2000年後のあるじへ

後日譚〜2000年後のあるじへ

 あるじとリリィ共和国を飛び出して5年。


 とても幸せだった。


 アップデートされた異世界【ヴァルファリア】は広く雄大で、我らの力を以てすれば安寧の地を見付けるのは容易いことだった。


 ただ、見付けるのが容易かっただけで、安寧を維持するのは困難だった。


 【第一勇者】に認定されてしまったあるじに、平和の二文字など無かったのだ。


 それでも、世界中のスライムを従え、大厄災【魔神の足】を赤道に封じ、大厄災【魔王の檻】を討ち破ることができたのは、とても良かったし、楽しかった。


 魔王を倒したすぐ直後、あるじが元の世界に帰ってしまったことだけが心残りだ。


 ゆっくりと、別れを惜しむことすらできなかった。


「お館はまた来てくれるって――お館様を信じて待ちましょう」

「そうよ。ボスのことだから、その内ひょっこり道端に飛び出してくるに違いないわ」

「スライムみたいですが……お師匠なら有り得そうです、ふふっ」

「ダメです! 天使様は空から舞い降りるのが条説です!」


 ロアを皮切りに、バーニィ、アド、リカがやんややんやと言い合いを始めた。

 目に涙を浮かべながら。


 ――2000年が経った。


 この4匹のスライムは、もう居ない。


「次は……私だろう。スマナイね、アウラ」


 大厄災【八龍の宴】が一角、【闇龍】となったミヤが、力無くボヤく。


「そんなことを言うな、ミヤ。あるじとは、もうすぐ会える。そんな予感がするのだ」


 私は呪いの影響で暴れるミヤを【金龍】の姿で抑え込みながら、ミヤに語り掛ける。


「そうか。限界に近いけれど、そういうことならもう少し頑張ろう」


 そう言って、ミヤは再び自分闇龍を制御する。


「メルも新たな【風龍】を見付け、動いているらしい。もうすぐだ。きっともうすぐ……だから――」

「大丈夫。局長と逢えるなら、最期まで足掻いてみせるさ。それまでは、世話になる。アウラ」


 【闇龍ミヤ】は、そう言って、再び眠った。


 あるじ。


 もう2000年経った。


 もう少ししか、私達は頑張れない。


 これ以上、仲間を見送りたくないのだ。


 この願いが叶うなら、何だってやろう。


 だから、どうか……誰か……。


 私達を助けてくれ。



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 超後日談です。

 一旦終わりましたので、前話で止めてもらっても構いません。


 続きは、自作ながらクロスオーバーさせていただきます。


 【いつか勇者となる君は】


第七章の終わり


間章 99%一般人女性

https://kakuyomu.jp/works/16817330667688575447/episodes/16818023212832382422


ここから続く形となります。


※注意 ここから先、百合では無くなります。


アウラとユリのイチャイチャはありません。

ハッピーエンドにはならないかもしれません。


ご覚悟の上で、リンクをどうぞ。

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変スラ道中百合粟毛〜最弱テイマーと7匹のスライム Norinα @NorinAlpha

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