処方はラーメン

和泉眞弓

第1話

「普通高校、受かったら、先生、ラーメン行こ」

 目ばかり大きな菜摘の瞳は、研修医の涼介に白刃を突きつけた。一瞬でも逸らせばこの子は二度と何も望まないだろう。BMI15の拒食。一時より増加したとはいえ、入院レベルだ。

 親に連れてってもらえとは口が裂けても言えない。能力主義の親の前ではいつも張りつめているのがわかる。ラーメンなど、と親が失笑するだろうことも。「ラーメンをらぁめんて書く店、なんかヤダ」診察では軽口を言うが、再び登校できるかもわからない。

「——いいよ」

「え、先生、いいの?! 絶対、絶対だよ」

 菜摘の顔がぱぁっとほころぶ。

 そのころ僕は精神科ではないから。

 涼介は、言葉を苦く飲みこんだ。

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処方はラーメン 和泉眞弓 @izumimayumi

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