第5話:★4の魔物

 ★3への《限界突破》に成功した俺は、その後も召喚獣たちに魔物と戦わせて次々と魔石の回収作業をしていた。


 現在、スライム(★3)×9、ひよこ(★3)×9、トカゲ(★3)×9という手札に加え、五十個の魔石が手元にある。


 魔物を倒すだけでなく、魔石の回収も召喚獣たちに兼任させることで、かなり効率よく魔石が集まっている。


 しかし、さすがに倒しすぎて魔物の数が減ってきた。


 それに、召喚する魔物が★2である関係から、だんだんと《限界突破》の効率が悪くなっている。


 今のスキルレベルなら《限界突破》は★4までに止めておいて、魔石は貯めておく方針にするとしよう。


 魔石もポケットに入る以上の数を持っておこうとするとかなり荷物になる。あらゆる面でこのくらいがちょうど良さそうだ。


「戦闘を止めてくれ。よく頑張ってくれた。休んでくれ」


 召喚獣の軍勢に戦闘終了の合図を出す。


 そして、魔石を使って《魔物召喚》。


 《限界突破》で召喚獣を強化した。


 ――――――――――

 名称:銀スライム(★4)×1

 特徴:銅スライム(★3)から大幅に強化されている。


 名称:銀ひよこ(★4)×1

 特徴:銅ひよこ(★3)から大幅に強化されている。


 名称:銀トカゲ(★4)×1

 特徴:強トカゲ(★3)から大幅に強化されている。

 ――――――――――


 銅色の魔物たちの色が、今度は銀色に変化していた。


 よし、多分これでかなり強くなってる。


 それにしても、次のレベルの《魔物召喚》はいつ使えるようになるんだ?


 ――――――――――

 レベル:4

 職業:ガチャテイマー

 スキルポイント:324


 生命力:140

 魔力:138

 物理攻撃力:16

 物理防御力:15

 魔法攻撃力:15

 魔法抵抗力:14

 攻撃速度:17

 移動速度:14

 ――――――――――


 レベルはいつの間にか4まで上がっていた。


 スキルポイントは魔物を一体倒すごとに1手に入るようだ。


 なお、使い道がなく今は持て余している。


 レベルアップにより俺自身の能力も上がっているようだが、このくらいの能力値ではまだその辺にいる狼の魔物とも戦える気がしないので、微々たる成長に感じる。


 魔石のストックは三十個。


 やや重いが、一つ一つが軽いので許容範囲だ。


「さて、そろそろ村を目指すか……」


 この森で野宿はしたくないので、稲本たちが向かった村に俺も向かうことにした。

 未だに白銀の狼には勝てる気がしないが、仮に遭遇しても即死するようなことはないはずだ。


 ランクアップした召喚獣たちが次々と魔物を倒し、サクサクと道なりに進んでいた時だった。


「きゃあああああああああ‼」


 近くから、女の子の声が聞こえてきた。


 どうやら、ここを下った先にある崖の下からのようだ。


 様子を確かめるため、急いで声の主のもとへ駆けつける。


「こ、こないで……!やめてください!」


 そこには、座ったまま魔物に剣を向けている少女の姿があった。


 魔物は普通の狼の魔物よりもかなり大きなサイズ。


 白銀の狼ほどではないにせよ、かなり強そうだ。


「な、何してるんだ⁉ 早く魔物から離れて!」


「だ、誰かいるんですか⁉ わ、私……足を怪我してしまって……動けないのです」


 言いながら、立ち上がろうとして倒れてしまう少女。


 ★4に成長した今の俺の召喚獣なら、確実に魔物を倒せる。


 だが、既に魔物は少女に襲い掛かろうとしており、向かわせても間に合わない。


 ……そうだ!


「おい、狼野郎! こっちだ!」


 俺は、足元に落ちていた小石を狼の魔物に思い切り投げてみた。


 グルルルルルル……?


 狼の魔物は少女に向かう足を止め、俺の方を向いた。


「そうだ、こっちに来い!」


 ターゲットが完全に俺に変わった。


 狼の魔物が起こった様子で、俺に襲い掛かってくる。


「今だ! かかれ!」


 召喚獣たちに指示を出す。


 銀トカゲの爪が軽く狼の魔物と接触しただけで、首の切断に成功したのだった。


 ドンっと地面に狼の魔物の首が落ちた。


 急に訪れたピンチ故にハラハラしたが、どうにかなったようだ。


「……ふう」


 俺はほっと息を吐いた。


「あ、あの……ありがとうございます! 旅人の方ですか⁉」


 助けた美少女が足を引きずりながら駆け寄ってきた。


 さっきは焦っていてよく見ていなかったが、めちゃくちゃ可愛い。


「あー……えっと、そうなるのかな?」


「私、シーナ・ラトフォードって言います。この近くのリード村の村人で……足を怪我して動けなくなってしまって、あの……あの……すごく申し訳ないのですが……えっと……」


 かなりの早口で必死に状況を説明し始めるシーナ。


 魔物との遭遇でまだ動揺しているのか、言葉がたどたどしい。


 とは言っても、だいたい事情は把握したので特に問題はない。


「それなら、俺が村まで送っていくよ」


「え……いいんですか?」


「俺もその村を目指してたから、ついでみたいな? それに、怪我してる人をこんなところで放っておけないしさ」


「ふぇえええええええん‼ ありがとうございますううぅ……」


「はっ⁉ な、なんで泣くんだ⁉」


 女の子を泣かせたことなんて一度もなかったので、動揺してしまう。


 俺、別に変なこと言ってないよな?

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