●SIDE雅
わたしの名前は雅です。
ウェディングプランナーをしており、オペラと古書を愛しています。
28歳になってもまだ、誰か特定の人を愛した経験がなかったわたしですが、最近になって恋に落ちてしまいました。
その対象は大学の後輩であり、今では最も親しい友人でもある美月。
彼女の個性溢れるファッションセンス、自由で明るい性格に引かれてしまったのです。
しかし、その感情を隠し続け、今日もまた、なにもなかったかのように振舞っています。
そして今、私たちは高層ビルのエレベーターの中、地震によって閉じ込められたのです。わずかに点る涼しげな照明に緊張や不安がじわりと浮かび上がっています。
祐介さんが、みんなを気遣うように声をかけてくれました。
「みんな、まずは深呼吸しよう。大丈夫、すぐに救援が来るはずだから」
渉さんも息を切らせながら反応し、「はぁ...はぁ...ですよね、祐介さん!」と返しました。
私は、控えめにけれど力強く言いました。
「間違いなく助かりますわ。私たちだけじゃないですもの」
心の中で、自分にも言い聞かせるかのように。
美月が祐介さんをちらりと見ると、「祐介さんがいれば何とかなる……かも」とつぶやきました。
少しの静寂の後にエレベーターがまた揺れました。
そんな中、渉さんが美月さんに向かって、「大丈夫ですよ、美月さん。君が教えてくれたダンス、ここでも役に立つかもしれませんよ。」とぼけたことを言って、緊張を和らげようとしました。
そして祐介さんが、全員を落ち着かせながら、「リーダーとして、僕が落ち着いていないとね。渉、ガジェットは苦手だけど……エレベーター操作くらいならどうにかなるんじゃないかな?」と話した時、私は少し温かな気持ちになりました。
私が美月に優しく微笑んで言いました。
「まぁ、ファッションの話でもしましょう。美月ちゃんが作ったドレスの話」
実はそれは、彼女の事をもっと知りたいから。
エレベーターが再度激しく揺れ、アラート音が鳴り響くと、渉さんがパニックになり、「くそっ、これはヤバいんじゃ……」と言葉を失いました。
祐介さんは冷静に、「大きな声ではないけど、大丈夫、渉! 君の勇敢さにはいつも助けられているからね。」と励ました。
それから、私は何よりも愛する人のことを考え、「大丈夫、みなさん。愛する人のためにも、平静を保ちましょう」と言いました。
その「愛する人」とは、内心では美月のことだったのです。
アラート音が止まり、しばしの静寂が戻ってきました。
祐介さんが和やかに、「さて、これからのことを考えるための良い機会かもしれないね。恋心、秘密……聞きたいことがあるだろう?」と提案しました。
渉さんが興味深げに「秘密の交換ゲームはどうですか? 始めましょう!」と盛り上げてくれたのですが、私は照れ隠しで「それは……ですけど、どうかな、美月ちゃん?」と反応しました。
彼女が少し赤面しながら「あら、それじゃあ、私の失敗話から始めます?」と言いました。祐介さんも温かく「秘密はそれぞれある。みんな、普段は隠しているものなんだね。」と話しました。
私は祐介さんを見ながら心の中で思いました。
「みんなそれぞれに重い思いを抱えて……」
そして、美月ちゃんにも伝えたいことが……。
非常通報装置が作動し、外部からの声が聞こえました。
「皆さん、救出作動を開始します。危険ありませんので、落ち着いてください」
そして、救助隊の到着と共に、渉さんは安堵して、「最後に笑えれば、それでいい。助かった……!」と話しました。
美月はニッコリとしながら「秘密の交換ゲーム、続きは外で!」と言いました。
祐介さんはリーダーとして、「今回のことは、一生の思い出になるね。皆のために、どんなイベントも成功させるよ」と私たちを鼓舞しました。私は感謝の意を込めて「ありがとう、みんな。これからも、支え合おうね」と皆に伝えました。
エレベーターの扉が静かに開かれると、安堵の光が中に満ち渡りました。みんなで「助けていただき、ありがとうございます!」と声を合わせました。
救助隊に導かれてエレベーターから出るわたしたちですが、それぞれ抱えた秘密と恋心は、まだ語られぬままでした。
しかしその秘密が、今後どう展開するのか、その可能性に胸を躍らせながら、希望に満ちた未来へと一歩を踏み出したのでした。
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