41 ユカ、好感度が下がる

 私は先程、みんなに問い詰められた事で、自身の持つスキルがどんなものか旅のメンバーには伝えたわけである。そうなると途端に移動の手間がかからなくなった。そりゃあ最短距離で行こうと思えば道を作れば簡単に行けるわけである。


 ホームとルームの兄妹は二人仲良く手を繋ぎながら私の作った最短ルートを通りながら私達を先導して伯爵領に案内してくれている。その様子をマイルさんはなんだか物憂げな表情で眺めていた……。


「便利な能力ねー、行こうと思えばどこでも簡単に道作れるわけじゃん」

「あのー、ユカ様? もしですね、瞬時に移動する事が出来たら……素晴らしいと思いませんか?」

「……出来るよ。そういう床も作れるし」

「凄いですわ! では早速わたくしの家までその移動床でぱぱーっと移動させてくださいまし!」

「ルーム、残念だけどそれはできないんだ……」

「何故ですの? 出来るのに出来ないって意味が分かりませんわ! 私をからかっているのでしょうか?」

「違う違う、ワープ床は作れるけど、一度ボクがその場所に行かないといけないんだ。だから一度ゴーティ伯爵の城に行ったらその場にワープ床は作る事が出来る、でもまだボクはその場所に行った事がないからワープ床を作りたくても作れないんだよ」

「なんだか、便利なようで不便なスキルですわね、ところでワープ……って何ですの?」


 そういえば、この世界にはワープという言葉の概念がないんだった! 私は前世では現代の日本人だったので、SFアニメやゲームとかでワープという言葉は普通の日常語みたいなものとして使っていたが、この世界にはなかった言葉だった。


「古代語だよ、遺跡で見つけた古代の瞬時の移動を意味する言葉がワープだったんだ」

「流石ユカ様です! 博識でございますわ!」


 まあ、どうにか誤魔化す事は出来た、つい現代日本の用語を使ってしまった場合は全部古代語だという事で通用しそうではあるが、出来るだけ気を付けよう。


 エリアはそんな挙動不審な私の様子をなんだか不審げなジトーっとした目で見ていた、最近エリアの私に対する好感度がグラフ化しなくても少しずつ目減りしているような気がする……。


「ユーカッ! なーにしょげた顔してるのさね、元気ないんならあーしの胸の中で抱きしめてあげよっか?」


 ポカッ! ルームが魔導士の杖の先端でマイルさんの後頭部をジャストミートした。


「マイルさん!! ユカ様を悪い道に引きずり込まないでくださいませっ!!」

「ハハハ、じょーだんだよっ、冗談っ!」


 ……マイルさんは間違いなく、いるだけで子供の教育に悪い人だ。私の中身が転生者の大人でなかったら簡単に悪い道に引きずり込まれる危険性があった。この人の言動には少し気を付けよう……。


「なんなら、ホーム君でもいいんだよー、あーしがおねーさんになってあげる」


 今度はマイルさんはホームに後ろから抱き着いて大きな胸を押し付けていた、なんと……うらやまけしからん……いや! これはマイルさんを止めなくては!


「マイルさん! あんまり巫山戯ふざけていると流石に僕でも怒りますよ!!」

「おお、怖い怖い。そこまで怒る事ないじゃんかよー、あーし……一人っ子だったから弟とか妹が羨ましかったんだよ」

「マイルさん……」

「そりゃあいきなり一人者だったあーしにこんなに可愛い弟とか妹みたいなのが何人も増えたら、そりゃあ……ちょっかいもかけたくなるってもんさね……」

「だとしても限度がありますわ!」


 マイルさんがルームの目の前で彼女のあごをくいっと持ち上げて瞳を見つめていた。この人は可愛ければ男も女も関係ないのか!?


「だからそんなに怒らないでねぇ、可愛い顔が台無しよ、美少女さんっ」

「なななな! 何を言いやがりますですかっ!」


 なんだかルームは顔を真っ赤にしているし、マイルさんは舌なめずりしているし……非常におかしな雰囲気になってしまい、私とホームは見ていて気まずかった。


 そんなマイルに向かって思わぬ人物が突飛な行動をした! エリアが思いっきり渾身の力で体当たりをしたのだ。


「いい加減にしてください!!!」


 私にはエリアは無表情で感情がほとんど無いと思っていたので、いきなりの彼女の激おこっぷりにビックリしてしまった。

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