49 元悪役令嬢 マイル
私達はモンスターを操るテイマーが盗賊の中にいると考え、盗賊団退治とモンスター退治を同時に行う事にした。
盗賊の出没する地域は目ぼしい地域はホームの持ってきた地図からこの近くの街道沿いにあると特定した。
「伯爵様、お願いがあるのですが」
「……お願いとは何でしょうか、ユカ様」
私には考えがあった、自身をオトリにする事で盗賊をおびき寄せようという事だ。
「商隊に相当するだけの食料と日用品などを貸してほしいのです! もちろん借りるだけですので用事が済めばお返し致します!」
「なるほどね、確かにそれはいいアイデアだ。だが、商隊を動かすには実際に商人がいないとなると盗賊団もオトリだと見抜いてしまうのではないかね?」
! 迂闊だった。確かに商人がいないと獲物の商隊だと見られず、オトリ作戦にならない。だが、そんな危険な事をやろうとして普通の商人を雇っても途中で逃げられたり死なれたりしてしまっては作戦失敗だ……一体どうすれば……
「私なら良い商人を知っているんですがね、どうですか? お嬢さん」
「!!!?? なななな、あーしの事? あーし商売なんてやった事ない賞金稼……」
ゴーティ伯爵がマイルさんの猫耳の裏を優しくなでた
「ひゃんっ! はうあぅ」
何故ゴーティ伯爵がマイルさんの弱い場所を知っているのだろうか?
「ハハハ……やはり変わってないね、ディスタンス商会のお嬢さんっ」
「なにすんだよーっって……伯爵様……、ってゴーティ兄ちゃん!!?」
「思い出しましたか、マイル・ディスタンスさん。お父様の事は残念です」
「あーし……、いや、私はもうディスタンス商会の次期会長でも何でもありません。ただの市井の賞金稼ぎです。もう過去の事は忘れました」
「残念ですよ、貴女の才能が有れば商会はもっと大きくできたはずですのに……」
「いいえ、伯爵様。私には父さまみたいに人を使う能力も見る目もありませんでした」
私達はこの二人の会話をじっと見守っていた。マイルさんは話す声は同じなのに今までとしゃべり方がまるで別人だった。これが本来の彼女だったのだろうか?
「しかしあのわがまま娘がこれだけ立派な淑女になったのに、その直後に商会を乗っ取られるとは……」
「私が自身の能力もわきまえず青臭い理想論を出した為です。奴隷商との取引をやめたり、脱法の薬を生産中止させたり……それを私に恨みを持つ相手を利用した番頭のフィートに利用されたんです」
この二人にどういう過去があったのか私は分からないので少し訪ねてみる事にした。
「あのー……お二人は一体どういった関係なのでしょうか?」
「ユカ様、実は私が騎士団長になったばかりの頃、彼女の父親の経営していたホテルに中隊で宿泊した事がありましてね……それ以来の縁だったのですよ」
「それまでずっとわがまま放題だった私はその態度を窘められて若い日の伯爵様に平手打ちをされました。その時は伯爵様を逆恨みしましたが、それまでの自分がどれだけ人を苦しめていたのかを彼に知らしめられたのです」
私はそれを聞いて伯爵との出会いはマイルさんにとっての人生の分岐点になったわけだと思った。
「その後、私は心を入れ替えて勉強に取り組み、父さまのような立派な商人の跡継ぎになれるように努力しました、その甲斐あって私はディスタンス商会の拡大化に少しずつ成功していたのです」
「彼女は私に勉強を教えてもらう為に真面目に取り組みました。そして才覚を発揮していったのですよ」
「ですが、私はそれまで多くの人を苦しめていたので天罰が下ったのですね。父さまは商談の旅行中に事故死、私が立ち上げようとした新事業は番頭のフィートと組んだ当時弱小だった敵商会の娘にそっくりそのまま横取りされたのです」
なんだかドロドロの陰謀劇が行われている様子がうかがわれた。
「そして……その娘は私がかつて通っていた学院でいじめていた子だったのです。私はその子に復讐されたわけです」
なんと、マイルさんは元悪役令嬢だったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます