隠蔽

ウーとサイレンが鳴り、「そこの車止まりなさい」とアナウンスがされた。終わったと思った。パトカーから若い警察官と中年の警察官が降り、こちらに向かってきた。コンコンと若い警察官がノックをする。車窓を開き師匠は「どうかしましたか」と笑った。俺らを見た警官が中年の警官に話をする。「飲酒運転かと思いますが、後ろの二人、一人は男性で全身を紐で縛られています。で、口元にはガムテープ。もう一人の女性の方はなんともなさそうですが、泣いていたのか目が腫れています」すると中年の警官はうんと頷き師匠に言った。「おじさんお通夜の帰り?お酒飲まれてる?」師匠ははいとカードを見せた。「ちっ」と警官は舌打ちをし、帰っていった。「えっいんすかあいつら」という若い警察官に対して「俺たちが関わっちゃなんねぇもんもいるんだ」と怒った。「何見せたんですか」と俺が訊く。「このカードだよ」と見せてくれたが暗く、縛られていたこともあり、よく見えなかった。「これ、俺ぇたちのカードユウ君にも後で渡すよ」と言った。師匠曰くこのカードを持っていると警察の職質などを避けられるという事だ。「まぁ私たち職業柄法律なんてみてらんないっすもんね」と先輩は笑う。いや飲酒とかで使うなよと思う俺は車窓から見える三日月を眺めていた。

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