第51話 王女の凱旋
王族復権の式典では、羽衣装束姿のルーアンに、多くの国民から歓喜の声が上がった。ルーアンの隣で、第二王妃の地位に戻ったエトリアが、「貴方には本当に辛い想いをさせてしまいました」と、国民の前で頭を下げた。
「お母様……」
スザリノもルクナンも、今まで冷遇され続けてきた母の気持ちが、痛い程分かっている。そして、宰相のクーデターにより母の地位が向上し、自分達の処遇も大きく変わったことに、後ろめたい気持ちでいたことも分かっていた。それでも、エトリアがルーアンをメイドとして扱っていたのには、理由があった。
「何もかも、私がいけなかったのです。私の弱さや脆さといったものが、宰相に頼るしかない王妃を作り上げてしまったのです。あの方は、私の為にミーナ様を無実の罪で追放したのです。体の弱いカーヤ王女も地球に追放し、貴方も人質という名目でメイドに落としました。私が貴方に辛くあたっていたのは、王族という名から、貴方を遠ざける為だったのです。宰相は貴方が王族というプライドを捨てられなければ、更なる身分に落とすつもりでいたのです。ですから、貴方を人目に触れさせるような大きな宴には参加させず、貴方が宰相の神経を逆撫でしないようにと、メイドとして接してきたのです……」
エトリアは王冠を外した。煌く宝石が散りばめられたそれを見つめ、「追放されるべき王妃は、私の方」と呟いた。ルーアンはその王冠を静かに手に取ると、それを再び、エトリアの頭に乗せた。目を丸めるエトリアに、「国民は、エトリア様を王妃のままにと望みました。私も、それを強く望みます」とルーアンが笑った。
「ご立派ですぞ、るうあん王女」
表舞台には姿を現さず、ルーアンの凱旋を見聞していた地球よりの視察団三名。目に涙を浮かべる
通告令が解かれ、ルーアンの艶やかな姿に感銘を受けた国民の間で、再び羽衣ブームが訪れた。数を増した需要に、あっという間に在庫ははけ、町外れの仕立て屋は、フル稼働で機械を動かしている。
羽衣ブームの再来により、『第一回羽衣美女コンテスト』が開催された。主催者は勿論、地球よりの視察団――
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