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ただしそれは高校までだった。大学に入ると環境が大きく変わった。インターンシップ参加のことでも、レポート課題の良い評価のことでも、いい思いをすることがなくなった。それでいいと思っている。もてはやされて疲れていたからだ。可愛らしくて天真爛漫な理久を演じるのは嫌になっていた。
バタバタ。二階の階段を上がってくる足音が聞こえてきた。そのままバタンとドアが閉まる音がして、またすぐに開く音がした。
ここにも ”演じるのが嫌になった” 仲間がいる。兄の
「お兄ちゃーん。どっか行くの?」
「おおー、帰ってたのか。コンビニへ行ってくる」
「何か取りに帰って来たの?」
「ジャージから着替えた。お菓子を買ってやる。おいでー」
「うん!」
スマホだけを持って部屋を出た。財布は持って行かない。自分で買おうとすると、久弥が寂しそうな顔をするからだ。小さい頃から同じで変わらない。頼りになる優しい人だ。面倒見の良い、まるでお姉ちゃんのような兄貴だ。中身はカッコいい男だ。本人には言っていない。十分に伝わっているからだ。
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