第6話 手にしたものは……

 絶望のどん底から3か月後くらいには「空いた時間で何かできることはないか」と思い始め、子供の頃から習ってみたかった音楽を始めようと思い立ちます。

 どうにもならない事で悩んでいるくらいなら、新しいことを始めたほうがいいかな~って落ち込んでいる時間が無駄に思えてくるので、立ち直りは早い方です。


 ところが、肩が痛むため楽器の持ち運びも弾くことも叶わないため、歌なら身一つで良いのでは? と、生来の音痴を治すべくカラオケに通い始めました。

(究極の音痴だったのでヒトカラです)


 幼少の頃は歌うことは好きではあったのですが、小学校の音楽の先生が非常に恐ろしくて音楽の授業が恐怖の対象になってしまったんですよね……。

 なのでよくサボっていたので、楽譜も読めないまま大人になりました。

 家で一人でいる時などは気分良く歌っていましたが、カラオケの採点機能を使ったところなんと68点!!

 大好きなアーティストさんの曲だし、ずっと聞いていてしっかり覚えて歌っているのに、採点者(機械)から「原曲をしっかり聴きましょう」と辛口コメントをもらうことが多かったです。


 これがとにかくショックだったのですが、ここでへこたれないのが牡羊座(自分に対して負けず嫌い)。

 土曜日は開店と同時にカラオケ屋に入って5~8時間くらい練習していました。

 足が痛む時は杖をつき、手が痛いときはサポーターをして、毎週ひたすら歌いに行きました。


 努力の甲斐あって、半年くらいでカラオケの点数は68点から80点まで上がりましたが、それ以上は自分の練習ではどうして良いのかわからず、ついに音楽スクールの扉を叩きます。


 まずは体験レッスンとして受け持ってくださったK先生と面談。

「踊れなくなったので、超絶苦手な音楽をやろうと思いまして」という私の話しを聞いて、「よく……その状態から新しいことを始める勇気を出しましたね。それなのに苦手な歌を選ぶのが凄い」と驚かれた後に「歌は絶対上手くなりますから大丈夫ですよ!」とニッコリ。

 その時の私は「歌が上手くなって色んな曲が歌えるようになったら楽しいだろなあ」と浮かれていました。


 その当時は1オクターブの声域しか出ず、歌える曲がとても限られていました。でも歌いたい曲ってそれなりに難易度が高い(だってB’zなんだもの!)。

 もちろん不安もありましたが、いざレッスンが始まると、K先生が褒め上手でやる気にさせてくれるんですよ。

 おかげで、今では3オクターブくらいは出るようになり、歌える曲の幅も広がりました。最高得点も90点台まで出るようになっています。本当に感謝です!

(元来が音痴なので練習サボるとすぐ下手になりますが)


 好きなアーティストさんの曲を歌えるようになったことが何より嬉しく楽しく、その間はやはり痛みを忘れることができ、大声を出すことでストレスの発散と、腹式呼吸で有酸素運動にも繋がるため、体にも良いかなと思って2019年頃までとても熱心にレッスンと自主練習をしていました。


 最初の絶望で立ち上がる時に手にした石は、ダイヤモンドでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る