48 モンスターとテイマー

 作戦会議の結果、私達はまずモンスターを倒す事にした。伯爵領に出没するモンスターは人も襲うがむしろ食料を積んでいるようなキャラバンや定期便の馬車を重点的に襲うのだ。


 これはどう考えても自然のモンスターの動きではない、普通のモンスターは徒党を組むような連中はゴブリンやコボルド、オークといった亜人種と言われるタイプか闇の眷属になったダークエルフや原住民くらいのものである。


 しかしどうやら伯爵の元に寄せられた嘆願書をいくつも見せてもらったところ、マンティコア、ツインキマイラ、レッサータウロス、オーガー(!?)といった単独で生活する縄張り意識の高い生き物がちらほらと目撃されているらしい。


 これらのモンスターはどれもB級、C級クラスで通常のゴブリンやコボルドといったD級モンスターよりは強く、一般人ならすぐになぶり殺しにされて食べられるレベルの怪物である。


 しかし、依頼はそのモンスターに襲われたはずの人達からの物が大半だったのだ。これに違和感を感じるのが冒険者、感じないのはモンスターの生態をあまり知らない人と言えるだろう。


「これってさー、なんだかおかしくないかい?」


 流石である、マイルさんはこの嘆願書のおかしさに気が付いていたのである。


「マイルさん? おかしいとはどういう事ですか? 僕には分かりかねるのですが……」

「まあ貴族の坊ちゃんには分からないだろうねぇ、普通このレベルのモンスターに襲われたら生きていられる方が不思議なくらいヤバい連中ばかりだって事さね」


 ゴーティ伯爵がうなずいていた。流石は元騎士団長である。


「お嬢さん、よく気が付きましたね。そうです、これは通常のモンスターの動きではありません」

「お父様、わたくしこれは操られたモンスターの仕業だと見たのですが」

「ルーム、気が付いたか。そうだ、これはテイマーの仕業だろうね」

「それなら簡単な事ですわ、テイマーを徹底的に打ちのめして差し上げればモンスターは野生に戻り森や洞窟に帰るでしょう!」

「ルーム、残念ながらそれでは落第だ。モンスターの生態学をもっと勉強しなさい」


 ゴーティ伯爵の言う事はもっともであった。テイマーの支配から逃れたモンスターは確かに森に戻るかもしれない、しかし支配から逃れた途端新たな縄張りを作る為に目の前の食料や運び手の人間や馬を手当たり次第に襲い、餌にする方が先である。


 さらに酷い結果としては、その場に居座ったモンスター達が新たな縄張りを作りその場で繁殖したが最後、大量のモンスターの巣窟が出来上がり、その街道は二度と使えなくなってしまうのだ。


「確かにテイマーを倒さない限り、新たなモンスターがどんどん使役されて増えてしまいます。しかしB級C級モンスターを操るのはそう簡単な事ではありません。相当の精神力が必要になります」

「ユカ様、それではどの様になさるのでございますか?」

「ルーム、ボクの考えではB級C級モンスターをみんなで倒して新たな使役をするための精神力を無駄遣いさせる、そしてテイマーがスキルを使った直後に倒して新たに使役される寸前だったモンスターが混乱中に全部を倒す! これでどうかな?」


 私がルームを呼び捨てにした瞬間、ゴーティ伯爵の眉が少しだけピクッと動いた。しかしその後伯爵は、私の意見を納得した様子で聞いていた。


「流石はウォール戦士長のご子息ですね。モンスターの特徴をよく捉えています、その作戦なら確実にモンスターもテイマーも一網打尽に出来ますね」


 作戦は決まった! では次はモンスターと盗賊の出没地域の特定だ。

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