、書面にしてきた部屋のパターン図を渡す。

「五個もテーマを考えた上に、予算別に三パターンも考えられるなんて、やっぱり仁さんはすごいです!」

そう言いながらパターン図を見ている創太は、目がキラキラしていて、見ていてなごむ。なんだか今日の仕事もうまくいくような気がしてきた。


 からんっと、扉が開く。

 俺と創太が扉へ視線を向けると、そこには美女が立っていた。腰まである黒髪、前髪は眉のあたりで綺麗に切りそろえられていて、切れ長の大きな瞳は射貫かれそうな迫力がある。

 「久しぶり」

 そう言いながら、その美女、樹里は俺の席から二つほど離れた席へ座った。

 「お久しぶりです、樹里さん」

 そう言いながら、創太は一旦、パターン図をカウンターテーブルに置いて、樹里のコーヒーを準備し始めた。

 「今日、来てくれてありがとう、樹里」

 「予定が空いていたし、別にいいよ。出すもん出してもらうし?」

 そう言いながら、右手で輪っかを作る樹里は、相変わらず、金の亡者である。

 「どうぞ」と言いながら、創太が樹里にコーヒーを出す。「ありがとう、創太君」とにっこりとほほ笑む樹里は、破壊力抜群だ。美人のほほ笑み程、迫力があるものはない。樹里は創太がお気に入りだ。いつも可愛い可愛いと、弟のように可愛がっている。

 「で?今回の依頼に私が呼ばれた理由は?」

 コーヒーをゆったりと飲みながら本題にずばりと切り込む当たり、職業柄を感じる。回りくどいのが苦手な俺からすると、非常に助かる。

 「今回の依頼主が、部屋の写真と文章を読んだ感じ、ちょっと一癖ありそうな感じがするんだ。これが部屋の写真とメールのやり取りね。後、依頼主が若い女性だから、打ち合わせだけでも女の人がいた方がいいだろうっていう、俺の判断」

 樹里に向けた俺のパソコンの画面を、樹里がじっくりと見る。

「確かに。これはなんだか、妙な感じね。この子と部屋の状態が、ちぐはぐな感じがする」

「樹里を呼んだのは、こういう依頼主の心情の変化に敏感かなと思って。今回の依頼主が、部屋をどういう感じに仕上げたいのかという希望がいまいち分からないからさ、打ち合わせはいつも通り、俺が主体でやるけど、サポートしてくれたら助かる」

 パソコンから顔を上げた樹里はにやりと笑いながら自分のスマートフォンを取り出す。

 「仁は、部屋を良くする事には敏感だけど、人の気持ちには鈍感だもんね。そういう事なら・・・・このくらいでどう?」

 操作していたスマートフォン画面を俺の前に差し出す。画面には、予想していた樹里に支払う給金よりも高い金額が提示されていた。ぽちぽちと、俺は金額を下げる。樹里がそれを見て、またぽちぽちと操作する。樹里のスマートフォンが、俺と樹里の間を何度目かの行き来を終え、やっと樹里のポケットの中に収まった。

 「ま、いいでしょ。引き受けてあげる」

 この・・・金の亡者め。

 「お二人共、そろそろ出た方がいいかもしれません」

 俺と樹里のやり取りの間中、パターン図を見ていた創太が、俺にパターン図を返しながら声をかけてきた。時計を見る。確かに、もう出た方が良さそうだ。

 「行くか!」

 パターン図を直しながら俺が席から立つと、樹里も席を立つ。

 「お前!またそんなヒールの高い靴履きやがって」

 席を立つと、樹里のすらりとした長身が目立つ。俺と隣り合うとなおさらだ。そんな俺を見下ろしながら、樹里はふふんと笑う。

 「ちゃんと打ち合わせに行けるようにスーツを着てヒールを履いてあげたのに、嫉妬は見苦しいわよ」

 ぐうの音も出ない。今にも地団太を踏みそうな俺を見て、樹里は楽しそうだ。

 「じゃあ、創太君、行って来るね。またね~」

 「創太、今日は来てくれてありがとう。コーヒーうまかった」

 創太は事務所の入り口まで出てきてくれて、「いってらっしゃい」と、にっこり微笑みながら、送り出してくれた。



「ここか?」

 樹里と電車で移動して、依頼主に送ってもらった住所を元に進む。駅から十五分程離れていたが、一度曲がるだけで、道順はすごくシンプルだった。目の前に現れたのは、六階建ての、ホワイトミルクな建物。俺は間違いがないように、二度程建物の名前を確認する。

 「ここで合ってるみたいだな。よし、行くか」

 俺は気合を入れなおし、入り口の自動ドアをくぐった。樹里も俺の後に続く。その先の自動ドアは、部屋番号を押して住居者に扉をあけてもらうシステムのようで、俺は依頼主の部屋番号を押した。

 「はーい」

 「こんにちは、模様替え屋です」

 「あ、今開けまーす」

 その瞬間、奥の自動ドアが開いた。俺と樹里は、マンションに備え付けてあるエレベーターに乗り込み、依頼主の住む四階を目指す。

 「綺麗なマンションね」

 樹里がそうつぶやいた。同じ事を考えていた俺も素直に同意する。

 「エレベーター内も掃除が行き届いているよな。オートロックだし、女性が多く住んでそうだ」

 「マンションだけ見たら家賃も高そうだけど、駅から十五分離れているって所で、ちょっと安く借りれそう。仕事を頑張れば住めそうな場所ね」

 そんな事を話していると、あっという間にエレベーターは四階について扉が開く。各階に五部屋ずつある造りになっているようだ。依頼主の部屋は四〇一号室の角部屋。

 俺は依頼主の部屋の前まで行き、ちらりと樹里の方を見ると、既に接客用の緩やかな笑みを浮かべながらこくりと頷いた。深呼吸して、チャイムを押した。チャイムから『はーい』と声がする。

 「こんにちは!模様替え屋です!」

 この瞬間、俺はいつも、少しの緊張と、新しい部屋作りにわくわくと胸が高揚してしまうのだった。



 ついにこの日が来てしまった。先日、インターネットで検索していた時、思わず手が止まってしまった「模様替え屋」。私一人では、どうしようもなくなってしまったこの部屋を、どうにかしてもらいたくて。本当はこんな部屋に誰かを呼ぶのも恥ずかしいけれど、あの時の私は藁にも縋る思いだった。とりあえず、見積もり・ご相談フォームに書き込み、今日はいよいよ相談兼、打ち合わせの日。申し込んでしまった事を、ここ数日、何度か後悔したけれど、汚い部屋に帰るたびに、キャンセルする意欲は失われた。この部屋がなんとか綺麗になるならば、と淡い期待を抱いてしまう。

とんでもないぼったくり業者であれば、強い意志で断ろう。自分が納得できなくても、断ろう。業者はおそらく男性だろう。知らない男性を家にあげるのも、本当は気が引けるんだけれど、何かあったらすぐに連絡できるように、常にスマホを持っておこう。そんな事を考えていると、インターフォンが鳴った。私は、不安なんて何もありませんよーっという風を装って、インターフォン越しに返事をする。声はやはり男性だった。うちのオートロックは、エントランスにあるインターフォンを押しても、訪ねてきた人の顔までは見えない。声だけしか聞こえないから、結局、玄関を開けるまではどんな人が訪ねてきたのかは分からないけれど、厳つい男性が来たら嫌だなぁと思ってしまう。

ピンポーンと、玄関のチャイムが鳴った。

 これはもう、お出迎えするしかない。私は、やっぱり何でもない風を装って、玄関の扉を開く。

 「はぁーい」

 扉を開けた瞬間、つい固まってしまったのは、予想していたような人物が、扉の前に立っていなかったからだろう。玄関を開けて、最初に目が合ったのは、まるでスーツを初めて来ましたというような、男の人。学生のような幼い顔に、ワックスでオールバックに固められた髪が似合っていない。もっと圧のある男性が来るかと思っていたけれど、とても目がキラキラしている。身長も高くない。そしてその後ろに控えめに佇んでいる女性は、控えめなのは佇まいのみで、存在感がすごい。女性でも、思わずまじまじと見つめてしまうような切れ長目の整った顔、腰まで伸びた黒髪に眉毛辺りで揃えられた前髪。すらりとしたスタイルで、手前にいる男性よりも身長が高い。

 「わたくし、模様替え屋の六浦 仁と申します。こっちはサポートで来てもらった、藤村 樹里。本日はどうぞよろしくお願いいたします」

 スーツの男性が差し出した名刺を受け取る。名刺には、『代表 六浦 仁』とある。代表!?この男性が?私は、何度か名刺と男性の顔を交互に見る。その私の様子がおかしかったのか、後ろに控えていた迫力美人が、横を向いて噴き出したのを私は見逃さなかった。

 「あの、お邪魔してもよろしいでしょうか?」

 スーツの男性にそう言われ、自分が失礼な態度をとってしまった事に気づいた私は、慌てて謝る。

 「あ、すみません!中へどうぞ」

 「いえ、慣れていますので」そう言いながらも六浦さんは少し残念そうだ。六浦さんと藤村さんは、自分たちのカバンからスリッパを取り出し、部屋へと上がった。

 私は、リビングにあるテーブルに二人を案内した。テーブルの上は、今日の為に片付けてある。部屋の中に散乱している紙袋に関しては、少しづつ端に寄せて、いつもよりも空間を広く開ける事しか出来なかった。テーブル席に座ってもらい、キッチンでお茶を入れる。私がキッチンでお茶を入れる間、六浦さんと藤村さんが、部屋を見回している様子が見えた。スリッパ持参で来てくれていたし、女性を同行してくれているし、とりあえず、少しは安心して話を聞いても良さそうだ。

 「どうぞ」

 そう言って二人の前にお茶を置き、私は二人の前の席に座った。

 「ありがとうございます。では、改めまして、本日はどうぞよろしくお願いいたします」

 ペコリと二人は頭を下げた。「こちらこそよろしくお願いします」と私も頭を下げる。

 「早速ですが、竹下様のご希望が、今と違う部屋にしたいという事でしたが、お間違えなかったでしょうか?」

 「そうですね・・・はい」

 「具体的に、こんな部屋にしたいというご希望はありますか?」

 六浦さんの質問に、私の心がざわつく。どんな部屋にしたいのか、私も自分の部屋がこうなってしまってから、考えなかった訳ではない。でも、これを考え始めると、胸が苦しくなってしまう。どうしようもなく、嫌な気持ちが広がってしまう。私はつい、黙り込んでしまった。

 「・・・答えにくかったでしょうか?すみません。では、このお部屋のどこを変えて欲しいかというご希望はありますか?」

 どこを?全部。まるっとだ。今までの私の部屋じゃないようにして欲しい。もう、この部屋に帰ってきたくない。だから帰ってきても、安らげるような部屋にして欲しい。でも、これをどう伝えたらいいのだろうか?

 「具体的な、特定の箇所っていうのは、特にないんです・・・」

 私は、自分の心情の一割も話せず、また、黙りこくってしまう。六浦さんも藤村さんも、こんな客、困るよね。私は、模様替え屋に申し込んでしまった事を、どんどん後悔してきた。そして、なぜだか怒りも湧いてきた。なんでこんな嫌な事ばかり聞くの?という、理不尽な怒りだ。六浦さんも、これが仕事なのだから、聞くのは当たり前で、特別、嫌な事を聞いている訳ではないのに。質問にちゃんと答える事が出来ない私は、迷惑客になっているんではないだろうか。二人との間に流れる空気が重くて、私は顔を下に向けた。

 「お買い物、好きなんですか?」

 さっきまで六浦さんの隣にただ美しく微笑んで座っていた藤村さんから話しかけられ、思わず「へ?」というまぬけな声とともに顔を上げる。

 「私も竹下さんに送っていただいたお部屋の写真を拝見いたしました。その・・・買い物しただろう、紙袋の量が凄かったので」

 藤村さんは、言葉を選びながら、私に笑いかける。その気遣いに、私は恥ずかしくなって、べらべらと言い訳をしてしまった。

 「あ、お見苦しいものをお見せしてしまって、すみません。実は、今度久しぶりに友人が遊びに来たいと連絡がありまして、あの時は部屋をどうにかしなきゃと焦ってしまって、つい汚いままの部屋の写真を送ってしまいました。・・・その、今も、片付いているわけではないんですが・・・」

 言い訳しながら、私は自分の部屋を見回す。今日の訪問があるからと言って、私は部屋中にばらまいていた紙袋を片付けたわけではない。ばらまかれていた紙袋を、今日は隅にまとめて置いただけだ。

 「今回、お部屋の模様替えをご希望されたのは、お買い物したものを片付けるスペースが欲しいという事でしょうか?」

 「あ、それも間違いではないんですけど、また片付けられる部屋にしたいというか、だから、違う部屋ならまた片付けられるんじゃないかというか」

 しどろもどろになりながらも、私はなんとか言葉を発したが、自分で言っていても意味が伝わるとは思えない言葉の選択だ。なんだか、質問に答えるだけで疲れてきた。次第に、部屋なんか、このままでいいんじゃないかとすら思えてくる。まゆみとは会いたいが、近くのホテルでも取って、そこに泊まってもらってもいいし。その考えが頭をよぎると、私は急速に、部屋と向き合う事が嫌になってきた。来てもらって申し訳ないが、六浦さんと藤村さんにはお断りの話をしてしまおうか。

 私の心情なんか、もちろん、目の前に座る二人には伝わるわけもない。六浦さんは自分のバックから、書類を取りだした。

 「これ、何種類か、部屋の模様替え案を考えてみました。料金に関しても、ご予算に合うように何段階か考えてきています。なので、一旦、予算の事は置いておいて、この中で、竹下さんの理想に沿えるものはありますか?」

 渡された書類に目を通す。六浦さんが考えてきてくれたパターン図は、ほぼうちの家の間取りそのままで、なおかつ、今家に置いてある家の家具の大きさまでぴったり合っていた。

 「すごい」

 思わずこぼれた私の言葉に、六浦さんはやっと少しほっとしたように目元を緩ませた。

 1枚1枚めくってみる。その1枚1枚に、それぞれの部屋の物語が見えるようだった。アジアテイストの部屋には、きっと、アロマよりもお香が好き女性が住んでいるんだろうとか、アメリカンテイストの部屋に住んでいる女性は、きっとロックな曲が好きなんだろうとか、部屋を見るだけでなんとなく想像が出来てしまう。六浦さんに渡されたデザイン案はどれも素敵で、見るだけで楽しい。六浦さんに渡されたデザイン案は5パターンあった。アジアテイスト、アメリカンテイスト、和風、ロココ調、モダンスタイル、そのどれもが素敵だったが、そのどれもに私が住んでいるイメージがもてない。心が、部屋の事を考える事を拒否しているような感覚。

 「・・・いかがですか?」

 私が書類すべてに目を通し終わったのを確認して、六浦さんが私に声を掛ける。

 「どれも素敵です。だけど・・・」

 私が言葉を選んでいる間に、私がピンとこなかった事を沈黙の空気で感じたであろう六浦さんは、「うーん」と腕組みをして考え始めてしまった。

 ・・・断るなら、このタイミングではないか?むしろ、これ以上のタイミングはないのでは?うん、今回はご縁がなかったという事で、とか、もう少し考えたい、と言ってしまえばいい。よし!と私は勢いこんで、口を開こうとしたが、私が口を開くよりも前に、目の前の藤村さんが、考え込んでいる六浦さんの腕をとんとんと叩いた。そして、「多分、根本的な所」と言った。根本的?何の根本?私は開こうとした口を再び閉じたままにし、藤村さんと六浦さんを見つめる。六浦さんは藤村さんの方を向き、困ったような顔で「だよな」とつぶやくと、組んでいた腕をほどき、テーブルの上で手を組み合わせた。

 「竹下さん、この部屋に住んでどのくらいですか?」

 思わぬ方向からの質問に、私は頭の中ですぐに答えが出てこなかった。

「えっと・・・多分、もうすぐ四年目になります」

 おそらく、部屋の更新をしたのが二年前だったから、合っていると思う。

 「なるほど・・・。もしかしてなんですが、元々、お部屋を片付ける事が出来ていたのではないですか?」

 六浦さんの言葉に、向き合いたくない心が、暴れだした。




 部屋のチャイムを押して出てきた竹下さんは、今時の、かわいらしい女性だった。肩まで伸びた髪は緩くウェーブがかかっており、ナチュラルメイクにぱっちり二重、パーカーにデニムというカジュアルスタイル。ネイルはされていなかったが、丁寧に手入れされているだろう爪には清潔感があった。玄関で名刺を渡すといつものように驚かれたが、その反応には慣れている。まぁ、毎回、少しショックは受けるが。

 部屋に入り、リビングのテーブルまで案内された。それまでの道中も、職業柄、部屋の至る所を観察してしまう。写真にあった紙袋たちは、片付けられたわけではなく、部屋の隅に押しやられていた。玄関からちょっとした廊下を通りリビングに入ると、右隣にはカウンターキッチンが設置されていた。キッチンも目ざとく観察する。誰か訪問の予定がある時だけ、部屋を綺麗にする人はいるが、キッチンは割と、汚れが蓄積されてしまう場所だ。匂いや油跳ね等、定期的に掃除しないと、その場限りで掃除をしても、なかなか綺麗にならない。しかし、竹下さんの家のキッチンは、普段からきちんと片付けられている事がわかるぐらい、清潔感のあるキッチンだった。竹下さんが、俺たちにお茶を出すためにキッチンに入る。その間、部屋をぐるりと見まわしたが、良い部屋だと思った。間取りも、置いている家具も。部屋づくりの際、ナチュラルな家具を選ぶ人は多い。嫌な言い方をすると、万人受けする部屋だが、そういう部屋を作る人は、俺の統計上、人を部屋に向かい入れる準備が常に出来ている人だ。部屋には、その人の人柄が出る。竹下さんは、きっと、人が好きな人なんだろう。

 これは・・・謎が深まる。これだけきちんと掃除が出来る人なのに、そして、人を迎えいれる事に抵抗はないはずなのに、なぜ、部屋に紙袋が乱立しているのだろう。

 

竹下さんがリビングのテーブルに戻ってきて、早速、話し合いを開始した。が、話し合いは一向に進まなかった。デザイン案もお見せしたが、良い感触がない。どうするか・・・

途中、樹里が会話に入ってくれた時に、竹下さんが言っていた言葉が気になる。

『また片付けられる部屋にしたいというか、だから、違う部屋ならまた片付けられるんじゃないかというか』

 竹下さんは、確かにそう言った。つまり、以前は片付けられていたという事だ。これは、竹下さんの気持ちに問題があるんじゃないか?俺がそう結論を出した時、隣にいた樹里が俺の腕を叩いた。「多分、根本的な所」と樹里は言った。そうだな、根本的な、「心」の問題。

人の機敏には敏くないが、この部屋をなんとかするには、向き合わなくてはならないよな。

 「竹下さん、この部屋に住んでどのくらいですか?」

 最近住み移ったのであれば、竹下さんにとって、この部屋が使いづらくて片付けられないという可能性もある。

「えっと・・・多分、もうすぐ四年目になります」

 はい、その可能性はなーし。という事は、以前、この部屋を片付ける事が出来ていたという事だ。

 「なるほど・・・。もしかしてなんですが、元々、お部屋を片付ける事が出来ていたのではないですか?」

 俺がそう言った瞬間、竹下さんの顔が固まった。「あ、やばい・・・」竹下さんにとって、これは地雷だったのか?竹下さんの目は、俺を見ているようで、見ていない。意識は竹下さんの奥にいってしまっているようで、向かい合っているのに目が合わない。どうしたものかと、俺はちらちらと樹里を見たが、樹里は竹下さんの様子をじっと見つめるばかりで、俺とは少しも目が合わない。なんだ?この広くはない空間で、俺は絶賛大宇宙一人ぼっちな訳だが。

 空気が俺の身長をさらに縮めてしまうかの如く重くなった頃、竹下さんが口を開いた。

 「確かに・・・以前の私は片付ける事が出来ていました。今はこんなに部屋が汚くなってしまいましたが・・・」

 やっと口を開いてくれた竹下さんに、俺はほっとした。

 「いつから部屋が汚くなったんですか?何か原因に心あたりはありますか?」

 「なんでそんな事を、先ほど会ったばかりの人に言わなくちゃいけないんですか!?」

 突然、語気が荒くなった竹下さんに、俺は思わず目を大きく見開き、驚いた。そして、なんでこんなに怒っているのかは分からなかったが、竹下さん言葉には、「そりゃ、そうだ」と心の中で納得してしまう。

 「すみません、部屋を模様替えする為に、参考になるならと思いまして」

 俺は正直に伝えたが、竹下さんについてしまった火は、なかなか消えそうにない。

 「私は模様替えをしたいと呼んだのに。お悩み相談するなら、プロの所に行きますよ!あなたは模様替えするのが仕事で、お悩み相談に乗るために来たわけではないでしょう?プロならちゃんと仕事してくださいよ!」

 竹下さんの言葉に、怒りが体を駆け巡るのを感じる。「お前がはっきりしないからだろ!」と言いたくなる気持ちはあるが、昔と違い、今の俺は怒りを抑える事も出来るようになった。一方で、「確かに」と納得し、この人はどんな部屋なら満足するのだろうと、冷静に考える自分もいる。

 「申し訳ご「悩みがあるんですか?」

 俺がとりあえず謝ろうとした時、先ほどまでの会話を聞いていたか?と疑いたくなるような、優しい凪のような声で、樹里は言った。

 「え?」

 竹下さんも、怒り返されるでもなく、謝られるでもなく、予想外の空気感を横からぶっかけられたかのような樹里の言葉に、急速に熱が冷えていくのが分かる。一瞬、間があったが、

 「そ、そりゃ、悩みぐらい誰にでもあるでしょう!」

 お、まだ頑張るのか、と思ってしまった俺は、本当に性格は悪いと思う。

 「それは、竹下様、運がいいですね」

 と、にっこり笑った樹里は、自分のカバンをがさごそと探り始め、カードの束を取り出す。

 竹下さんの顔は完全に面食らっていて、完全に顔から怒りは消えていた。「え?え?」と、きょどきょどしている竹下さんは、最初に俺が会った時の、かわいらしい顔に戻っていた。

 「あの・・・何をされているんですか?」

 「模様替え屋です」と訪問してきた人間が、突然カードの束を取り出して、自分の部屋で混ぜ始めたら、誰だってそう言うだろう。

 「先ほど、竹下様が「悩み相談ならプロの所へ行く」とおっしゃられていましたので、僭越ながら、私がそのお役目をさせていただこうかと思いまして」

 その声はどこまでも穏やかだが、突然の出来事を説明するには不十分過ぎる。

 「実は、樹里・・・藤村の本業は、プロの占い師なんです。今回は俺のサポートで同行してもらっていて。あ、でも、腕は確かです。占い師の家系で・・・お代はいただきませんので、安心してください」

 竹下さんは困惑の表情を浮かべた。俺が口を挟めば挟むほど、樹里の独特な神秘的な空気を壊しそうだったので、これ以上は口を開かない事にする。その間も、樹里は慣れた手つきでカードを並べた。俺の言葉は一切聞こえていないようで、樹里は意識をカードに集中させていた。

 「ああ、これは・・・」

 困惑していた竹下さんも、目の前でめくられたカードと、樹里の言葉に、いつの間にか集中している。樹里は、カードからのメッセージを読み解くと、まっすぐに竹下さんを見つめた。つらそうな顔で。

 「竹下様・・・悲しい別れがあったのですね・・・」

 え?そうなの?と、俺は竹下さんを見る。竹下さんは樹里の言葉に、頭よりも先に心が反応してしまったようだ。言葉を発するよりも先に、瞳が揺らいだ。

 「・・・な、なんで・・・」

 その後に続く言葉は、「分かったの?」だろうか。でも特に、この言葉に意味はないだろう。竹下さんの動揺が、樹里の言葉が事実であるという事を物語っている。

 「お別れとともに、竹下様の心が、希望を無くしてしまっているのが見えます。・・・おそらく、恋が終わってしまったのではないですか?」

 樹里がそういうと、竹下さんは、深く、うつむいてしまった。その肩はかすかに震えている。なんだか、いじめているように感じられて、俺は空気に徹する事にした。ちょっと、この場は樹里に丸投げしよう。

 「・・・すごいですね。その通りです」

 ふぅ、と深呼吸をして、竹下さんは樹里を見た。その瞳には、うっすらと水分が浮いているように見える。表面張力が、こぼれないギリギリを保っているようだ。

 「彼とは、付き合いは長かったんです。二年ぐらいかな。当然、結婚するものと思っていました。付き合っていた時は、仕事現場の関係で、バラバラで住んでいたんですけど、結婚前に、お試し同棲をしようという話になって、一緒に住むようになったんです。この部屋で」

 竹下さんはそう言うと、部屋を見回した。俺には見えないが、竹下さんの彼氏がこの部屋にいた時を回想しているのか、悲しそうに、口元だけで笑みを浮かべた。

 「・・・藤村さん・・・彼が、私の元に戻って来る可能性はありますか?」

 樹里は竹下さんの言葉を聞いて、束になったままのカードを続けてめくる、めくる。

 「竹下様、大変申し上げにくいのですが・・・、おそらく彼氏さんは、戻ってこられないと思います・・・」

 二枚カードをめくってもいい結果が出なかったのか、樹里が、頭を小さく左右に動かすと、竹下さんの表面張力は限界を迎えた。流れ出した涙は、綺麗に頬を伝い、ぽとりと落ちた。

 「・・・でも!・・・占いですもんね。当たる事もあれば、当たらない事もありますもんね」

 その声は震えていて、精一杯の強がりのように思えた。

 「その通りです。所詮は占いです。だから今後、どのような展開が待っているのかは、誰にも分かりません」

 笑顔で言う樹里を見て、それ言っちゃうんだ、と俺は思った。おそらく、竹下さんもそう思ったんだろう。涙をこれ以上こぼさないように強がっていた肩の力が、すっと抜けたように見える。

 「当たるも八卦当たらぬも八卦が占いです。だからね、悪い結果は、これからの為の注意事項として、良い結果はこれからの希望として、受け取っていただけたらいいのですよ。人間は、自分でも気づかないうちに色々なモノが絡み合ってしまって、身動きできなくなっている時がありますから。占いは、ほんの少し、その人が行動できるように、背中を押すだけなんですよ」

 樹里の言葉は、とても優しい。その声色と話し方もあるだろうが、ゆっくりゆっくり染み入るように言葉が入って来る。これで実力もあるんだから、それは人気も出るわ。

 「大好きな人と過ごした思い出のある部屋で、日常を過ごされるのはお辛いでしょう。引っ越しをしようとは思わなかったんですか?」

 確かにその通りだ。なぜ引っ越しではなく、模様替えを選んだんだろう。

 「・・・私、今年で二八歳になるんです。周りの友達はみんな結婚していて。私も当然、もうすぐするんだろうと思っていたんです。結婚したら、たいてい、二人で住む為の部屋を探す流れになるじゃないですか?だから今、引っ越すと、結婚できなくなるんじゃないかと思っちゃって・・・。後、純粋に、お金がかかるから」

 竹下さんは肩をすくめながら、「これだけ買い物するんだったら、引っ越した方が良かったかもしれないですけどね」と、部屋の隅に押しやられた紙袋達を見ながら苦笑いをした。

 樹里が一枚、カードをめくる。そのめくったカードを、既にテーブルの上に出ているカードの近くに置きながら言った。

 「カップの五は、愛を失った喪失感や孤独を意味します。そして今めくったこのカップの3は、逆位置なので、恋愛面で言うと、モヤモヤしている状態。金銭面で読み解くなら、不安定の為、無駄使いや衝動買いが増えるという意味になります。多分・・・竹下様のお部屋にある紙袋の中は、そういったものが多いのではないですか?」

 「そうかも・・・しれません。いや、多分、そうです」

 竹下さんは、買った事を後悔しているのか、苦虫を噛んだような渋い顔をしている。

 「お買い物は楽しいですよね。私も大好きです。でも、多分、買い物をしても、喪失感やモヤモヤを消し去るのは難しいんですよ。今、竹下様に必要なのは、物質的なものではない筈です」

 優しい口調できっぱりと言い放った樹里の言葉は響く。俺でさえ響いたのだから、竹下さんの心へは、きっと、奥深くまでがつんと響いたのではないだろうか。

 「・・・でも、物質的なものではないものは、すぐに手に入らないですよね。毎日、家に帰ると不安になるんです。私はこのまま結婚も出来ず、元彼を想いながら、想い出が詰まったこの部屋で、ずっと一人なんじゃないかって。このままの状態で、時間が彼を忘れさせてくれるまで、一体どのくらい待てばいいんだろうって」

 樹里が、テーブルの上に広げられたカードを、再度手元に集めながら、シャッフルする。

 「・・・そうですね、残念ながら、今すぐ不安を取り除く事は、どうしても難しいです。時間は平等に流れていますから。でも、忘れるまでのその期間を、どう過ごすかは決められます。何かを勉強するでも良し、運動するでもよし、自分磨きに時間を使ってあげてもいいと思います。・・・後は、環境を変えてあげる・・・とかね」

 樹里は、急に俺の方を向いて、ウインクする。

 「竹下さんは、希望を失ってどうにも動いていいか分からないとカードで出ていましたが、既に行動されていますよ。現に、私達がここにいるではないですか」

 竹下さんは思い出したように俺の方を向いた。先ほどまで空気と化していた俺は、急に竹下さんと目が合う。竹下さんは、気まずそうにペコリと頭を下げた。

 「六浦さん・・・先ほどは、声を荒げてしまって、本当にすみませんでした」

 俺は慌てて、首を振る。

 「いえ、俺・・・いや、私こそ、無神経な発言をしてしまって、申し訳ございませんでした。私は昔から、人の心情を察するのが苦手で。・・・部屋を読み解くのは得意なんですけどね。あまり頭は良くないので、人の心のような複雑なものが苦手で」

 あははと空笑いをする。俺的には軽い冗談のつもりだったが、「部屋を読み解く?」と竹下さんは純粋に俺の言葉に引っかかったようだ。

 「はい・・・えっと、お部屋の状態で、分析すると言いますか。例えば、竹下さんのお部屋の場合・・・あ、あの、失礼な発言をしてしまったらすみません。不快に思ったら、すぐに言って下さい」

 俺はあらかじめ、自分の言葉に保険を掛ける。その様子を見て竹下さんは、「いえ、大丈夫です。教えてください」と、最初に俺達を迎えてくれた時のような笑顔で、言葉の先を促してくれた。「えーでは、」こほんっと、一呼吸を置く。

 「私は、竹下さんのお部屋の写真を見たときから、違和感がありました。散らかっているというよりも、わざと部屋に荷物をばらまいているような印象を受けて、正直、これはただ単に、お部屋を模様替えしたいというだけではないのではないかと思い、今回、樹里・・・藤村にサポートを頼みました。多分、今ならもうご理解いただけるとは思いますが、藤村は人の心に寄り添う事が得意な人間なので」

 俺が樹里の方を向くと、樹里は竹下さんに向かって、にこりとほほ笑んだ。

 「実際、竹下さんのお部屋に上がらせていただいて、とても良い部屋だと思いました。まず、食器が綺麗に片付けられている。片付けが本当に出来ない人間は、台所等の水回りの掃除が苦手な人が多くて、急遽片付けたとしても、水垢や、油ハネ、匂い等その痕跡は残ります。それから、部屋に置かれている家具。一つ一つ、こだわりを持って選んだのだろうという事が分かります。置かれている家具の色や高さのバランスが良い。シンプルなお部屋にしているのも、こだわりがないというよりも、人を家に招き入れるのが好きで、どんな人が来ても、受け入れられるようなお部屋作りをしたのかなと思いました」

 「すごいですね・・・さっきはプロのくせに、なんて発言をしてしまって、本当にすみません」

 竹下さんは、申し訳なさそうに、再度頭を深く下げた。

 「私も悪かったので、本当に大丈夫ですよ!頭を上げてください!」

 謝罪されると、どうしたらいいのか分からないので、とにかく竹下さんに頭を上げてもらった。

 「先ほど、藤村と話をされていた内容を聞かせていただいて、今回、竹下さんがなぜ模様替えをされたいのか分かりました。『違う部屋にしたい』という意味も。どんな部屋にするか、一緒に考えてみませんか?」

 竹下さんは、「はい」と、答えてくれた。今日一番、明るい返事だった。

 ・・・ところで、この間、樹里は何をしているのかというと、シャッフルし終わったカードを再度、テーブルの上に並べている。

 「樹里、ちょっと俺にもメモを取るスペースをくれないかな?」

 いよいよ、本格的に模様替えの話が出来るぞと意気込んだ俺の気持ちごと無視するかのごとく、返事がない。カードと向かい合っている樹里の集中力はすごい。俺は竹下さんに「すみません、ちょっとだけお待ちください」と伝えると、竹下さんはその様子がおかしかったのか、くすくす笑って「大丈夫です」と言った。そして、「私も、気になるので」と樹里とカードを見つめながら続けた。

 「なるほど」

 今日初めて会った人と二人、樹里の様子を見守るという奇妙な沈黙を破ったのは、樹里の一言だった。

 「何がなるほどなんだ?」

 やっと顔を上げた樹里は、嬉しそうに笑っている。俺と顔を合わせたが、ふふっと、笑顔で俺の問は流された。

 「竹下様、もう少し先ですが、とても良い未来が待っているようですよ」

 樹里の言葉に、「本当ですか?!」と竹下さんは食いついた。

 「ええ、ただ、今より少しだけ、「バージョンアップした竹下様」に、訪れる幸福のようですが」

 「バージョンアップ?」竹下さんは、首をかしげたが、樹里は力強く「ええ、バージョンアップです」と頷いた。

 「別れというものは、辛いものです。でも、自分を見つめる良い機会でもあります。カードは、己を見つめ直す事で、道が開けると教えてくれています。過去に、夢見ていたけれど、忘れていた、あるいは中断した夢はありませんか?」

 竹下さんは、うーんと上を向いて考えているようだけれど、特に思いつかないようだ。

 「大丈夫ですよ。ゆっくりと自分に、向き合ってみてください。ちゃんとご自分と向き合っていただければ、おそらくですが、後、二カ月以内に、動き出したくて仕方なくなるはずです。その時は、周りの意見なんて聞かずに、動き出してください」

 「分かり・・・ました」

 竹下さんは樹里の言葉を受け止めて、色々と思案しているようだ。

 「アドバイスをするならば・・・「結婚」に囚われないで下さい。既に竹下様が持っている物の中に、ヒントはあるようです」

 「それは、私は結婚出来ないという事ですか?」

 不安そうに尋ねる竹下さんを見て、ふるふると樹里は首を振る。

 「いいえ、そうではありません。人は、一人一人、結ばれるご縁のタイミングが違います。周りの人が結婚していても、焦らなくてもいいという事です。きっと、竹下様が自分を見つめて、行動した先に、素晴らしい人との出会いが待っていますよ」

 樹里の言葉に、竹下さんは、今日一番の笑顔を浮かべた。








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