強者の本気

「師匠起きて、起きてください」そう言うと師匠は難なく起きた。ホッとして車が動いた。湯崎さんと久さん、千葉の非科学的人物特殊課の三浦さん、津原さん、戸田さん。そして埼玉の非科学的信仰特殊課の田所さんを乗せて走る。この車は9人乗りではあったが、きつきつだった。「田所さん俺ぇ怖いっす」師匠が初めて弱音を吐いた。「一秒でも長く生きることを考えろ」と叫ぶ田所さんは手で十字を切っていた。「キィィィイイイイ」ブレーキをあげながら車が止まった。「3」「田所さんこれダメだわぁ。戻っちゃうぅ。戻っちゃうぅ。あ。始まっちゃう。やだ、やだ」扉がバッとあいて俺たちは放り出された。「榊さん!」榊さんは立っていた。下には赤黒い血だまりが泳いでいる。「どぉおん」と鈍い音がした。見ると車同士が追突している。扉が開いて人が放り出される。「埼玉まで帰ったはずですが」善行さんの弟子である鈴木と見澤が喚いている。運転手である戸部君は笑いながら死んでいた。「2」「榊さん私もっとあんたとバカやってたかったわ」そう笑う善行さんの目には涙が光っている。「あんたのおかげで時間が取れたわぁ。お前たち、全身全霊、命かけろよぉ」そう言い紙を叩く。

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