妖怪退治

部屋に入ると雰囲気が変わっていた。「ドン ドン ドン ドン」太鼓の音が響く室内、細長い五本の蝋燭が均等に配置され部屋を照らしていた。「これです」と渡す。師匠はビールの缶を開け、一気に飲むと手のひらを刀で掻き切った。赤く染まっていく三日月宗近を見ていると先輩に引っ張られた。「あんたはこの太鼓を叩いてて」そう言いバチを渡す。「ドン ドン ドンドン」上手に叩けずにいると貸してと先輩が取り上げ「あんたはやっぱ見てるだけでいいから端にいて動かないで」と言われて蠟燭の中に入るなと念を押された。「ドン ドン ドン ドン」リズムよく太鼓の音が響く。祝詞というのだろうか「かしこみーかしこみー物申す~」とビールを煽りながら師匠は歌う。「ドッ ドッ ドッ ドッ」いつの間にか先輩の叩く太鼓の音が響かなくなっていた。師匠は酔拳のようにふらふらと踊り祝詞を口ずさむ。右手で振り回す三日月宗近は蠟燭に照らされて美しい。

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