23 エリアの秘密

 エリアは私の傷に触れただけで傷を治してくれた。これは回復スキルなのか?


「エリア、その力は?」

「ユカ……わたし……へん?」

「変じゃないよ、すごい力だよ!」


 私はエリアのスキルの凄さに少し興奮してしまい、エリアに迫ろうとしてしまった。


「きゃぁ!」


驚いたエリアは後ろにつまずき、積まれた干し草に尻もちをついてしまった。その時、私はエリアの本当の力を見てしまったのだ!


 なんと、彼女が触れた干し草が青々とした緑の草に戻ろうとしていた。私は長年のゲームクリエイターの経験でその能力が何かすぐにわかった。これはヒール『回復、治癒』ではなく、レザレクション『再生、復活』の力だ! こんな力を持っているのはアークプリーストでも教皇、僧正と呼ばれる人間。それも歴史上数えるほどもいない! この力は悪用すれば世界すら崩壊させかねない力だ!


「エリア、手を出して!」

「ユカ??……」


 私は恐る恐る手を出したエリアの手に素早く自分の冒険用のスペア手袋をはめた。


「ぶかぶか……」


エリアはきょとんとしながら手袋をプラプラさせていた。


 その時、先程の私が落下した音を聞きつけて母さんがはたきを持ったまま出てきた。


「ユカ! どうしたの!? さっきの音は何っ?」

「ニヘヘ……なんでもない、なんでもないよ!」


 私は何事もなかったかのようにごまかす体で母親に愛想笑いをした。しかし、母さんの目が睨むような三白眼になっていた、これは後でしっかり怒られるな……


「そう、またやるなと言っていた窓からの出入りをしたんでしょっ、それで木の枝が重さに耐えれずに派手に落ちた……そうでしょっ!」

「その通りです、ゴメンナサイ」

「全く、後できっちりオシオキだからねっ! あら……そちらの可愛らしいお嬢さんは?」

「母さん、実はこの子……」


 私は……とっさに考えた事を母親に伝えた。


「実はこの子エリアって言うんだ。モンスターに襲われててボクが助けたんだけど、その時のショックで言葉が話せなくなってしまってるんだ……」

「そう、大変な思いしたのね。ユカ、どうせ母さんに内緒でその子の面倒を見てあげようと思って窓から部屋に連れて行こうとしたんでしょっ」


 とりあえずここはそういう流れにしておこう。下手に質問攻めにされるともっとドツボにはまる。


「実はそうなんだ、この子行くとこがないんだよ」


 エリアが母さんにぺこりと小さくお辞儀をした。エリアは多分私の言葉の意味は分かっていないのだろうが、伝えたい事は伝わっていた。


「今日はもう夕方だし、今日はうちに泊まってもらいましょう。」

「ありがとう、母さん」


 エリアは今晩うちで泊める事になった。母さんはエリアを部屋に連れて行くと服装を着替えさせてあげた。


「私のお古だけど、結構似合ってるわねっ。可愛いわよ」

「わーい! きれいなお姉ちゃんだー」


 ルーフが嬉しそうにエリアの周りできゃいきゃい飛び跳ねていた。そして勢いをつけすぎてこけてしまった。


「いたーい……」


 べそをかいたルーフをエリアが優しく微笑んで打ったおでこをなでてあげた。


「お姉ちゃんの手……ぽかぽかして気持ちいい」


 ルーフはなでてもらった事で痛みを感じなくなったようだ。


「エリアちゃん、食事が終わったらルーフと同じ部屋で休んでいきなさい」


 エリアが再びぺこりとお辞儀をする。


「母さん、ボクの部屋空いてるよ」

「何言ってんのっ! 年頃の男の子と女の子を同じ部屋に泊まらせるわけないでしょっ!」


 まあ、当然と言えば当然である。


「わーい! お姉ちゃんといっしょだー」


 エリアはルーフと一緒の部屋で、うちに明日まで泊まっていく事になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る