第3話
イベント当日。フォックス殿下とのお茶の席にらリアさんが現れたら「用事を思い出した」と去ることにした。
そうすれば、フォックス殿下とリアさんには邪魔者がいない。2人きりなので、運ばれた苺のケーキを仲良く食べ合いっこする、それをわたしは遠目に眺める。
我ながらいいアイデアを思いつきました。
さて、テラスへお茶に行きましょう。
❀
数分後。フフ、やりました。
先ほど「用事を思い出しましたわ」と、そそくさその場を離れて。テラスが眺められる木の枝に座り、2人を見守っている。
「ラビット様、興奮して落ちないでくださいよ」
「そうにゃ、気をつけるにゃ」
「わかっている」
木の下では興奮気味の私を呆れながらも。アルとルフ様はお茶をしながら、落ちないか守ってくれている。
「アル、私もアルが焼いたクマさんクッキーが食べたいです」
「はい、はい」
木の上から手を伸ばして、クマさんのクッキーを取り食べはじめる。
「クッキー美味しい! アルはまた腕を上げた?」
「それはよかった。はい、紅茶です」
「ありがとう」
木の上でお茶をしながら、テラスでお茶をする2人を眺めようとした。――あれ? テラスからフォックス殿下の姿が消えた。突然のことで、リアさんも驚いている様子。
「ウソ、フォックス殿下はどこにいったの?」
「……ラビット、ここだよ」
嗅ぎ慣れた柑橘系の香りがして、長い腕が、私を後ろから抱き寄せた。
「ラビットは酷い……用事があると言って僕を置いて行ったくせに。こんな所でお茶をしているなんて妬ける」
拗ねた声と、殿下の温かい体温を背中に感じた。
嬉しいけど、フォックス殿下は私といては。
「フォックス殿下、離れてください」
「嫌だね。あ、ラビットの頬にクッキーがついてる」
後ろから殿下に、チュッと頬にキスされた。
「ひゃっ、フォックス殿下⁉︎」
「フフ、ラビットの甘い香りが濃くなった――いいな、ラビットの甘い香り」
殿下の花が近付き、後ろから首筋を嗅がれる。
「やっ……!」
離して。と、腕の中でジタバタ暴れても、離してもらえず、暴れたぶんだけ殿下の腕の力が強くなった。
「ラビット、さっきは逃したけど。今度は逃さないよ」
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