ブンドド! ドラゴン・ニューイヤー・スペシャル
ぶらボー
ライジング・サン・オハヨウサン
遠い遠い宇宙の向こう。
私たちの住む地球よりもっともっと大きな惑星マール。
大きな大きな大陸テエリク。
統治者であったケーワコグ共和国は倒れ、その大陸は混沌の大地と化した。
傭兵・賞金稼ぎ・私設軍隊・企業・マフィア・盗賊・テロリスト――
様々な人々が様々な思惑の下に来る日も来る日もドンパチドンパチ命を懸けて戦っていた。
これはそんな世界を駆け抜けるある傭兵たちとある少女の物語――
――の番外編である。
◇ ◇ ◇
キョエエエエエ!!
とある都市から数キロメートル離れた荒野。体長一キロメートルはあるであろう、巨大な怪物が炎を吐いて暴れ回る。
テエリクドラゴンワーム。
かつて地球で話題になったUMA、モンゴリアンデスワームによく似た現地生物だ。あまりのデカさ
「ギエエエエエ!! 怪獣ですー!!」
その怪物から少し離れた場所に待機する地上艦がある。サンディブラウンの色で塗装されたその船の名は「レトリバー」。腕利きの三人のロボット乗りの傭兵、「ブラックトリオ」を擁する艦である。
「ギョエエエエエ!! 火拭いてますがや!!」
そしてその船の窓から外を覗き騒いでいる、黒髪外ハネで六歳児ぐらいの大きさの少女の名はマヨ・ポテト。レトリバーのクルー達が荒野のド真ん中で拾った記憶喪失の謎少女である。
「だいじょぶですかねぇカリオ達……! あ、ポテチなくなりましたね」
◇ ◇ ◇
キョエエエエエ!!
「クッソ、よく動きやがる!」
暴れ回るテエリクドラゴンワームと戦う、三機の人型機動兵器「ビッグスーツ」。三機の内二機は「コイカル」、一機は「クロジ」という機体で、それぞれ乗り手に応じた改造を施されている。
黒く塗装されたその三機を駆るのは「レトリバー」のクルーである「ブラックトリオ」だ。立ち寄った街に怪物が接近しているとの
ガァン!
その内の一機が遠方からビームスナイパーライフルで狙撃を試みる。ビームはワームの外皮を
「あーもう!」
そのビッグスーツ、二機のコイカルの内の一機に乗るのは、赤いモヒカンがトレードマークの女性、リンコ・リンゴ。狙撃の名手である……いつもは。
バシュゥ! バシュゥ!
二基の
二基の「チョーク」は、主である一機のビッグスーツの元へ戻り、そばで滞空する。
「ぐぬぬ……」
そのビッグスーツ、二機のコイカルの内のもう一機に乗るのは、ショートアフロがトレードマークの大柄の男、ニッケル・ムデンカイ。様々な兵装を扱えるオールラウンダーであり、扱いの難しいドローン兵器の操作も上手い男である……いつもは。
ブォン!
最後の一機、クロジが目にも留まらぬ速さでビームソードを振り下ろす! ……掠りもしなかった。
「む……!?」
このライフルもシールドも持たず、ビームソード一本だけを装備する変わったクロジに乗るのは、ボーズ頭がトレードマークの細身の男、カリオ・ボーズ。銃の扱いは苦手だが、億単位の賞金首相手でも引けを取らない、「ウキヨエ流」と呼ばれる剣術の達人である……いつもは。
「ちょっと……二人とも、なんか今日ニブくない!?」
後方のリンコが、前衛を担当するカリオとニッケルに思わず声を掛ける。
「おまえも人のコト言えなくねえか!? この前は十キロ先の敵の頭部をいくつも吹き飛ばしてたスナイパーが、今日はあのクソデカい的にも当たってねえじゃねえか」
「む、確かに」
「確かにじゃないわよ、カリオ! 剣が
ボォオォオ!!
「うわ!」
三人が言い争いをしてても構わず、ワームは口から炎を吐いて攻撃してくる!
「いや、そのアレ! リンコさんちょっと言い訳してもいい?」
「なんだ言い訳って」
ニッケルはワームと
「その、ね、コックピットにマヨのニューイヤープレゼント持ってきちゃって……」
「何持ってきたんだよ」
「……お姫様の形したガラス細工」
「割れモンじゃねえか!」
ボォオォオ!!
「うわ!」
リンコの言い訳中でも構わず、ワームは口から炎を吐いて攻撃してくる!
「そ、そういうことなら俺も言い訳していいか?」
「何? ニッケルもなんかあるの?」
リンコはスコープ越しにワームと睨みあいながらニッケルに返事をする。
「俺もコックピットに持ってきちまった。マヨへのニューイヤープレゼント」
「何持ってきたの」
「……ウサギのらびおのティーカップセット」
「割れモンじゃん!」
ボォオォオ!!
「うわ!」
ニッケルの言い訳中でも構わず、ワームは口から炎を吐いて攻撃してくる!
「つまり! 二人ともプレゼント割らないようにいつもより動きが慎重になっていると!」
「……まさかカリオも割れモン持って来てるの!?」
二人はワームの目の前でビームソードをブンブン振って威嚇しているカリオに視線を向ける。
「……うん、その、俺も実はマヨへのプレゼント持ってきちゃってて、ジャスティス・バーガーのプラモデル」
カリオがそう言うと、ニッケルとリンコは少しムッとした顔をする。
「おい、それは割れモンじゃないだろ。箱に入っているんだろ?」
「大丈夫でしょー、いつもみたいに一瞬二斬とかやっちゃっても」
二人の反応を聞くと、カリオは剣をブンブン振って威嚇しながら話を続ける。
「……いや、それなんだけどよ。マヨの奴、絶対プラモデルなんか作れないだろうから、この怪物が出る直前まで俺が組み立ててさ」
「おう」
「うん」
「……接着剤が
ボォオォオ!!
「うわ!」
ワームは口から炎を吐いて攻撃してくる!
「クソァ!! 三人ともプレゼントを守るために激しく動けないってワケだ!」
「わ、私もダメだからね! 高かったんだからコレ! 狙撃だって位置取りとか銃の反動とかで結構揺れるんだから!」
キョエエエエエ!!
「む!?」
突如、ワームが速度を上げてカリオに突進してくる! このままでは鋭い牙で粉々にされてしまうだろう……しかし焦って回避や反撃をすれば接着剤の乾いていないプラモがバラバラになってしまう。カリオは極限状態で判断を迫られた!
その時である。
「星は光る」
ブモォオオオ!!
「!?」
「え、何!?」
突然の出来事であった。空から降りてくる謎の声。それと同時にカリオに飛び掛かろうとしたテエリクドラゴンワームの横から、高さ三十メートルはあるであろう光のトナカイが突進してきたのである!
キョエエエエエ!?
巨大な光の角による一撃を食らったワームは、血を吹いて即死。そのまま荒野に倒れ込んで動かなくなった。文字通り一撃必殺の突進であった。
ブモォオオオ……
テエリクドラゴンワームを倒した光のトナカイは、満足したかのようにキラキラといくつもの光の砂のように散らばっていき、消えていった。
「な、なんだ今の」
「ねえアレ!!」
空に浮かんでいたのは赤い人型機動兵器。だが三人の傭兵が乗っているモノとは雰囲気が違う。
キラキラと光る粒子を放ちながら浮かぶその機体の頭部からは、真っ白で立派なデカい
「アレは……まさか『シャンタ・クロウス』!?」
ニッケルは思わずごくりと唾を飲み込んだ。
シャンタ・クロウス。遥か昔、人類がこの星に渡ってきたときよりさらに前、地球という星に住んでいた頃。新しい年が始まる頃に、子供達に恵みを与え、悪の心を持つ者に天の裁きを与えたと言われている伝説のおじいさんである。
そう伝説である。実のところ架空のモノだとされている。しかし空に浮かぶ
「あ……」
呆気に取られていたカリオが思わずそう声を漏らす。
「……え、なんかスゴイの見ちゃったよね。どうする?」
「……どうするべ」
……とりあえず三人は、ワームは発見した時に既に
◇ ◇ ◇
「いくら私が子供だからってシャンタ・クロウスが実在したなんて話は信じませんよカリオ」
「む……」
レトリバーのマヨの部屋。カリオは組み立てたジャスティス・バーガーのプラモデルをマヨに渡し、彼女がそれをジーっと
「……このパーツ、逆に付いていませんかカリオ」
(ブンドド! ドラゴン・ニューイヤー・スペシャル 終わり)
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拙作をお読みいただきありがとうございます。本編のロボットアクション作品「ブンドド!」は下記リンクにて連載中です。お時間ございましたらぜひお越しくださいませ。
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