第8話 作戦決行
魔力測定の儀当日。
義母や義姉は、教会に着て行くドレスを必死に選んでいる。
化粧もやたらと濃い。
教会に行くのに、そんなお洒落する必要あるの?
その姿は教会に行くというよりは夜会に行くように見える。
あの二人のことだ、教会で誰よりも一番目立ちたいんだろうな。
自分たちの用意が終わると、義母義姉は私に仕事を言ってきた。
「私達は今からこのリディアの一大イベントに行きますが、ルチアはこの屋敷を隈なく丁寧に掃除しておきなさい! 分かりましたね?」
「ふふん。ちゃんと綺麗に掃除しとくのよ」
派手で趣味の悪いドレスに着飾った義姉が、私を嘲笑う。いつもならこの後なにか嫌がらせをしてくるんだけど、今日は自分が主役のイベントがこの後あるからか、私に意地悪する所じゃない感じね。
「ちゃんと綺麗にするのよ? 私たちが帰って来てた時に、ちゃんと出来てなければお仕置よ」
「はい、お義母様」
「じゃっリディア行きますよ」
「はぁい。ちゃんと仕事するのよ? 召使いルチア」
二人は意気揚々と屋敷を出て馬車に乗る。その馬車の上に白ちゃんが、顔を歪めて飛び乗った。周りに沢山の妖精さんを引き連れて。
ーー嫌だけど……ルチィのため、頑張るよ。
うわぁ……遠目から見ても白ちゃんの可愛い目が涙目になっているのが分かる。
白ちゃんごめんね。
ご褒美のクッキーいっぱい焼いたからね。お願いします。
白ちゃんたちを見送ると、次は私たちの順番。
「さてと黒ちゃん、私達も頑張るよっ!」
ーーいつもの練習通りやれたら完璧だ。
黒ちゃんが私の頬をペロッと舐める。
「うん。頑張る」
光の粒子が集まるイメージをして……。
《浄化》
キラキラ煌めく光の粒子が家を包んでいく。
「よっし!成功」
侍女たちにも見られてないね。今の時間は、食堂に集まって朝食を食べているはずだから。綺麗になったお屋敷を見て、後でビックリするかもね。
ちょっと……やり過ぎたかな?
まぁあの義母たちだもん、大丈夫、大丈夫。
「黒ちゃん、用意して追いかけるよ!」
ーーおう!
この日の為にもう一つ練習していた魔法がある。それは身体強化だ!
ふぅーっ魔力を身体中に纏わせて……イメージが大事。
《身体強化》
体が空気のように軽い。なのに中から漲るパワーが溢れてくる。よしっ、上手く出来た。
「追いかけるよー!」
身体強化した私の速さは、馬車の何倍も速く! あっと言う間に義母達の乗った馬車を追い越し、先に教会についた。
「わぁー。結構人がいるね!」
目立たないように、中に入ると想像以上に人が沢山集まっていた。
ーーそりゃそうだろ……? この領地に住んでいる十三歳になる奴らは皆来てるはずだぜ?
黒ちゃんから何を言ってるんだと、少し残念な目で私を見てくる。
だって……こんなに大勢いるこの世界の人たちを見るの、初めてなんだもん。
「ん?」
教会にいる人を観察していたら、急に入り口の方がザワザワしだした。
「!!」
本日の主役、義母義姉の登場だ!
領地を治めるクロノス侯爵家の娘の登場に、みんなから大注目を集めてる。
この為にドレス選びに時間をかけてたんだもんね。
みんなからチヤホヤされて義母義姉は嬉しそうだ。
あんまり近くに行って、見つかったら面倒だから……。
一定の距離をとって……と。
あっ……白ちゃんみっけ!
うわぁ……涙目で顔が歪んでる……もう限界かも。
ーーほらルチィ、見てみろ適正検査が始まったぞ。
黒ちゃんが適性検査がよく見える場所に、私の服を噛んで引っ張っていく。
「ほんとだ」
集まった子供たちが、中央の台座に置いてある、子供の頭くらいある大きさの丸い白い玉に触っていく。
すると、玉が光輝く。この光の強さで魔力多さが分かり、色でどの魔法に適正があるのか分かるんだよね。最近、本で読んで勉強したんだ。
あんな玉に触れるだけで、魔力や適性とか色々と分かるなんて凄いなぁ……異世界の不思議。
おお! 皆喜んだり、落ち込んだりと反応が色々だね。
みんなの一喜一憂する様子を楽しんでいたら。
ーーおいっルチィ! 次は義姉だぜ!
義姉が白い玉に触る、義姉の周りには妖精さんがいっぱい。白ちゃんも涙目になりながら、嫌そうに義姉の手にそっと触れる。
光の玉が虹色に輝く!
これは今までで一番、桁違いに光ってる!
「ここっ! これは凄い魔力です! しかもリディア様は聖魔法の反応があります!!」
「「「「聖女様!」」」」
教会の司祭たちが、目を見張り聖女様の誕生だと、興奮している。
「えっうそ? やだぁ! やっぱり? 私は聖女になるって思ってたもの!」
義姉はみんなから聖女様と言われて、ドヤり顔が止まらない。
司祭達があまりにも騒ぐ者だから、教会にいた人達が義姉の周りに集まり、聖女様と義姉を褒め奉る!
義母と義姉は、みんなから持て囃されて、顔の表情が緩みっぱなし。
ふんぞり返り過ぎて後ろに倒れちゃうよ? ぷぷぷ。
でもゴメンね? 魔力あるのこの瞬間だけなんです。二人の様子を見ながらニマニマしていると。
ーールチィ……もうダメ。
「白ちゃん!」
白ちゃんがフラフラと、今にも倒れそうになりながら戻ってきた。
白ちゃんごめんねっ。ありがとう!
私は白ちゃんをぎゅーっと抱きしめる。
ーーはぁ、ルチィの良い匂い……生き返る。
妖精さん達もありがとう。皆で家に帰ろうね。
する事は終わったから、これ以上この場所にいる必要はない。
私は白ちゃんを抱いて妖精さん達を引き連れ、家に速攻で帰ってきた。
屋根裏部屋で、今からお菓子パーティーをするんだ。
「さぁ、たくさん食べてねっ。私の魔力もいっぱい練り込んであるからねっ!」
ーーうわーい!
ーーおいしー!
ーーさいこー!
ーーがまんして良かったー!
妖精さん達が、歓喜の声をあげながら、嬉しそうに食べてくれ私の顔も綻ぶ。フフッ
妖精さん達が甘味好きなんて新しい発見。
ーーあっ黒! 今日は僕の方が多いんだからねっ?
ーーそれくらい俺だってわかってるよ! あんな臭えの良く我慢したな、いっぱい食べろ!
フフッ……白ちゃん黒ちゃんも今日はケンカしないで仲良く食べてるねっ。
コレで後は、義姉が国王様に認めてもらえたら、婚約破棄作戦は成功だ!
★★★
作者からのお礼とお願い
本作品を読んでいただきありがとうございます。感謝。
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