26 あなたに力を……

 遺跡の奥に行こう、それがエリアの願いだ。


「遺跡の奥に行きましょう!」

「わかった。みんな、行くぞ!!」


「ちょっと待ってくれっ!! コレ、スゲェぜ!?」

「どうした、コング?」


 アールバウトさんが私の放置してた魔神の手首を見つけたようだ。


「見ろよこれ! 純度の高い古代金属の塊だぜ!!」

「どうやら巨大な像の手首のようですね、鉄よりよほど固い金属で出来ていますよ。さしずめ、超合金。ゾルマニウムかと、それを強力なエネルギーで断ち切った様に見えますね」

「凄い! これは文献にあった……魔神のものじゃない」

「ふむ、ユカがこれをやったのか。見事なものだな」


 ハンイバルさん達は魔神の手首から色々と分析を行った。


「よし、これは後で持って帰ろう。ユカ、それでいいか?」

「はい、ボクだけじゃとても持てませんでしたから」

「オウ、オレ様に任せな! これくらいこのコング様が一人で運んでやるよ!!」

「ありがとうございますっ!」

「……ここまで重くて持てなかったものを、床を水路に変えて運んできたわけか、中々のアイデアだな! 流石だ」


 ハンイバルさん達のおかげで魔神の手首は遺跡から持って帰る事が出来るようになった。後は、エリアの願いをかなえるだけだ。


「エリア、キミは遺跡のどこに行きたいの?」

「大きな階段の……上」

「わかった、行こう!」


 私達は最初に来た時と同じ道を通り、ワープ床の多発する場所までたどり着いた。そこからは罠の多発する場所を避けるために作った床を水路沿いに進んでいった。


「こりゃぁスゲェ! 罠を全部回避して歩けるって楽チンだなッ!」

「まさか、こんな方法で遺跡の奥までたどり着いたなんてね、やるわね」


 そして最深部中央の大広間にたどり着いた時、流石のハンイバルさんも魔神の残骸を見て驚愕せざるを得なかった。


「これをユカがやったのか! 一人だけでこの魔神を倒すとは! 俺達でもこいつには勝てなかったかもしれん。ユカの強さは想像以上だ!」

「アタシも文献を見ただけでこいつを倒す方法は思いつかなかったわ、制御方法が無いかは調べたけどね」

「入口の手首はコイツの物だったのか、こんにゃろ!」

「ふむ、横に落ちている鏡、これで魔神の光を反射させて断ち切ったのがあの手首というわけですね」

「オレはドラゴンに乗った上空からの攻撃なら自信があるが、地面そのもの凹ませて上から攻撃とは恐れ入った、やるな」

「他には敵はいないようだな、では奥に向かうぞ!」

「「「「了解!」」」」


◇◇◇


 私達が階段を上ると、エリアの封印されていたクリスタルの残骸があった。その奥を見ると、そこには祭壇があったのだ。


「ずっと昔、私……ここにいた」

「エリア?」


 目の前の祭壇には銀色に光る聖杯が飾られていた。エリアがその聖杯に手を伸ばし……手を近づけると、聖杯はキィィィィンと高い音を立て、エリアと共鳴を始めた。


「文献の通りだわ、『遺跡に眠る聖杯に聖女が触れた時、古代の奇跡の力を湛えん』エリアさんは古代の神殿に関する聖女だったのよ!」

 エリアが聖杯に触れると、何もなかった聖杯には鮮やかな青の液体が湛えられた。


「ユカ……あなたに力を」


「これは……ユカ、これはお前のものだ。魔神を倒した功労者こそこれを受け取る資格があるだろう」

「ハンイバルさん、……本当にボクでいいんですか!?」

「ここにいるみんなが認めている。ユカ以外に誰がいるというんだ、太古の昔、欲深い者達が血で血を洗う争いの中、奪い合い殺し合いすら起きた、これは本来そういう価値の物だ。この聖杯を巡り大国を傾けた程の力、責任をもって受け取るんだな」


 ハンイバルさんは悪気はないのだろうが、ハードルが一気に跳ね上がってしまった。

聖杯に湛えられた液体は特に臭いも何も感じない、見た目の色だけはブルーハワイのかき氷かチャイナブルーのカクテルのようにも見える。


「ユカ……」

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