語り手だぁれ?
星雷はやと
第1話 『私は』だぁれ?
「やぁ……ただいま……」
一週間ぶりに部屋のドアが開き、疲れた顔を覗かせる家主の男。
「喉は渇いていないかな?」
男はコートを翻し此方へと歩み寄り、私へと手が伸ばした。
「痛っ!」
私に触れようとした罰だ。男の指先からは赤い滴が垂れた。
「元気そうだね……」
指を押えながら、私に笑顔を向ける男。学習しない男である。私を此処に連れて来た張本人であるのに、私のことを何一つ理解していない。
「もう行かなきゃ……。じゃあ、いい子で待っていてね」
腕時計を確認すると男は眉を下げ、私に手を振り部屋を後にした。
私はそれに対して、言葉をかけることも手を振ることも出来ない。
私はこの時期、一か月に一度ぐらいに水を貰えれば大丈夫である。
私には身を守る棘があり、不用意に触れることも出来ない。
そう、私はサボテンである。
語り手だぁれ? 星雷はやと @hosirai-hayato
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