3-15 休日 午前の部


 休日に向けて狩りが行なわれる一方で、この晩は特殊なクエストもある様子。


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開始時刻 21:30

仕事:オモチャ作り

人形:フィギュアシリーズ20体

募集人数:20人

条件:オモチャを作れる者

達成条件:ミニャたちのオモチャを作る。


説明:

・ミニャたちが遊ぶオモチャを製作する。

 今後の活動を考慮して、知的財産権を侵害する品は作らないように。昔からある物を作成すること。それら含めてNGなものもあるので生産スレッドで打ち合わせてくれ。

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【4月20日】生産スレッド PART5

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116、シリウス

 やったー、オモチャ作りゲットした! なに作ろうかな! 先輩たちはなに作るの? ていうか、みんなで一つの物を量産する感じ?


117、工作王

 いや、各自で作る。もちろん、チームで作ってもかまわん。ちなみに俺は縄跳びを人数分作るけど、他は必ずしも人数分作る必要はない。ただ喧嘩が起こらないように注意はしてくれ。あと、量産が必要な場合は、俺に言ってくれればクエストを発行して増員するから。


118、ジャスパー

 土属性だけど失礼します! 僕は石でオハジキとかビー玉を作るつもり。


119、シリウス

 ふむふむ、縄跳びにオハジキかー。


120、ネムネム

 あたしはルナリーちゃんと一緒にビーズを大量生産するよ(*’▽’)鉄板や!


121、ルナリー

 ラッカ君やシルバラちゃんみたいに工作が好きそうな子がたくさんいますしね!


122、ジャスパー

 あっ、ビーズか! 僕も途中から一緒に作っていい?


123、ルナリー

 はい、もちろんです!


124、サカタ

 ビーズ細工はキラーコンテンツじゃない? 女子にビーズ細工を見せて勝てる気がしないんだけど。


125、ネムネム

 我々の勝ち負けではないのだ。子供たちを飽きさせない(`・ω・´)我々はエンターテイナーだということを忘れてはならない。


126、名無し

 いや、賢者だろ。


127、工作王

 まあ、ネムネムの言うことは尤もだ。年齢幅が広いから、多くの遊具を用意して誰でも遊べるように準備してほしい。


128、リッド

 ビーズ細工にはコルンの糸を使うの? もしそうなら弱くない?


129、ネムネム

 コルンの糸を使うつもりだけど、日常使いじゃなくてお部屋に飾るとかそういう用途にしようかなと。


130、リッド

 まあそれなら大丈夫かな。


131、シリウス

 僕も糸を使っても大丈夫?


132、工作王

 糸は結構な量あるから大丈夫だよ。ただ、市販の糸みたいな綺麗で丈夫な物じゃないから、作る前に確認した方が良い。ちなみに何を作るんだ?


133、シリウス

 ブンブンゴマ!


134、工作王

 渋いなおい。だけど、あれは瞬間最大楽しい風速が激高だし良いかもな。


135、シリウス

 でしょ!?


136、サカタ

 糸の件だけど、ブンブンゴマなら強度的にいけると思うよ。少し太いけど丈夫な糸があるから、あとで案内するよ。


137、シリウス

 ありがとう!


138、工作王

 いや、待てよ。あれなら子供でも作れるから、シリウスは1つだけ作ってくれ。いい感じに回るなら、同じ材料を用意して、明日、希望する子供たちに作らせよう。


139、シリウス

 うぇええええ、なにそれ楽しそう! でも、明日、僕、仕事なんだけど!?


140、サカタ

 悲しいなぁ。でも、賢者とはそういうもんなんだ( ;∀;)


141、名無し

 お前が揃えた材料で俺たちがブンブンゴマの作り方をキッズに教えている様子を職場で見て楽しめ。


142、シリウス

 脳がおかしくなるわwww


143、オメガ

 お邪魔するよ。ラッカとビャノのために竹馬を作ろうと思うんだけど、先輩の意見を聞きたい。


144、リッド

 竹馬か、僕は良いと思うな。


145、サカタ

 でも竹がないよ。俺も2、3回しか乗ったことないけど、あれって軽い素材じゃないときついんじゃない?


146、オメガ

 片手で持ち上がる重さなら大丈夫だと思う。『乾燥』で水分を抜けば良くないか?


147、リッド

 クーザーの船から頂戴した木の柵は?


148、工作王

 あるけど、あれは船の材料だからか割と重いぞ。それに竹馬にするには長さが足りないと思う。士道ってヤツが木について詳しいから、軽い木のストックがないか聞いておいてやるよ。まあ寝ているかもしれないけど。


149、オメガ

 マジっすか、お願いします。


150、サカタ

 工作王は別にタメ口で大丈夫だよ。


151、工作王

 まあ別に気にしないな。


152、オメガ

 そっか。じゃあ頼むわ!


153、名無し

 切り替えはぇえwww


154、サカタ

 竹馬かー。じゃあ俺はポックリ竹馬を作るかな。たぶん、竹馬を見たらルミーちゃんとかが羨ましがるだろうし。


155、ネムネム

 いいかもしれんね(*'▽')あたしんちの近所のキッズも乗ってた!


156、リッド

 僕は何を作ろうかなー。ちなみにNGな物ってなに?


157、工作王

 笛みたいな魔物を呼びそうな楽器、知的財産権を侵害しそうな物、あとはフライングディスクみたいに遠くへ飛ぶものだな。資材や穴もあるし、静止が間に合わないほど全力疾走されるようなアイテムはまだ作りたくない。


158、リッド

 そんな感じね。そうなると、僕はみんなが使う小さなハサミでも作ろうかな。


159、ルナリー

 あ、それ助かります。


160、リッド

 聞いた限りだと使うのは糸用だけだよね?


161、ルナリー

 そうですね。ですから、賢者が切れば良いかなと思ったんですけど、ハサミがあれば完成した時にもっと達成感はあるかと思います。


162、リッド

 オッケー。じゃあ2本作っておくよ。


163、シリウス

 僕のブンブンゴマにキリが必要かも。作った方が良いかな?


164、リッド

 そうなると、コマ部分を木で作るってことだよね? それなら、賢者が穴を空けてあげた方がいいね。キリは単純だけど強度を持たせるのは難しいと思う。


165、シリウス

 じゃあ、そこまでは僕がやっておこうかな。


166、工作王

 しかし、外遊びと中遊びに分かれてるな。


167、名無し

 午前と午後で分けたら? 一日中外で遊ぶのもキツイと思うよ。


168、ネムネム

 午前と午後を分けるのは賛成だけど、たぶんみんな一日中外でも遊べるよ(。-`ω-)我々とは違うのだよ。


169、ルナリー

 それはありますね。元気な子はずっと遊びますからね。私も無理なタイプです。


170、工作王

 じゃあまあ午前午後の案を採用するか。午前は外遊びで、午後は中遊びということでニーテストに話を通しておくよ。明日はサバイバーがいないから、護衛の面でもそっちの方が良いだろう。


171、名無し

 明日サバイバーいないの? 珍しいじゃん。


172、工作王

 ああ、スカウトに行きたいらしい。


173、サカタ

 サバイバーのスカウトとか期待しかないじゃんwww

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 そんな打ち合わせをして、賢者たちは子供たちが喜ぶ姿を想像して工作に勤しんだ。




 翌日。

 いつものように近衛隊に起こされたミニャや子供たち。

 ネムネム粒子をぽわぽわ出しながら目覚めるキッズたちだが、脳内の冒険の書を読みこんだ順番からキュピンと大覚醒。


 今日はお休みだ!


 ミニャはネムネム粒子を吹き飛ばすようにズンズンダンスを踊り始め、それを見たイヌミミ姉妹も尻尾をブンブン振って部屋に充満したミルクの匂いを攪拌させる。


 お外に出れば、お休みを祝福するかのようなピカピカな日和。

 食堂から漂う朝ごはんの香りも今日は特別な予感。まあ、朝ごはんは通常通りなのだが、気分的に。


 朝ごはんを食べて、まずはお散歩がてらに女神の祠にお参り。

 女神の祠を軽くお掃除して、今日はお休みです、と女神様にご報告。


 それが終わって拠点に戻ると、いつものように朝の会が始まった。


「今日はお休みです! 森は魔物さんがいるので勝手に入らないようにしましょう!」


「「「はーい!」」」


 ニコニコした子供たちの元気なお返事が青空に溶けていく。


 カンペの続きに目を通したミニャは、口を開きかけて、シュバッと二度見。


「にゃ、にゃんですと!」


 その驚きに、なんだなんだとキッズたち。

 ミニャはわなわなしながら続きを読んだ。


「賢者様たちが遊ぶ道具を作ってくれたって!」


 ピシャゴーンと宣言し、それを真っ向から受け止めた年少組にも電流が走る。この世界の子供は早熟だが、年長組も心なしか嬉しそう。


「あそこだって!」


 ミニャがズビシと指さした場所には、賢者たちがお店を開いていた。

 みんなでさっそくそこへ行ってみると、大きな葉っぱや石の上に賢者たちが昨晩作ったオモチャが並んでいた。


『くのいち:ミニャちゃん、好きなオモチャで遊んでいいんだよ』


 近衛隊からそう言われ、ミニャはズンズンと踊り出す。賢者の言葉は読めていないが、陽気な年少組もそれに共鳴した。


「好きなので遊んでいいって!」


 一頻り踊ってからミニャに告げられ、年少組はパァッと顔を輝かせた。


 そんな子供たちの様子を見て、お店を開く賢者たちはドキドキした。

 つまらないと思われたらどうしようと。基本的にネガティブ、それが賢者。


「ミニャお姉ちゃん、これなに!?」


「にゃんだこれ!」


 パインの質問に、ミニャはむむむっとした。


 それはポックリ竹馬だった。

 さっそく指名されて、製作者のサカタのドキドキ回路はショート寸前。


 ポックリ竹馬とは、長い紐がついた2つの缶にそれぞれ足を乗せ、その紐を手で引っ張りながら歩く遊び道具だ。賢者の作ったポックリ竹馬は木製で、馬の部分は15cmとそこそこ高い。


『サカタ:くのいちさん。ちょっと実演してやって』


『くのいち:あ、あたし!? 作ったアンタがやればいいじゃない』


『サカタ:緊張して立てない』


『くのいち:メンタルなめくじかよ!?』


 というわけで、くのいちが子供たちの前で人形サイズのポックリ竹馬で遊び方を実演した。

 子供たちと多くの賢者に注目されながら、くのいちはイチ、ニ、イチ、ニ。小学生以来のポックリ竹馬に、くのいちの足腰もショート寸前。


 それを見たミニャはパァッと顔を輝かせたが、ポックリ竹馬をパインの足に装着してあげた。これぞ王の資質か。


「ミニャお姉ちゃん、ありがとう! あっ! あははははっ、たかーい!」


 パインはシッポをブンブン振って、イチ、ニ、イチ、ニ。


「ミニャお姉ちゃ、ルミーも! ルミーもやりたい!」


「じゃあほら、足出して」


 ポックリ竹馬は全部で4つあるので、ミニャはルミーを乗せてあげた。自分もやりたいのに妹分にやらせてあげる。やはりこれぞ王の資質!

 そうして自分もうんしょと乗馬し、颯爽とポックリポックリ。


「あははは、ミニャ背高くなった!」


 ポックリ竹馬の人気が熱く、ニコパの嵐が吹き荒れる。

 サカタはドキドキから一転してドヤ顔だ。


 ところが、ここでミニャ、まさかの遠乗り。2人と一緒にドライブに行って、お店から離れてしまった。

 ミニャが移動すれば他の子供たちも移動し始めてしまう。このままではポックリ竹馬に全部持っていかれると、他の賢者たちもアピールを開始した。


 本日はお外での遊びをする午前の部と、物作り体験の午後の部に分かれていた。

 今は午前なので、ここに並んでいるのもお外遊びの道具ばかり。


 まず動いたのは竹馬を作ったオメガだった。

 ポックリ竹馬が成功を収めたので、ノーマルな竹馬もいけるはず。


 オメガは双子のラッカの足をペシペシと叩いてアピール。


「わっ、賢者様、なぁに?」


 注目させたオメガはすぐにミニ竹馬に自ら乗って実演。


「わぁ、僕もやっていいの?」


 オメガはコクコクと頷き、ビャノにも勧めた。


 ラッカとビャノは乗る際に手こずったので、スノーとレネイアが補助してあげた。


「わ、凄い! 歩ける! お姉ちゃん、見て!」


「お姉ちゃん、僕も歩けるよ!」


 ビャノとラッカが竹馬に乗ってヨチヨチ歩きながら、スノーにアピールした。


「おー、2人とも上手だね!」


「「えへへ!」」


 スノーに褒められて、双子は同じ顔で笑った。


 その笑顔を見て、近衛隊の乙女センサーに感あり。

 この双子はスノーのことが好きなのではないかと。

 スノーと双子には血の繋がりがなく、それなのに自分たちのために一生懸命働いてくれていたスノーに恋心を抱いても不思議ではないと思ったのだ。


 とはいえ、双子はまだ6歳でスノーは10歳だ。先のことはわからない。

 ただまあ、年下の双子に挟まれたオイラっ子の恋の行方とか、女子たちには大好物だった。


 そんなことをしていると、遠乗りをしていたミニャたちがカッパカッパと帰ってきた。


「わー、それも面白そうだね!」


「お兄ちゃんたちすごーい!」


 ミニャたちの感心が竹馬に向かう。

 ポックリ竹馬にストップ安の気配。


 シュバッ、シュバッ、シュバッ!

 その時、大地を虐める縄の音が轟いた。


 ミニャとイヌミミ姉妹はケモミミをピンと立てて、そちらへ注目。

 そちらでは、賢者から教わって縄跳びを飛ぶエルフ妹のマールとドワーフっ子のシルバラの姿が。


 ミニャたちはポックリ竹馬を駆って、2人の下へ向かった。


「なにそれぇ!」


「こうやって縄を飛ぶんだって! 名前はぁ……わかんない!」


「結構難しいです!」


 ミニャの興味に、マールとシルバラがそれぞれ反応する。


「おー! 賢者様、これの名前は?」


『ラフィーネ:これは縄跳びですわ』


 縄跳びの宣伝役をしているのは近衛隊のラフィーネだ。

 作ったのは工作王だが、本日はニーテストの代わりに召喚業務をしているため、ラフィーネが代理で実演していた。


 見本を見せるラフィーネの縄跳びの腕前は良く、あや跳びや二重跳びと披露している。

 それを見て女児たちの血が騒ぐ。ミニャの村の女子は、村長を筆頭に元気っ子が多かった。


 ミニャは愛馬から下馬し、縄跳びを手に取った。

 シュバッ、ペシン!


「むむっ!」


 足を引っかけちゃうミニャだが、それで全てを理解した。


「うにゃにゃにゃにゃ!」


 ミニャの運動神経は大変に良い。

 最初のほうこそ過剰に膝を過剰に曲げての縄跳びだったが、それが次第に最適化されていく。


『くのいち:あわわわわ……あたしより上手!』


『ラフィーネ:天才ですわ! やっぱりミニャさんは天才なんですわよ!』


 近衛隊はミニャからあふれ出る縄跳びセンスに足をガクつかせた。


 縄跳びはミニャたちに継続的な運動をさせられる良い遊びになると考えられ、人数分が用意されていた。そのためにロープが結構な量を使われたが、それだけの価値はある。


 すぐに第一次縄跳びブームが勃発した。

 魅力的な娯楽が多い日本でも子供たちの間に根強い人気がある遊び、縄跳び。シンプルながらに奥が深いその魅力は異世界でも猛威を振るった。


 この魔力に特に取りつかれたのはスノーだ。

 賢者たちに教わりながら、いろいろな技を覚えていく。


「「お姉ちゃん上手!」」


「だろー!」


 双子から尊敬の眼差しを向けられるスノーは、心から楽しそうに笑っていた。

 気を張り詰めながら大人たちに混じって仕事をしていたスノーが見せた子供らしい笑顔に、賢者たちはほろりとくるものがあった。


 冒険者に混じって森に入るアクティブさがあるだけに、その運動能力も結構高い。ドッヂボールをやらせれば良いソルジャーになるタイプだ。


 途中から二人跳びを覚え、楽しい笑い声が広場に賑やかに彩る。それは声を出せない賢者たちだけでは実現しなかった光景だ。


 10時になると軽いおやつタイムになり、それからは縄跳び以外の遊びも再評価の動き。


 賢者たちがコースを作ってあげてポックリ竹馬や竹馬で遊び、縄跳びも2人で飛んだり、高度な技を教えたりして飽きさせない。

 トロッコや竹とんぼも使われ、子供たちの満足度は高そうだ。


 夢中で遊んでいるのは子供だけではない。賢者たちも子供に混じって走り回り、全力で楽しんだ。

 本日は火曜日、平日……っ!

 午前中からキッズと全力で遊んでいる賢者のほとんどは、ニートやフリーターなのである!

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