第4話 下ネタ大好き千尋さん

 千佳ちかと激しいHをした後に帰宅したボクは、夕食とお風呂をいつも通り済ませた。眠気がヤバいから早めに寝たいけど、彼女とベランダで会う約束をしたから我慢だ。


自室でウトウトしている時にベランダのほうから「はじめ」と呼ぶ千佳の声が聞こえた。彼女を待たせないようにすぐ出る。


「その顔、ずいぶん眠そうね?」


「そういう千佳だって」


「仕方ないじゃん。あんなにったのは初めてなんだから…」


昼前に帰れたから体力と時間に余裕があったり、千尋さんがお肉を用意してくれたり、いろんな条件が重なったから長時間る事ができたんだよね。


「ふわぁ~。…もっと話したいけど、今日は早めに寝よっか」


「そうだね。お休み、千佳」


「お休み、創」


ボク達は部屋に戻る。戻り次第、すぐにベッドにダイブして寝ちゃったよ…。



 翌日。携帯のアラームで目が覚めたボク。その時に千佳から連絡が入ってる事に気付いた。


『今日は寝坊したから、お弁当は母さんが全部作ってくれたの。ごめんね』


どう返信しようかな? 少し悩んだけど…。


『昨日はハードだったから仕方ないよ。今度お願い』


これで問題ないよね…? すぐ“既読”が付いちゃったから、もう取り消せない。



 洗面台で顔と口をゆすいでから、ボクはリビングに向かう。…既に父さんと母さんが朝食中だった。ボクの分はセットされるから、ありがたく頂こう。


「創。千佳ちゃんから聴いてると思うけど、今日のお弁当は千尋さんが作ってくれるからね」


ボクの斜め向かいに座っている母さんが言う。


「わかってるよ」


「千佳ちゃんはもちろんだけど、千尋さんが困ってたら絶対力を貸すのよ。良いわね?」


「もちろん」

昨日の件に限らず世話になってるからね。恩返しは当然の事だ。



 朝の準備を終えて約束の時間に家を出ると、千佳もほぼ同じタイミングで出てきた。凄い偶然でビックリだよ。


「創、おはよ」


「おはよう千佳」


「お弁当はアタシのカバンに入ってるから、お昼の時に渡すわね」


「わかった」


…ボクが手を差し出すと彼女は握ってきたので、このまま学校に行こう。



 昨日同様、ほぼずっと手を繋いだ状態で教室に着く。ボクと千佳の席は隣同士なので、ギリギリまで繋ぐことができる。


「高校の授業って、中学より難しくなるのが不安よね…」


今日から授業が始まるし、千佳の気持ちはわかる。


「だよね。でも、ボクが千佳のわからないところを教えるから安心して」

そうすれば頼もしい彼氏に見えるよね?


「ありがと。お互い教え合えるように、アタシも頑張るから!」



 朝のホールルーム後に初めての授業が始まった訳だけど、初回だからか中学の復習をさせられた。程良い難易度と思ったのは、忘れてる証拠だな…。


そして時は過ぎ、ついに昼休みになる。ボクと千佳は机を向かい合わせる。


「こっちが創ので、これがアタシのだって」

そう言って、千佳はカバンから風呂敷に包まれた2種類のお弁当箱を出す。


どうやら青い風呂敷はボクので、赤い風呂敷は千佳のになるようだ。


「お弁当の中身はアタシも知らないの。起きた時にはできてたから…」


千尋さんはボクと千佳の好みを知ってるはずだから、おかずのチョイスを間違える事はないはず。


「早速開けてみましょ」


「そうだね」

千佳の言葉に合わせ、お弁当箱を開ける…。



 お弁当箱の中身は意外に普通だ。ふりかけがかかった白米に、肉巻きポテト・ミニハンバーグ・ミニサラダ・りんごうさぎとなっているけど…。


これはなんだろう? 半分に切られたゆで卵の黄身に、キノコのかさの部分が刺さっている。正確には“押し込んだ”というべきかな?


何でこんな事を? 本人がいないから訊けないのが残念だよ。


…千佳のお弁当も同じ内容だけど、ボクよりご飯・おかずの量が少ない。だから分けたんだね。


「母さん、お弁当で遊んだわね」

クスッと笑う千佳。


「遊んだ? どういう事?」


「本当はゆで卵じゃなくて“あわび”にしたかったと思うけど、さすがに無理だから妥協したのよ」


「あわび? 何で急にそんな物が出てくるの?」


「昨日のHで、アタシのを見たでしょ? 形が似てるじゃん」

内容が内容なので、千佳は小声で話し出す。


ここまで聴いてようやくわかった。


「千尋さん、下ネタを入れたんだね」


「そういう事。この肉巻きポテトだってそうじゃない? 挿入してるように見えるし」


急に肉巻きポテトが卑猥に見えてきたよ…。


「昨日“一線を越えるな”って言ってきたのに、わざと連想させる下ネタを入れるなんて…」


「創も付き合い長いからわかるでしょ? 母さんはお茶目なタイプだって」


千尋さんの真意はともかく、話題になったのは間違いない。味は文句なしだったし、放課後にお礼を言わないとね。



 昼休みが終わり、5限を乗り越えた。今日はこれで放課後だ。


「千佳。千尋さんにお礼を言いたいから、寄らせてもらうね」


「もちろん良いわよ」


ボク達は手を繋いだまま教室を出る。


そしてその調子でボクと千佳の家がある通りに出た時、母さんと千尋さんが話し込んでる場面に遭遇した。


一体何を話してるんだろう? 気になるから確認してみよう。

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