第4話
「おやめください、フォックス殿下。リアさんがテラスでお待ちですよ。いますぐ、テラスへ戻ってください」
フォックス殿下は、ヒロインのリアさんと一緒にいないと。
「嫌だ。僕はあの子とお茶の約束していない。ラビット、どうして学園に入学してから逃げるの?」
「に、逃げてなどおりません」
「嘘だ、僕を避けてる」
――ダメ⁉︎
私の好きな、フォックス殿下。大好きな殿下がわ側にいるだけで好きがあふれてしまい。獣化への『トリガー』を引いてしまう。
殿下は知っているはずなのに。
さらに私近付き、首筋にキスした。
「ぴゃぁ!」
――フォックス殿下が、私の首筋にキスしたぁ!
私の鼓動がトックン、トックンと跳ね。
フォックス殿下、好きが大きくなる。
「も、もう無理ぃ!」
ポン! 私の姿は黒ウサギに変わり、身につけていたドレスは脱げ、すべてアルの魔法の箱に回収された。
「アル、アル――!」
ウサギの姿でアルを呼んだが、フォックス殿下に捕まった。その様子をまったり見ていたルフ様はフワリと、自分の体を浮き上がらせ。
「フォックス、ラビットに意地悪をしてはダメですにゃ」
と注意するも。
「ルフ様、これの何処が意地悪ですか? ――でも、僕をそうさせてしまうのは、可愛いラビットのせいですよ」
しれっと答えるフォックス殿下に。
ルフ様は呆れ顔を浮かべた。
「フォックスのやり方は卑怯にゃ。獣化した、ラビットをアルに渡すにゃ」
「嫌です」
私を返さないフォックス殿下に。
「フォックス殿下が、ラビットお嬢様を大切にされているのはわかっております。しかし、いくら婚約者でも、獣化したお嬢様に触れてはなりません!」
「うるさい! ラビットの従者アル、君にだけは渡さない!」
天下は魔法を使って、私ごと己の姿をけした。
「にゃっ、消えた。アルの正体に気付かず、敵視するとは……奴はまだ子供にゃ」
「ええ、フォックス殿下はお嬢様が好きで、好きで、食べてしまいたいくらいに好き。婚姻前の性交渉は遠慮していただきたいのです……僕が旦那様に怒られる」
なげくアルに、ルフ様は無理だと首をふる。
「アイツに我慢は無理にゃ……出会ったときからラビット一筋。悠長に魔法を使いこなして、今や、ラビットの後を付け回す変態にゃ」
変態。フォックス殿下にピッタリな言葉だった。
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