25 ユカの秘密~再び遺跡へ

「ユカ、私戻らないと」


 エリアは覚えたばかりの現代語でそう言った。


「エリア、どういう事?」

「私はあの遺跡でするべき事があるの……」


 エリアの表情は真剣そのものだった。ここで「いいえ」というのも気が引ける。


「わかった、ついていくよ」


 それを聞いていたハンイバルさんが椅子から立ち上がった。


「俺達も行かせてもらう。ユカ、いいか?」

「もちろんです! ハンイバルさん達がいてくれたら助かります!」


 丁度そこにトレーニングルームからAチームの男衆三人が戻ってきた。


「ハンイバル、オレ達も行かせてもらうぜ!」

「攻略を途中で投げ出したなんてコングの名が泣くぜ!オレもいくぞッ」

「もちろん、僕も行きますよ」

「ハーイ。当然アタシも行くわよ、イヤとは言わないわよね?」


ここに冒険野郎Aチームが結集した。


「さて、それでは一週間分の食料を用意するか」

「……ハンイバルさん、皆さん。実は絶対に黙っていてほしい事があるんです」

「? ユカ、一体どうしたんだ」


◇◇◇


 私たちは町の使われていない廃屋に入った。ハンイバルさんがカギを貸してほしいと言ったところ、持ち主は後で大掃除をしてくれるならと喜んで渡してくれた、これが人徳というものか。


「家の鍵は閉めてくれましたか?」


「ユカ、遺跡に向かうんじゃないのか? その前の作戦会議にしては随分と仰々しいな」

「皆さん、実は絶対に内緒にしてほしい事があるんです!」

「ユカ、一体どうしたの?」


 私は廃屋の中央ホールで右手を掲げた。


「目の前の床をワープ床にチェンジ!」


「「「「!!!?」」」」


 私はここにいる全員の前で遺跡へのワープ床を廃屋の中に作った。


「入ってください、ボクが最初に入ります」


 私は手を取ったエリアと共にワープ床に足を踏み入れた。


「!! ユカが消えた!?」

「あのボウズ! マジかよ!」

「ほほう、これは興味深いですね。移動のコストが無くせそうです」

「これは……古代遺跡の転移システムね、でもどうしてそれをあのボウヤが?」


「話すのは後だ、ユカは先に向かった。俺達も行くぞ」

「「お、おう」」


 歴戦のベテラン冒険者も初めて見た目の前の現状は想定外だったらしい。それでも全員躊躇なくワープ床に足を踏み入れたのは流石と言えよう。


◇◇◇


「ここは、忘れられた遺跡か」

「マジで一瞬で着いちまったな!」


「皆さん、これが僕の能力なんです。どうやらボクは一度行った場所の床なら再現できるようなんです、こんなのをギルドで見られたら大騒ぎになるからあそこを選んだんです」

「……なるほどな、これで合点がいったよ、一人だけでオーガーを倒せたのはその地面を自在に変化する能力だったんだな。」


 ハンイバルさんは驚くというよりも感心した様子で私を見ていた。


「それで、遺跡の奥までその力で行ったわけね。しかし遺跡の魔神からはどうやって逃げたの?」

「?! おいおいミリー、そんな奴いたなんてオレ達聞いてないぞ!」

「もし魔神相手ならこの中の誰か、下手すると全滅していたかもしれませんね」

「ゴメンなさい、みんなもうヘトヘトで更に奥に行く方法なんて無かったので、古文書に書いてても言わなかったのよ……」


「ミリーを責めないでやってくれ、俺達はあの時……遺跡のボス、マスターリッチを倒すだけでもう全部の力を使い果たしただろう」


 ! 私はハンイバルさん達のチームの凄さを実感した。マスターリッチはレベル40モンスター、古代の邪神官が魔素でレベルアップしたモンスターでモンスターランクは驚異の『Sクラス』

同列にいるのは『オールドドラゴン』や『グレートデーモン』といった一体で小国を亡ぼせるレベルのバケモノである。流石の一流冒険者のハンイバルさん達も全部の力を使い果たす程の相手だったのだ。


「確かにそうですね、遺跡最深部に行く方法があの時点では何もありませんでしたし」

「道も何もなく、オレのドラゴンライダーのスキルでも無理なんだから普通は無理だと思うぜ」

「だが、確信はなかったが、俺はユカなら攻略できると感じた。あの『ウォール・カーサ』の息子だ、きっとやり遂げると信じてたよ」


「……ユカ、すごい。この人たち、みんなユカを信じてる」


 私はこの人達冒険野郎Aチームのおかげで、改めて今までの私自身のこの世界でやってきた事を思い出した。『ハズレと言われたスキルでも使い方次第でどんな困難でも乗り越えれる!』私はこれからもこのスキルで人の為に生きていこうと決心した。

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