第7話 浄化魔法の特訓


 ーーもっとイメージが大事だよっ! 体の中にある魔力を手に集めて。


 白ちゃんが私の近くをくるくると回りながら、必死に教えてくれるんだけど。


 魔力を手に集める……さっきからやってはいるんだけど、なかなか上手くいかない。

 うーむ……思っていたより難しい。


 私は今、白ちゃん黒ちゃんに教えてもらいながら、部屋で浄化魔法の特訓をしている。

 なかなか白ちゃん先生の教えはは厳しい。


 ーーもっとこう!キラキラってイメージ。


 キラキラ? 

 イメージが大事なんだよね? 


 アニメとかである天から神降臨みたいなキラキラとか?

 そう思ったら、手から眩い光が放たれる。


「うわっ……まぶしっ、目が開けられなっ」


 ーーすごい……キラキラだ。

 ーーおいおい? これはやり過ぎだろ?


「えっえへへ」


 黒ずんでいた部屋の壁が、白亜に輝いている。

 知らなかった、この壁って白かったんだ……。


 これって一応成功? ……した? よね?

 白ちゃんに聞いてみたら、ちょっとやりすぎだけど。

 後は魔力の調節が出来たら完璧だって! 白ちゃん黒ちゃんが言ってくれた。


 よしっ頑張る。



 ★★★


 次の日から私の日課に毎日浄化魔法の特訓がはいる。

 合間を見ては必死に練習した。


 毎日コツコツ頑張った成果もあり、魔力調節も覚えた。白ちゃん黒ちゃんからはバッチリと言ってお墨付きをもらった。


 「やたっ♪」


 明日は、義姉の魔力検査の日だ! 

 作戦頑張るよー!


 後はと。

 明日頑張ってくれる、白ちゃん黒ちゃんそれに妖精さんたちあげる、ご褒美のクッキーを作りに厨房に忍び込まないと。


 時計を見ると針は夜の十一時をさしている。

 もうそろそろ料理長たちは自分の部屋に帰っていて、今はだれも厨房にいない時間なんじゃ?



 私は足早に厨房に忍び込む。

 中に入り準備をしていたら、閉めたはずの扉が再び開かれる。


 ————え?


「あらぁ? こんな所で何をしてるの?」


 はぁーっ……嫌な奴が。なんでこんな時間まで起きてるの?

 いつも寝てるのに、タイミングが悪すぎる。


「……お義姉さまこそ、こんな時間に厨房に来るなんて珍しいですね」

「私はね? 明日のことを考えると少し眠れなくて、甘味でもないかと思って見に来たのよ。そしたらアンタがいたってわけ」


 今からクッキーを作ろうと、厨房で色々と準備をしていたのにこのタイミング、ほんと嫌がらせの天才だね? お義姉様。


 苛立つ気持ちを落ち着かせるため、ふぅーっと大きく深呼吸して。「別に何でもありませんわ。水を飲みに来ただけです」と答えた。


 義姉が口角を上げ、何か企らんだ嫌な顔をした。と思った次の瞬間。


「あらぁ! 手が滑ってしまいましたわっ」


 そう言いながら、私が机の上に出したばかりの卵を投げてきた。


 ———わっ!

 私は避けることもできず目を閉じる。


 ……だけど。


「へあ?」


 私に投げたはずの卵は義姉の顔で割れた。

 目抜けな義姉の声が厨房に響く。

 何が起こったのか分からず、目をパチクリしている義姉


 ーーイェーイ命中!


 どうやらこれは黒ちゃんの仕業らしい。


 ブッ……あのマヌケな顔

 笑ったらヤバイ。落ち着け私。


「なっ、なっ、何なのよー!!」


 その場で淑女らしからぬジタンダを踏む義姉。


「むきーッ!!」


 怒った義姉は顔を真っ赤にそめ、懲りずに何個も卵を投げてきた。


 パリンパンパン


 だけど、全ての卵は義姉の頭や顔で割れる。


 ーーギャハハッざまぁっ


 黒ちゃん。

 さっきから楽しそうだけど、やり過ぎでない?


 もう義姉の顔は卵でドロドロで見るも無惨。


「ひっひいいーーっ!! 何が起こってるのーっ!?」


 私は驚く義姉をしり目に、何も分からないフリをする。


「あの。お義姉様? 大丈夫ですか?」

「もーっ!! 気分悪い! もういいわっ」


 そう言うと、義姉は厨房を慌てて出て行った。


「ブッブァハハハハハッ」


 笑いこらえるの大変だったから、出て行ってくれて良かった。


 ーーあの顔! ちょっとスッキリしたねーッ

 ーードロドロでオバケみたいだったな! 俺のコントロール最高だろ?


 白ちゃんと黒ちゃんが居なかったら、私がドロドロの卵オバケになる所だった。ありがとう二人とも。


 さぁ! 妖精さんや白ちゃん黒ちゃんに渡すクッキーをいっぱい作るぞー!!


  

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