呪る時の話

やるべきことは一通り終わり、俺は煙草を吸っていた。「お手柄っすねぇ」駒崎が言う。お前は寝てたけどなと嫌味を言ってやった。脳裏に志賀さんの声が聞こえた。「俺らやべぇかも」声が震えている。俺の師匠でもあった彼は俺に煙草の偉大さを教えてくれた。「いま仕事がねぇやつ仕事だ」といいあの場所に向かった。一斉に車を出す。今から行っても40分はかかるなと時計を見る。16:22を示している。俺たちが呼ばれるという事は多分呪物や呪詛的な類だろう。奴らはじめじめと湿度が高くなればなるほど強くなり、暗くなればなるほど強くなる。どんなに雑魚の呪物でも雨がしとしと降る丑三つ時なんかに祓うなんて俺には到底できない。俺たち非科学的呪詛課の人たちは場所や時間をとっても気にする。俺の先輩は腕時計を3つ付ける人もいるほどだ。だから俺たちは乾燥し、晴れた良い日を狙って祓うのだ。俺はいろいろな書類を書かされるのが面倒だったが、人の命がかかっていると思えば安いものだと覆面パトカーのようにサイレンを付け、信号も無視しながらカーチェイスのように粗い運転で30分もかからずについた。腕時計は16時44分を示していた。だが、よく見ると秒針が動いていなく、呪物のせいだとすぐに分かった。

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