第3話 防衛ーはじまり3

ランニングが終わり一度宿へ戻り水筒が入った母特製手持ちバッグを持ち再度外へ走り出した。弟たちが昔着ていたお古を再利用して作った世界で一つのバッグだ。

行き先は第13公園。昨日からマークしておいた、訓練に最適そうな場所だ。


公園には砂場や鉄棒など一般遊具も設置してあるが、なんと言ってもここは他の公園よりも木々が生えていて、森のような雰囲気の場所なのだ。梅にとって最も訓練に最適と言える環境だ。


なぜなら梅は、生命エネルギー通称ライフとの親和力が高いためだ。


生命エネルギーとは何か、説明しよう。

150年前、誕生した緑獣は、植物、人、家畜等々多くの生物を捉え、光合成の無い夜にも関わらずスクスクと成長していった。そこで当時の学者は『子孫を残そうと危機感を感じた植物が生物が持つ何かしらの栄養で栄養を補給する様に変異したのではないか』と提唱した。その論は次々と現れる緑獣、生物が襲われる件数が増すごとに確信的な説になった。以降、緑獣の狙う生物が持つエネルギーを生命エネルギーと呼び、更に簡略化しライフと名づけた。


またまた説明、ライフの親和力とは何か。

ライフの研究は一世紀以上にも渡り研究され、大気中にもライフは漂い存在している事が判明した。地球自体が生命エネルギーで出来ており地表や植物から大気へと漏れているのだ。

その大気中に漂うライフを自身の体に取り組む効率のことを親和力と称すのだ。


人々は3世代、4世代とライフと共に世代交代し人類もまた進化を遂げてきた。

梅は5世代目、自身のもつライフ能力もそこそこあり、親和力も高い。


親和力は鍛えれば鍛えるほど高くなる。

梅は公園の木々の間にあぐらを描いて座り、背筋を伸ばし目を閉じ深呼吸をする。

体の内側に意識を集中させた後、体外の大気中へと意識を拡大し、漂うライフに集中する。狙ったライフを自身の体に取り組み体内のライフと融合し巡らせる。ゆっくりとゆっくりと。


一時間と少し経ち梅はそっと目を開ける。


「…ふぅ。うん。なんとなく戻ったかな。お腹空きすぎておかしくなると思ったけどライフを貯めたら何とかお昼まで我慢できる程度になった。これぞ母ちゃん直伝、ど根性お食事メニューだな。」


人々はこのトレーニングを瞑想と呼ぶのだが梅は知らない。

その後は、着々と筋トレを始めた。懸垂、ジャンプ、反復横跳びなど梅が自身で考案したメニューをこなしていく。俊敏性、逃避行動が上手くなれればやられるはないだろうと、重点的に訓練している。


「父ちゃんが昔言ってたんだ。『ヤられなければ後で出来ることが多くなる』って。つまりは逃げてもいいって事だ。逃げても後から狙うとか、他の簡単な獲物を狩るとか、選択肢が増えるという事なんだ。集中しなきゃ」


ぶつぶつ言いながらトレーニングを続けていたが時刻が8時近くまで来ていた。

梅は、だんだん周囲の気配が騒がしくなり気になり始めた。

通勤、通学で人々が家から出てき始めたからだ。

梅には人とは違う特殊体質がある。それは気配察知能力が高い事だ。稀に、ライフ親和力が高くなると比例して身体の機関の能力が高くなる。

梅自身もその1人で、母直伝ど根性お食事メニューを行い過ぎて親和力が向上したために特殊体質を得た。。


「…特殊体質はまだ完全にコントロール出来ないからな。今日はもう座学だけにしよう。…明日はもっと早くに宿を出よう。」 



試験まで残り6日。座学試験は、主に数学、栄養学、ライフ理論学、防衛学が行われ他にも適性テストなど性格上のテストも行われる。

梅は適正テストは無視し苦手な数学、ライフ理論学を重点的に復習した。お昼は勿論カロリーマイトだ。今日はチョコ味の気分らしい。

午後も復習の復習を繰り返し、お昼寝を途中で挟みその後も復習を繰り返した。


流石に夜食もまたカロリーマイトは嫌な梅は宿を出てコンビニへと向かった。お腹はぎゅるぎゅると音を鳴らしご飯の催促をしてくる。


「値段的にOKなのはカップ麺とおにぎる類とパン類だけかな。とりあえず試験までの1週間は栄養をしっかり取らなきゃ。1日900円まで…何とかなるか...?

う〜んと、あ!250円のカップラーメンと160円の鮭おにぎり2個!カロリーは結構摂れるね!」


すみませ〜んとレジへ行き会計を済ませて宿へと戻る。とまたお隣さんともう1人活発そうな男の子とすれ違う。こちらも身長が高い。

「あ、こんばんわ。」と挨拶をかけると

「こんばんわ〜」と返事を返してくれた。よく会うな、ま、お隣さんだしな。と気にしない梅。そんな事より早くご飯が食べたいと机へと買ってきた鮭おにぎりとカップラーメンを並べ、いただきます!っとご機嫌に頬張った。


〜〜〜



「なに?せいやん話しかけれてんじゃん。」

「ん?お隣さんやしなぁ仮隊員希望者っぽいし挨拶はするやろ」


「…なるほどねぇ。うんうん。んじゃ今度あったら話しかけてみっか!」

「なんやうんうんて気持ち悪い。好きにしい。迷惑かけたらあかんよ」

「わーってるって」


そんな会話があったとは知らず梅はホクホク顔で温泉へ入り夜の8時にはベットで就寝した。

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