3-24 命名すっ!


 子供たちの家が順次作られ、金曜日。


 前日にドワーフっ子のシルバラのおウチが、そして本日に4軒目となるエルフ姉妹のおウチが完成した。簡単な造りなので1日に1軒ペースだ。


「むはーっ! マールのおウチ! ミニャちゃん、賢者様、ありがとう!」


「ミニャさん、賢者様、ありがとうございます」


 内見を済ませ、最近覚えたズンズンダンスを踊る妹のマールと、そんなマールと一緒にズンズンするミニャに深々と頭を下げる姉のレネイア。

 すでにおウチを持っているスノーやシルバラもお手伝いしたので、我がことのようにニコニコだ。


 子供たちの家ができたことで、ひとまずは村が形になった。


 村の真ん中にはメイン通りがあり、東は湖や女神像へ続き、西は旧拠点や鬼芋の群生地に繋がっている。

 メイン通りのちょうど真ん中にみんなの食堂があり、食堂の周りにミニャの家や子供たちの家が並んでいる。それらから東へ少し離れた場所に公衆浴場が建てられ、南の方に公衆トイレが作られた。


 この村は区画だけは計画通りに作られており、公衆浴場や公衆トイレが他の民家から離れているのもそれが理由だ。最終的に北東にある川から水を引いて上下水道を作る予定なので、民家を巡ってから浴場やトイレに下水が通る仕組みになっている。


 村周辺の木々は引き続き伐採が続いており、他にも様々な施設が作られる予定。


『ネコ太:ミニャちゃん。ついにみんなのおウチが全部できました!』


「にゃふ!」


 興奮冷めやらぬといった猫っ気を噴出させ、ミニャが頷いた。

 4軒のおウチ、食堂、公衆浴場、おトイレとたくさんの建物が建ったことで、一気に村らしくなっていた。

 これにはミニャでなくても誇らしげだ。重機や誰かが加工した資材を使わず、ゼロから自分たちで建てたわけで、遥かに素晴らしい建築物を知っている現代人と云えども愛着が沸くのも無理はなかった。


『ネコ太:そこで、ミニャちゃんにはこの村の名前を付けてもらおうと思います』


「にゃんですと!」


 突然のお願いにミニャは吃驚仰天。

 しかし、すぐに思考を切り替えて、うーんと一丁前に腕組みをして考える。


 すぐにキュピピン。

 いつものように体を捻ってエネルギーを解放し、それと一緒に大宣言。


「賢者様村!」


 微妙であった。


『ネコ太:うーん、私たちは嬉しいけどちょっと変かなぁ』


「えー! そっかー。うーん……じゃあ、お魚村!」


『ネコ太:そ、それもおかしいかなぁ。漁村ってわけじゃないし』


「えー、難しいなぁ。うーん……はっ! 女神様村! あっ、ドングリ村もいいかもしんない!」


『ネコ太:ミニャちゃん、好きなものの名前を付けてない?』


「なんでわかったの!?」


 モグブシンにモグと名付けたのと一緒だ。

 ミニャは子供なので名づけのルールだとか、カッコイイ地名だとか、そういったデータが蓄積されていなかった。だから、シンプルな名前しか思いつかないのである。


「じゃあ賢者様も一緒に考えて」


『ネコ太:それじゃあミニャちゃん、全体アナウンスを使ってみよう』


「ミニャ、それ知ってる! ニーテストさんからのお手紙がウインドウにピョコロンってくるやつ! ミニャも使って良いの?」


『ネコ太:もちろん!』


 というわけで、ミニャはネコ太に教わりながら全体アナウンスを初めて製作してみた。


■■■■■■■■■■■■■■■■■

【全体アナウンス:ミニャ】

『件名:村の名前について』

 村の名前を一緒に考えてください!

 素敵なのがいいです!

■■■■■■■■■■■■■■■■■


 全賢者にピョコロンと緊急ミッションが勃発した。


 クエストをしている賢者も、学校からの帰宅途中の賢者も、会社でお仕事中の賢者も、みんなが頭をフル回転させて村の名前を考え始める。



>>>>>>>>>>>>>>>>


『村の名前を考えるスレッド!』


1、ミニャ

 ここはみんなの村の名前を考えるスレッドです!

 みんなで考えてください!


2、タカシ

 2ゲット!


3、ヨシュア

 2ゲット!


4、ジャパンツ

 よっしゃー、2ゲットだぜ!

  ・

  ・

【以下、しばらく愚者の同じ書き込みが続く】

  ・

  ・

11、名無し

 ミニャちゃん、スレッドまで立てたの!? 偉い!


12、名無し

 ミニャちゃんの初スレッドだからって10まで消費すんなや。


13、ミニャ

 2ゲット!


14、名無し

 ほらー、ミニャちゃんが真似しちゃった!


15、名無し

 ネコミミ村!


16、名無し

 女神様村は良いかなと思ったんだけどな。女神の村とかの方が座りはいいけど。


17、名無し

 ミニャちゃんビレッジ!


18、名無し

 奇跡の村!


19、名無し

 偽物の天才がいそうな名前だな。あと地球のどっかにマジであると思うぞ。


20、ルナリー

 ミニャちゃん、どうやって決めるの? 私たちが提案して、ミニャちゃんがその中から素敵なのを選ぶ感じかな?


21、ミニャ

 それがいいかもヾ(@⌒―⌒@)ノ


22、名無し

 顔文字を使い始めた(*’▽’)


23、名無し

 カワ(・∀・)イイ!!


24、名無し

 顔文字使えてえらい(*‘ω‘ *)

  ・

  ・

【話し合いにならない話し合いが続く】

  ・

  ・

45、髑髏丸

 おい、落ち着け。話し合いになっていないぞ。


46、名無し

 ハッ!? こんな楽しいスレッドは初めてだから理性が飛んでいた。


47、名無し

 ミニャルバ村はどうでしょうか? ミニャちゃんの名前と、知恵や戦い、芸術なんかの女神のミネルバを合わせた感じです。


48、名無し

 キラリと光るセンスを感じるが、俺たちの世界の女神なわけだし、パトラ様は良い顔をしないんじゃないか?


49、名無し

 あー、俺もミニャルバ村はセンスいいと思ったけど、48の意見は正しいかも。


50、名無し

 それなら、パトミニャ村!


51、名無し

 そのまんまだが、良いじゃん。


52、名無し

 パトラ様とミニャちゃんか。名前も女神様が上だし良いと思う。


53、名無し

 女神様の名前を勝手に使って良いのかな? というか、短縮しちゃっていいのかな。


54、名無し

 名前の順序とか縁起とか、俺たち日本人だなぁって思う。


55、名無し

 これってすぐに決められることかな? 2、3日猶予があった方が良くない?


56、名無し

 明日から町に行くし、名乗れるようにしておいた方が良いと思うな。


57、名無し

 それはあるかも。


58、ミニャ

 ミニャ、賢者様の名前も入れたい(*’▽’)


59、くのいち

 ミニャちゃぁああああん!


59、名無し

 ふぁあああああ! かーわーいーいー!

  ・

  ・

【話し合いになっていない書き込みがしばらく続く】

  ・

  ・

82、名無し

 ちょっと落ち着こ?


83、名無し

 ニーテストはどうした。ヤツがいないとまとまらんぞ。


84、ニーテスト

 見ているが、ミニャとお前らで決めてくれ。


85、ミニャ

 わかったヾ(@⌒―⌒@)ノ


86、名無し

 わかったヾ(@⌒―⌒@)ノ


87、名無し

 わかったヾ(@⌒―⌒@)ノ


88、ミニャ

 あー、ミニャの真似っこだーっ!


89、名無し

 はえー、ミニャちゃんがいるだけでスレッドが10倍楽しい。


90、サバイバー

 ミニャンジャ村とかどうだろう?


91、名無し

 そのままだけど語感は可愛い。


92、名無し

 意外なヤツから提案があったwww


93、ミニャ

 ミニャンジャ村! ミニャと賢者様でミニャンジャ村だ!


94、名無し

 ミニャちゃんに言われて初めて気づいた!


95、名無し

 ホントだ!


96、名無し

 ミニャちゃん賢い!


97、ミニャ

 ニャンジャ!

   ・

   ・

   ・

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


 ちょいちょい理性が消し飛ぶ賢者が現れるせいで話し合いは難航したが、いくつかの候補が並んだ。

 最終決定を下すミニャは候補と睨めっこして、うーんと腕組み。そうして、すぐにブツブツとそれぞれの名前を口に出して読んでみて、ついにコクンと頷いた。


「決めた!」


 その声に、賢者たちと遊んでいた子供たちがミニャに注目した。

 ミニャは賢者たちに教えられた通りに宣言する。


「みんなで作ったこの村を、ミニャンジャ村と命名す!」


 ミニャと賢者の村、合わせてミニャンジャ村である。

 こういう話し合いにはあまり参加しないサバイバーが出した名前が採用された形だ。


「すっ! めいめぇ~……すっ!」


「命名す!」の語感が気に入ったようで、ミニャはネコミミをピコピコさせながらポージングを取って、追加の「すっ!」の連撃。

 その周りで、賢者や子供たちも大喜びで拍手をして、自分たちの村の名前を受け入れた。


 こうしてミニャの村が始まったが、まだまだ作るものは多い。

 各種生活インフラに、畑や機織り用の施設などなど。

 ここをミニャと賢者たちの理想郷とすべく、開発予定はつっかえている。


 しかし、ひとまずは明日の町への訪問に備えて、本日は英気を養うのだった。



 第3章 ミニャちゃん村長と増殖する賢者たち 完

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