2人きり
ご飯会も終わり、先輩と俺は洗い物をしていた。師匠たちは二階で自分の部屋を決めているらしい。「ここ泡ついてるから洗って」指摘されごめんごめんと謝る。「てかこんなに増えたんすね人」俺の問いに先輩は「私が最初に死ねるかな」なんて言う。横を見ると先輩は泣いていた。俺は聞いちゃいけなかったなと思いながら、何も言えなかった。先輩は俺に抱き着いた。「私幸せに暮らしたい」先輩の手は泡にまみれていたし、俺の手は水に濡れていたけれど、俺は「大丈夫っすよ」と先輩の頭をポンポンと撫でた。大丈夫だなんて無責任だが、口からはこの音しか出なかった。俺だってこの職業じゃいつ死ぬかわからないし、先輩だって分からない。師匠は大丈夫かもしれないが……。今日初めて会ったあの人たちだって正直分からない。強くならなきゃいけない。「沢山奴らを殺して平和の世の中にするために」なんて綺麗ごとは言ってられない。「自分や先輩、俺の後輩になる人たちを守るために」そんなことを考えるように、意識するようになった。冷たい。先輩の涙なのか、泡がなのか分からなかったが、先輩はずっとこの辛い気持ちで生きていたのかと思うと腹部はジーンと熱くなった気がした。
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