42 マイル、謎の幼児退行
エリアが珍しく感情を表に出していた、しかし彼女は怒り顔すらも可愛い。だが、もしそんな事を言った日には今の好感度ダダ下がり状態で数日間は口をきいてくれない可能性すらある。先程のマイルさんの悪ふざけでエリアの私への好感度はかなり低空飛行になっている。
「エリア……ちゃん、な……なーにそんなに怒ってるのさーね、ジョーダンよ、じょ う だ ん!」
「マイルさん! みんな困っています! これ以上困らせないでくださいっ!!」
「わーったよ、わかったわかった。ヘイヘイ、あーしがわるーございましたぁ」
「マイルさん!!! 僕も怒りますよ!」
これを四面楚歌というのだろう、まあマイルさんの自業自得である。マイルさんは一回こってり絞られた方がいい(断じて胸の事ではない!)
「悪かったよ、悪かったって…………だから……そんなにいじめないでよー! わーーーん」
あーあ、マイルさんはみんなに責められすぎて幼児退行してしまった……これはしばらく休んで様子を見た方がよさそうだ。
「マイルさん?」
「わーん、おにーちゃん……ダレ?」
「ホームです。僕の事わかりますか??」
「わーい、おにーちゃんだー!」
ルームが困惑している……これは普段の悪ふざけではなさそうだとわかっているのだろう。彼女はそういう点では精神的に成熟しているのかもしれない。だが、やはりホームにマイルさんが抱き着いているのを見て面白くはなさそうだ。
これは俗にいう二重人格なのだろうか……だが私は心理学の専門は習っていないのでこういう場合の対処法はまるで分らないのだ!
「マイルさん?」
「なーに? わーい、新しいおにいちゃんだー遊ぼー」
マイルさんは私の事も覚えていないようだ。とりあえず、今は彼女の気持ちを落ち着けてあげた方がよさそうだ。
「この辺りの土地を一気に見晴らしの良い高い場所にチェンジ!」
私達のいた場所はマップメイクスキルで一気に切り立った崖に囲まれた高い場所になった。ここに攻めて来られるモンスターがいるとすれば空を飛ぶものだけだ。だが私達も下手に間違えて外に落ちたら即死であるので、外側は人間ではよじ登れない切り立った壁の二重構造にした。これでもMPはほとんど使っていない、私の飲んだ聖杯の力はやはりとんでもない物だった。
「今日はここでキャンプしよう!」
「ユカさん…食料は保存食がまだまだありますが、水が無いのですが?」
「冗談じゃありませんわ! 流石に
「おにーちゃんたち、どうしたの?」
エリアさんが子供返りしてしまったマイルさんをフードの上から優しくなでなでしてあげていた。その時、マイルさんのフードがファサっとめくれてしまった。その時、私はマイルさんの頭の上にある物を見つけてしまったのだ!
それはなんとも可愛らしい『猫の耳』だったのである。マイルさんは獣人種だったのだ、これぞファンタジーと言っていいのだろうか。
「可愛い……」
エリアが柔らかくマイルさんの猫耳に触れた。
「ひゃんっ!」
マイルさんは敏感な場所を触られてしまい、ビクンと反応していた。
「おねーちゃん、そこダメェ」
マイルさんのお子様返りはちょっとしたショックくらいでは治らないようだ。とりあえず明日まで様子を見よう。
「目の前の土地を水場にチェンジ!」
私は高台の水場の無かった場所にマップメイカーで水を作った。
「流石ですわ! ユカ様」
「これで夕食の用意が出来ます、皆さん待っていてください!」
雨も降らず、モンスターの襲ってこない高台でのキャンプはとても素晴らしい物だった。私達は全員で次の日の朝まで安心して休む事が出来た。
◆◆◆
翌日、マイルさんは昨日の事を覚えていない様子でケロッとしてた。
「あれ? みんなどーしたのぉ? なんだか朝からみんなあーしに優しかったんだけど」
少し気まずい私達はしばらくマイルさんに何も言えなかった。
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