第8話 絶望は性に合わず

 体を起こすことも出来なかったので、寝たままでも食べやすい形にしてもらって出してもらっていました。

 食事の時の視覚の情報って結構大事で、鶏肉だと思って食べていたものが最後の最後で小骨が出てきたことで「魚だったのか!」とびっくり。

 つまり、人間の脳って精密だけど、情報が一つ足りないだけでわりといい加減な補正をしてしまうのかなって思いました。



 入院生活は本来なら有効活用することが出来たはずなのですが、座ることすらできないため手芸や絵を描くことはできず、練り消しを粘土代わりに動物を作ったり、スマホでSNSを眺めるくらいしかできることがありませんでした。


 入院から1か月ほど経過した頃、フォロワーさんが小説を書いていることを知り、スマホで文章くらいならなんとか打てるかなと思い、日頃妄想して頭に浮かんできたネタを文章として整理して書いてみることにしました。


 学生の頃、漫画は描いていたものの、文章での表現ともなると全くの初心者なため、文体について調べたり、自分の文章はこれで大丈夫だろうか? などと悩んだりしつつも楽しい時間に変わって行きました。


 とにかく、頭の中は書いている物語の事でいっぱいになりました。


「退院してパソコンで執筆できたらもっと早く書けるのにな」「早く退院したいな」という気持ちが大きくなっていきました。

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