第7話:《ステータス共有》

「な、なんですかあれは⁉」


 地元民のシーナでも初めて見る魔物だったらしい。


 あまりの恐ろしさからか、叫び声を上げるシーナの声は震えていた。


「さっき話したろ? 俺たちはあの魔物に殺されかけたんだ」


「は、早く……今すぐ逃げましょう!」


「無理だ。完全にあいつのターゲットになってる。背中を見せた瞬間に殺されるぞ」


「そ、そうは言っても……」


 戦うしかない。


 だが、現時点でまったく勝てるビジョンが浮かばなかった。


 召喚獣を上手く囮に使いつつ、俺とシーナの二人で逃げる――というのがベターな選択肢に思われるが、シーナを抱えて逃げられるのか? という疑問も同時に浮かぶ。


 どちらにせよ、戦闘は避けられない。


 腹をくくった時だった。


 ――――――――――

⚠戦闘力の差が大きすぎます

 スキルポイントを10消費して《限界突破》Lv.2→Lv.3にレベルアップしますか?

 《限界突破》Lv.3習得後に魔石を規定数消費し、★3の魔物を召喚した後、《限界突破》Lv.3を使用して、召喚獣を★5にランクアップしますか?


▽《限界突破》可能な召喚獣

・銀スライム

・銀ひよこ

・銀トカゲ

 ――――――――――


 そういえば、さっき魔物を倒したときにレベルが上がっていたな。


 状況を整えるには少し時間がかかるかと思っていたが、自動ですぐにできるようだ。


 ★4の魔物ではまだ明確に勝てるビジョンが浮かばないが、★5になれば状況が変わるかもしれない。


 俺は、迷わずにメッセージに従った。


 目にもとまらぬ速さで魔物が召喚され、一瞬のうちに《限界突破》が完了した。


 ――――――――――

 名称:金スライム(★5)×1

 特徴:銀スライム(★4)から大幅に強化されている。


 名称:金ひよこ(★5)×1

 特徴:銀ひよこ(★4)から大幅に強化されている。


 名称:金トカゲ(★5)×1

 特徴:銀トカゲ(★4)から大幅に強化されている。

 ――――――――――


 銀色だった魔物は、金色に変わっていた。


 そして、今回の変化はこれだけではなかった。


 ――――――――――

 召喚獣が★5に到達したため、《ステータス共有》が有効になりました!

 使役する魔物 [3体分] のステータスを共有します。

 ――――――――――


 ――――――――――

 レベル:5

 職業:ガチャテイマー

 スキルポイント:602


 生命力:150 [+12276]

 魔力:148 [+11905]

 物理攻撃力:18 [+3633]

 物理防御力:17 [+3597]

 魔法攻撃力:17 [+2874]

 魔法抵抗力:16 [+3312]

 攻撃速度:19 [+4206]

 移動速度:16 [+2589]

 ――――――――――


 急に力が漲ってきた。


 感覚的には、以前の力の百~二百倍くらいか。


 ステータス表に加算されている数字と実感はちょうど一致していた。


 《ステータス共有》はどうやら、俺が使役する魔物のステータスを足し算するらしい。


 つまり、俺は一人にして★5魔物三体分の力を持っていることになる。


 こうなると、魔物に戦わせるよりも――


「俺が戦った方が強い……ってことになるのか」


 俺自身が強くなったおかげなのか、さっきのような足が竦むような恐怖は感じない。


 白銀の狼とも十分に戦える力はありそうだ。


 とはいえ、俺には戦闘経験がない。


 素手で戦うのか? せめて、何か武器があれば……。


「ん?」


 と思ったところで、近くに銀色の剣が落ちていることに気が付いた。


 この剣……確か、銀剣士の剣。ということは……佐藤のものか。


 よし、使わせてもらおう。


 俺は剣を構えて、白銀の狼と対峙した。


「カズヤさん⁉ 何をしているのですか⁉」


「見てわからないか? この剣で、あいつを倒すんだよ」


「ひいいいいっ! ま、まだ諦めるには早すぎますよ⁉」


 そうか、シーナには俺が無策で特攻するように見えてしまうのか。


 過剰に心配させたくはなかったが、今は時間がない。


 説明は後にしよう。


 剣なんて使ったことないし、ましてや自分自身で魔物と戦うのは初めてだ。


 どう戦うのが正解かわからない。


 だが、絶対に勝てるという自信だけはあった。


「それは、やってみなきゃわからないだろ?」


 俺はシーナにそう言い残し、白銀の狼の懐に飛び込んだ。


 うおっ! 速い……っ!


 まるで、自分の身体じゃないみたいだ。


 速いだけじゃなく、機敏さも上がっているらしい。身体が思い通りに動く。


 動体視力もかなり上がっているようで、白銀の狼の動きが止まっているかのように見える。


 白銀の狼は俺を恐れたのか、身体を捻って攻撃を避けようとした。


 だが、全く問題ない。


 スピード、パワー、落ち着き。すべてにおいて俺が優っている。


 後出しで魔物の動きについていけばいい」


「さっきまでの威勢はどうした? 格上・・に襲われるのは初めてか?」

 俺はフッと笑い、剣を横なぎに振るった。


 スパアアアアアアアアンンッッ‼


 俺が振るった件は白銀の狼の首にクリティカルヒットし、一撃で首を落としたのだった。


 直後、踏ん張る力を失った動体と頭が同時に落下。


 ドンッと音を立てた。


 ふう……これでなんとかなったようだ。


「えええええええっ⁉ す、すごすぎます……っ! カズヤさんは本当にテイマーなのですか⁉」


 シーナは目をパチパチさせて驚いていた。


「まあ、一応な。正確には★なしの『ガチャテイマ―』ってやつだけど」


「そ、そうでしたね……! ★なし……こんなに強くなれるのですね!」


「俺もまだよくわかってないけど、そうらしい」


「私もカズヤさんくらい強くなれるのでしょうか⁉」


 食い気味に尋ねてくるシーナ。


「え? いや……わからんけど。もしかして、シーナも?」


「はい! 私、★なしの『白魔術師』です」

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