22 エリア……美しい少女

 『エリア』その美しい少女の名前はそう聞き取れた。光を受けて煌めき光る銀髪、翡翠のように緑色の澄んだ瞳、透き通るような白い肌、そして、聞く者を全て魅了しそうな程、玉を転がすような声。彼女の全ては完璧ともいえるほど可愛らしく、そして美しかった。


「あな……た……ダレ?」


 エリアは私を見つめながら古代語で話しかけてきた。


「ボクは、ユカ・カーサ、ユカでいいよ」

「ユ……カ……。あなた…ユ……カ」


 私は年甲斐もなくドキドキしてしまった。いくら元が独身の中年ゲームクリエイターとはいえ、今の私は外見だけは少年そのものだ。この動悸を止める必要はない。その気持ちを大事にしたいと思える程、エリアは可愛らしく、愛おしかった。

「ユカ……ここ……どこ?」

「ここは……どこだろうね、ボクも……わからないよ」


 私はあえてエリアを不安にさせないために遺跡の事を何も知らない振りした。しかしエリアはいきなり顔を強ばらせて怯えの表情を見せた。


「黒い……大きな……モノ…こわい!」

「大丈夫! ヤツはもういない」

「ほんとう?」

「ああ、本当だ」


 エリアは安心したようで私の腕の中に沈み込むように私に倒れ込んできた。わずかに盛り上がった柔らかい二つのふくらみが私をドキドキさせる。こういう時こそ冷静にならないと!


「エリア、一旦ここを出よう」

「ユカ、わたし、ユカ……ついていく」


 私はエリアを連れて階段を降り、魔神と戦った大広間に足を踏み入れた。


「!!?」


 エリアが驚愕の表情を浮かべていた。魔神がその場にいたからである。

「大丈夫だ、アイツはもう動かない!」

「ユカ……マジン……こわした?」

「ああ、ボクがアイツを倒したんだ」


 エリアがその場にへたり込んでしまう、あまりの事に頭の整理が追い付いていないようだ。今はそっとしておこう。


 私は、エリアが放心状態のうちに先ほど持っていこうとした魔神の手首を運ぼうとした。しかしやはり魔神の手は相当重く、私一人の力では運ぶのが難しそうだった。そこで私はある事を思いついた。


「遺跡の床を流れる水路にチェンジ!」


 成功だ!魔神の手は水路にプカプカ浮かんでいる。この金属は水の上に浮かべることが可能だったようだ。枯渇したMPはMPポーションで回復させ、私は水路を大広間から遺跡の渡り廊下までつなぐ事ができた。


「ユカ……すごい」

「エリア! 見てたの?」

「ユカ……すごい! まるで……神さま」


 エリアは私のマップメイクスキルを神の技のように感じたようだ。確かにこのスキルを知らない人にとって、いきなり地面が別のものに変わるのを見たら神の御業と感じてもおかしくはない。


「エリア、行くよ」

「うん、エリア…ついてく」


 私は水路の魔神の手に乗り、ワープ床のエリアにたどり着いた。このワープ床は間違えると強制的にスタート地点に戻してくれるのだ。騒ぎにならないように魔神の手首は一旦遺跡の入り口に置いて、私はエリアを自宅の部屋へとワープさせた。


「ここはボクの部屋だよ。一旦外に出よう」

「ここ……ユカのいえ……」


 私は誰かに見つからないようにエリアを連れて二階の自分の部屋の窓から木を伝って下に降りようとした。先にエリアが木を伝い、下に降りた。それを確認してから私が木を伝って降りようとした時……


メキメキメキ……ベキャッ!


 重みに耐えきれなかった枝が折れ、私は地面に叩きつけられた!


「ユカ!」


 幸い、私は頭から落下したのではなかったので少し枝や石で切っただけで済んだ。血は出ているがこれくらいならすぐ直る怪我だ。


「ユカ……ケガ……した。いたい」


 エリアは私の鋭く切ってしまった腕を優しくなでてくれた、その時……不思議な事が起こった!! エリアのなでてくれた私の怪我した腕を温かい光が包み、その切り口は何事もなかったように治っていたのだ。

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