●SIDE渉

 こんにちは、僕の名前は渉。

 26歳で、イベント会社で働いてる。

 日々、スノーボードに機械いじり、あとは……実は、奨学金の返済で夜遅くまでアルバイトを掛け持ちしている。誰にも話さないでいるけど、それが僕のささやかな秘密だね。

 でも、今は別のことで胸がいっぱいだ。それは、美月さんへの恋心。僕の中でどんどん大きくなってるんだ。この気持ち、もう僕は抑えられる自信がないんだ……。

 さて、今、僕たちは高層ビルのエレベーター内に閉じ込められている。非常停止ボタンの赤いランプがぼんやりと不安な光を放っている中、静かだけどはっきりとしたリーダーシップを発揮する祐介さんが言った。

「みんな、まずは深呼吸しよう。大丈夫、すぐに救援が来るはずだから。」

「はぁ……はぁ……ですよね、祐介さん!」

 僕は息を荒げながら彼の冷静さに感謝する。

 祐介さんはいつも僕たちをしっかり支えている。

 雅さんが微笑んで付け加える。

「間違いなく救われますわ。私たちだけじゃありませんもの」

 美月さんの目が、僕とは違う意味で祐介さんを見ている。

「祐介さんがいればなんとかなる……かも」

 僕はなんとか気を取り直そうと、美月さんに声をかける。

「大丈夫ですよ、美月さん。君が教えてくれたダンス、ここで役に立つかもしれないし」

「リーダーとして、僕が落ち着いていないといけないね。渉、ガジェットは苦手だけど……エレベーター操作くらいならどうにかなるんじゃないかな?」

 祐介さんが微笑みながら僕に期待をかけてくる。 雅さんが美月さんに話しかける。

「まぁ、ファッションの話でもしましょう。美月ちゃんが作ったドレスの話」

「(小声で)ああ、返済しなきゃいけないものもあるし……ええ、そうですね、話しましょう。」

 美月さんは過去を思い返しながら答える。

 突然、エレベーターが激しく揺れアラート音が鳴り響く。

「くそっ、これはヤバいんじゃ……」

 パニックになる自分を感じる。

「大きな声ではないけど、大丈夫、渉! 君の勇敢さにはいつも助けられているから、今度は僕が……」と祐介さん。

「大丈夫、みなさん。愛する人のためにも、平静を保ちましょう」と雅さん。

 愛する人……美月さん、その言葉が心に突き刺さる。

「愛する人……そうね、祐介さんや、みやびちゃん……」

 アラート音が止まり静寂が訪れたとき、僕はやっぱり思うんだ。

 美月さんのことばかりで。 秘密の交換ゲームを始めようという祐介さんの提案。いいかもしれない。この緊張をほぐすのにちょうどいい。

「俺はたいして……でも、祐介さんっていつも何かを抱えてるように見えるんです。」

 心を開放して笑い合い、僕たちは皆、見えない絆で結ばれていることを再認識する。 「そしてそれが、新しいスタートになるかもしれません。」

 新しい未来へ向けての希望を胸に抱きながら、僕は美月さんにもっと近づきたいと願う。 救助隊の声が届き、安堵感が全身を包む。

「最後に笑えれば、それでいい。助かった……!」

 秘密の交換ゲームは、また外で続けよう。新たな関係の始まりかもしれないと思うと、胸が高鳴る。

 そして、バレないようにしていたけど、僕の秘密、美月さんへのこの恋心、いつ日の目を見るのかな。エレベーターのドアが開き、僕たちは新しい一歩を踏み出すことになる。

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