第10話
「ラビットに話がある」
授業終わりにテラスへ誘われたラビットは殿下の話に驚きで目が点になった。なんと、リアさんが学園を退学になったらしい。
リアは最後まで「私はヒロインなの」と喚いたが、殿下のひと声で退学が決まった。
退学だけでは終わらなかった。リアの両親は商売の邪魔だと。嫌がるリアさんを修道院に入れたそうだ、乙女ゲームとは真逆の結果になる。
殿下は「……なるように、なったんじゃないかな」リアの言葉遣いと嘘、狂言。婚約者がいる男性への接近。
ヒロインの特権でリアは「へんしん」と願うだけで、獣化できた。それを使い、攻略対象だけでは飽きたらずステキな男性に、かたっぱしから声をかけていたみたい。
誘い文句が「私の獣化した、リスの姿をみる? 可愛いわよ」だった。まさか獣化から戻ったあと、さらに誘う計画だったとか。
――さすがにやりすぎね。
「ラビット、お昼寝しよう」
「殿下、午後の授業があります」
いつもと変わらない殿下。
その姿を見て、アルは腹を抱えて大笑いした。
「まったく、ボクの弟子は面白いね」
「え、弟子? まさか、ルルノア師匠ですか? ……どうりで、僕に対して意地悪なはずだ」
なんと、側近のアルはフォックス殿下に魔法を教えた、大魔法使い。なら、なぜ? 私の側近になったのかというと。暇だし、おもしろそうだから。
今では、側近の仕事を楽しんでいる。
「いや〜大魔法使いになってから、人に怒られたのは初めてだ。でも、それがまたいい……」
ルルノア大魔法使いは未知の扉を開いたらしい。
ルフ様は国の宝で、私たちの国を守ってくださるお偉い方。王城にはルフ様しか入れない、特別な部屋があって、その場所で本来の姿で寛いでいるそうだ。
(私は王城の中を散歩中のルフ様と出会い、お茶と話し相手をして、仲良くなったのだけど……)
「ラビットの側は気持ちいいにゃ」
と、ルフ様は言ってくださる。
❀
フォックス様とは、あれからさらに仲良くなったのだけど、彼はいつもイジワルをして獣化させる。
「フォ、フォックス様?」
「フフッ、ラビットが可愛いから仕方がない! 僕の仕事は終わらせたから、いまから一緒に昼寝しよう」
「フォックス様⁉︎ わ、私の王妃教育がまだです。あと、2時間ほどお待ちください」
「嫌だね、待てないから教育係に話をして、王妃教育は休みにしたから安心して」
「休み?」
ウキウキしながら、彼に寝室へと連れていかれる。
「アル、アル?」
「ごめん、お嬢様。フォックス殿下を癒してください。ボクは旦那様に怒ら……報告してきます」
「あ!」
アルは最近、まったく役に立たない。
ルフ様はフワフワと飛んできて。
「アイツもかなり変態になったにゃ。にゃも、いまから寝床にもどって昼寝するにゃ……おやすみにゃ」
ルフ様?
「ラビット、みんなの許可がでた。今日は朝までガジガジするって決めた」
「ふえっ……? まって、朝はまではまだ無理です」
「ことわる」
目を細めて、いじわるく、私の好きな笑顔で笑っていた。
❀
後日。
フォックス様にトリガーを教えて貰ったのだけど。彼のトリガーは自分の好きな人が、自分を好きだとわかったとき心が温かくなると言った。
だから、初めからフォックス様が好き好きなわたしに反応して、彼は獣化してしまったみたい。それは今も変わらず、私がフォックス様を好きってなると、気持ちが良くなり獣化するらしい。
全て、ラビットが可愛いせいだよ。
責任とってね、だって!
殿下! 溺愛する相手がまちがっています! にのまえ @pochi777
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