第6話朝はつらい
ピピピピッ、ピピピピッ…
「…んぅ…ぁ…」
電子アラームの音で目が覚めた。手探りで床に転がっている時計を探ってアラームを止める。
良かった。今日は良い目覚めだ。また昨日のように蛙に爆発させられたらどうしようかと…
眠い目をこすりながら体を起こす。まだ起きる気にはならないが、今日はあいにくの学校だ。もう休んじゃおうかな…
「おはよう傑くん。よく眠れた?」
「…?」
…おかしいな。俺の目の前にいないはずの真奈さんのご尊顔が見えるんですけど。それもかなりの至近距離で。ここ俺の家だよね?
「…蛙が真奈さんに化けた…?」
「そのくだりまだ続いてたんだ」
…そうか、まだ夢の中なのか。最近は変な夢ばっかりみるな〜蛙の呪いかな?とりあえずもっかい寝たら目が覚めたり…
「夢じゃないよー?起きてー?」
「ふぁいおふぃまふ…」
真奈さんに顔をグイグイといじられる。夢が冷める気配は無いし、痛覚もちゃんとある。どうやら現実のようだ。…じゃなんで真奈さんがここに。
…まいいや。とりあえず顔洗いに行こう。
俺はニコニコとしている真奈さんをおいて洗面所へと向かった。
「…なんでいるんですか。ていうかどうやって入ってきたんですか」
顔を洗ってスッキリしたところで俺の中には一つの疑問が残った。なんで真奈さんが俺の部屋にいるのか?どう考えても謎な事象に本人に問いかける。
「幼馴染はピッキングぐらい余裕で出来ちゃうんだよ?」
「う〜ん、俺の中の幼馴染の定義がどんどん変わっていく」
「それはそうとして傑くん。私に言う事あるでしょ?」
「え?おはようございます…」
「いや…うん。おはようございます。そうなんだけど、それ以外にもあるでしょ?」
…なんだろう。俺何か真奈さんに悪いことしたっけ。別に真奈さんのファンに真奈さんのタイプ教えてアイス奢ってもらったこと以外は悪いことしてないんだけど。
「これ。なんなの?」
「あー…」
真奈さんがおもむろに取り出したのは俺の秘蔵のエロ本だった。あれってたしか屋根裏と見せかけてタンスにしまってある鍵付きのタンスにしまっておいたはずなんだけど…どうやらこの人俺の部屋を漁ったようだ。
「なんでこんなものが傑くんの部屋にあるの?」
「えーっと…拾ったんですよ。拾ってほしそうにこちらを見つめてたんで…」
「勝手に拾っちゃダメでしょ。誰かのものだったらどうするの?」
いや、道端に捨てられてる時点でもう既に人のものでは無いと思うんだけど…でもやけに綺麗だったし、誰かが意図せず落としちゃったやつなのかな?…でも交番にエロ本届けるわけにもいかないし…
「というか第一!傑くんには私がいるでしょ!」
「…それってどういう意味ですか?」
「私で発散すればいいでしょ?」
「おぉう大胆…」
「普通は幼馴染の裸体を思い出して悶々とするでしょ」
「しないですよ。ていうか幼馴染じゃないし」
そんな展開は同人誌でしか無い。現実ではあり得ないのだ。この人さては俺以上に頭ピンクだな?
まったく、この人の幼馴染の定義はどうなっているのやら…どこのどいつなんだ間違った教育を施したのは。俺が一から育てたほうがマシに育つ自信あるぞ。
「ていうか勝手に漁らないでくださいよ。俺のプライバシーの権利はどこに行ったんですか」
「幼馴染にはそんなの関係ないでしょ?何言ってるの傑くん」
…俺は時々あなたのことが怖いよ真奈さん。学園の完璧美少女はいつからこうなってしまったというのだ…一体誰がこんなことを…
「朝からそんな暗い顔しないで?ほら、ぎゅーってしてあげる」
「うわぁ〜いい匂い」
真奈さんのそこそこのサイズがある胸に顔を埋められる。全体的に伝わってくる柔らかな感覚とふわっと香るいい匂いが俺をますます混乱させてくる。
この間の洗脳の時もそうだったが、この人の香りは人を惑わす力がある。実際に俺はこの香りのせいで洗脳されかけた。これはきっと彼女自信が発するフェロモン的な何かなのだと思っている。恐るべし完璧美少女…
「よしよし…大丈夫だからね…いつでも私が慰めてくれるから…」
「…あの、真奈さん?そろそろ離してほしいっていうか…」
「このまま私のものになろうね♡」
おっと危ない気配が漂ってきたな…母性が爆発しかけている。このままだと一生慰めてくれる完璧なママが誕生して俺は手籠めにされてしまう。それは避けたい。この状況からどうにかして脱出しなくては…!
「真奈さん、息が苦しいから離してほしい」
「ふふ、このまま窒息させて気絶させようかな…」
「ちょっと、気絶させて何する気ですか。警察に連絡しますよ」
「スマホは私の胸に挟まってるから無理だよ〜♡」
…マジだ。目の前で俺のスマホが真奈さんの胸に挟まってる。そこ代われ。…じゃない。連絡手段がなくなった。このままだと俺の未来は真奈さんの赤ちゃんで決定しちゃう。そんなのヤダ。
「…そうだ、真奈さん。俺朝ごはん食べたい」
「…そっか、朝ごはんまだだったよね!今作るから待ってて!」
真奈さんはキッチンに向かって勢いよく部屋を飛び出していった。…よかった。どうにか脱出できたようだ。
「ふんふんふ〜ん♪」
部屋での一件から数分。俺はリビングの前で真奈さんが朝ごはんを作る姿を見ていた。セーラー服の飢えからエプロンを着用したその姿はこう、なんか見ていてイケナイことをしている気分になる。
「傑くん、冷蔵庫空っぽだったよ?ちゃんと食べてるの?」
「コンビニ弁当食べてるから大丈夫ですよ。美味しいですよ最近のコンビニ弁当は」
「だー!ダメだよコンビニ弁当は!傑くん死んじゃうよ!」
「そんな猛毒じゃないんですから…考え過ぎですよ」
「コンビニ弁当は人を内から腐らせるんだよ!今日からでも私で塗り替えないと…」
以前に聞いたことなのだが、真奈さんは生まれてこの方コンビニ弁当というものを食べたことがないらしい。なんでも、親に毒だと教え込まれていたのだとか。育ちが良すぎるだろ。
「…今度食べてみます?コンビニ弁当」
「…へ?」
「食べたら毒かどうか分かるんじゃないですか?」
「そ、それは傑くんが口移ししてくれるということですか…?」
「何故に敬語…ていうかそうじゃないですって」
「…す、傑くんが口移ししてくれるならぜひ…」
「う〜ん、ちょっと考えものですね」
…日に日に真奈さんの頭がおかしくなっていっている気がするのは俺だけなのだろうか。この調子だと数年後には言いくるめられて結婚させられる気がする。…まぁ、可愛いしいっか。
そうこうしているうちに朝食ができたようだ。ベーコンエッグとサラダ、コーンスープにトーストがのせられたプレートが運ばれてくる。
「はい、どうぞ。朝は洋食派だったよね?」
「そうっすね。…一応聞きますけどなんで知ってるんですか?」
「幼馴染だから、だよ?」
うん、知ってた。とりあえず食べよう。
ガチャ
「ふわぁ…お兄、朝ごはんつk…え?」
「え?」
「あ」
…なんか修羅場の予感。
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