第14話 連続殺人
そういえば、朝ご飯を食べるところだった。
寄り道しちゃったせいで、変な時間を食った。
当初の目的を済ませないと。
トイレに行って、手を洗わないと。
みんなはもう食べ終わっているかも。
そう思って、トイレのドアを開けたところ。
「きゃぁあ!!!!!」
わたしは思わず叫んだ。
セーラさんが洗面台に突っ伏して倒れている。
首からは血のような赤いものが流れている。
殺人現場だった。
セーラさんが死んでいる演技をしている。
「あぁ、びっくりした」
冷静に見れば、なんてことは無い。
ミステリーゲームの台本に沿って死んだ振りをしているだけだ。
落ち着いて状況を確認しよう。
4F 8(空 室) 1(スミレ) 6(空 室)
3F 3(サイリ) 5(セーラ) 7(カグヤ)
2F 4(空 室) 9(ツツジ) 2(空 室)
1F ロビー、キッチン、風呂、スタッフルーム、トイレ
時刻は11:00。
ここは1階のトイレ。
被害者はセーラさん。
首から血が流れている。
頭を殴られたのかもしれない。
近くに凶器は見当たらない。
流しで鏡を見ているときに、後ろから殴られたとか、切られたとか?
流し台には水がちょろちょろと流れている。
「死因とか死亡推定時刻とか教えてくれないかしら?」
カグヤが死んだときは、進行役のトコヨさんがスマホにメッセージを送ってくれた。
==========
被害者:月乃海カグヤ
死因:平らなもので全身を押しつぶされて死亡
死亡推定時刻:深夜2:00~4:00頃
==========
こんなやつ。
セーラさんの分はまだ送られて来ていない。
ただ死亡推定時刻は分かり切っている。
死亡推定時刻は10:30~11:00の間。
10:30には生きていることは確認している。
わたしがスタッフルームに閉じ込められている間に、トイレで誰かが殺したのだろう。
セーラさんの顔をじっと見る。
死体の振りとはいえ、ちゃんと生きてはいる。
血色は良いし、よく見ると皮膚もぴくぴく動いている。
そのままじっとしているのは辛そうだ。
あんまり長時間ずっと死体の振りをしてもらうのも申し訳ない。
わたしはちょっと目を離して、死体の振りをするのは休憩してもらおう。
「ともかくみんなを呼んでこようか」
今ここでセーラさんが殺された。
2人目の犠牲者。
みんなでこの事件について考えないといけない。
わたしはトイレから離れた。
細かい調査は後でしよう。
残りのゲーム参加者は3人。
わたしとスミレさんとツツジさん。
スミレさんとツツジさんの2人は、ちょっと前までキッチンでご飯を食べていたはずだ。
もう食べ終わって移動しているかな?
そう思って、キッチンに向かう。
「どんどん事件が起きるね」
わたしはカメラ撮影をしているカグヤに話しかける。
しかしカグヤは無反応だった。
さっきは喋ってくれたけど、ヒントタイムが終わったら何も喋らなくなっている。
プロ意識が高くて素晴らしい。
そんなことを考えながらキッチンの扉を開ける。
「きゃぁあ!!!!!」
わたしはまたもや悲鳴をあげた。
テーブルの上で、スミレさんが倒れていた。
食事中だったらしく、テーブルの上にはシチューが置いてある。
その横で血を吹いて倒れている。
こんなに連続で死体を発見することある!?
さっきはセーラさんで今度はスミレさん。
わたしがスタッフルームに閉じ込められている間にバタバタ殺されているじゃん!?
わたしはスミレさんの顔をじっと見る。
死んだ振りをしているだけで、実際にはちゃんと生きている。
胸も上下しているし、微かな呼吸音もちゃんと聞こえる。
「う~ん?」
どうだろう?
この殺され方だったら、毒殺なのかな?
毒を盛られたシチューを食べて死んだ雰囲気がある。
しかし、こうなってくると大変だ。
生き残っているのは2人。
わたしとツツジさん。
わたしが犯人でないから、ツツジさんが犯人であることが濃厚。
そのツツジさんはどこに行ったんだ?
「ツツジさんを探しに行こう!」
わたしはカメラを持ったカグヤに宣言する。
カグヤは頷いてくれた。
こうしてわたしとカグヤはキッチンを出る。
ツツジさんを探そう。
ツツジさんの部屋は2階の中央、9号室。
わたしは駆け足で2階に向かう。
階段を昇って、9号室。
ドアをノック。
「ツツジさん? ツツジさん? いますか?」
わたしはドアの向こうに話しかける。
しかし返事は無い。
わたしは嫌な予感がしてきた。
もしや、この流れって。
「ツツジさん? 開けますよ?」
わたしはドアを開ける。
鍵はかかっていなかった。
「きゃぁあ!!!!!」
わたしはこの短時間で3度目の悲鳴。
ツツジさんは部屋の中央に仰向けで倒れていた。
胸には大きなナイフ。
ナイフの周囲には血が流れている。
あれもケチャップかな?
ナイフもおもちゃのものだろう。
たしかスタッフルームに似たような物があった。
段ボール箱の中にしまってあったもの。
こういうときのために使うものだったんだ。
一時は悲鳴をあげてしまったものの、徐々に冷静に考えられるようになってきた。
これは調査パートだ。
調べられることを調べよう。
周囲に怪しいものはない。
この部屋にあるのは布団と鞄だけ。
状況から察するに、ツツジさんはこの場所で誰かに心臓を一突きされて死んだ。
正面から胸を刺されて倒れたのだろう。
ということは犯人とここで立ち話でもしていたのかもしれない。
しかし、こうなると犯人は誰だ?
カグヤは深夜に部屋で死んでいた。
セーラさんはトイレで血を流して死んでいた。
スミレさんはキッチンでシチューを食べて死んでいた。
ツツジさんは自分の部屋で胸を刺されて死んでいた。
残りの参加者はわたし一人。
四季咲サイリのみである。
でも、わたしはわたしだから分かる。
わたしは誰も殺していない。
犯人ではない。
一体、何がどうなっているんだ?
頭の中が混乱でいっぱいになったときスマホに着信が来た。
進行役のトコヨさんからだ。
「え!?」
わたしはトコヨさんからのメッセージを見て驚いた。
カメラを持ったカグヤがわたしの表情を撮ろうと、じっと近寄る。
そんなカグヤに向かって、わたしは問いかける。
「わたしも、今から死ぬの!?」
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