14
預かりもの、ということは、誰かが飼っていたんだろうか。
「……ま、別に隠してるわけじゃないからな。どうせそのうち嫌でも耳に入るだろうし」
そう言って、ヴォジアさんは説明を始めた。
「ここの店、討伐依頼も請け負ってる、っていったろ? 僕がテイマースキル持ちだから魔物持ちも宿に泊ったり、なんなら魔物を預けることもできるから、魔物持ちがよく来るんだよ。だから、討伐依頼もそういう奴向けのが自然と集まる」
口ぶりからして、魔物と一緒に宿に泊るためには、従業員にテイマースキル持ちが必要なようだ。ここの仕事が終わったら、そういう方面の仕事を探すのが早いかな? 猫限定だけどテイマーのスキルというか加護に違いはないし。
「んで、あいつの相棒もそういう奴だった。ラグリスは猫族の魔物だからな。鼠族の駆除が得意だから、そういう系の魔物討伐依頼をよく受けてたよ」
なるほど……! そういう仕事もありだな。猫系の魔物を相棒にして戦う……いいな。
――なんて、のんきなことを考えてたのも束の間。
「でも、ある日の依頼で、そいつは帰ってこなかった。……戻ってきたのはあいつだけ」
「……そ、それって……」
ヴォジアさんは最後まで言わなかったが、その表情を見れば、なんとなく察しはつく。ああ、言われてみれば――「あいつの相棒もそういう奴『だった』」って言ってたな、ヴォジアさん。
過去形。
つまりは、そういうことなのだろう。
別のことを考えながら聞いていたものだから、その違和感を聞き逃してしまった。
「相棒にしか懐かない奴だから、僕やノルンじゃ近付くのも大変ってわけ。飯は食わなきゃ死ぬって分かってるみたいだから大人しく食ってくれるけど、他は駄目なんだ」
「そう、だったんですか……」
そこまで言われてしまうと、流石にもう、つっぱねることはできない。アルベアちゃんの扱いが難しい、というのも事実だろうが、多分、彼と接することで、アルベアちゃん越しに、その相棒だった人を思い出してしまうのが辛いんだろう。ヴォジアさんの表情からして、それなりに仲が良かったに違いない。
仲の良さそうな一人と一頭の思い出があるのに、取り残されたアルベアちゃんが威嚇してくる、という姿を見たくないんだと思う。
「二、三か月の話ですから、貰ってくれると助かります」
そう言って銀貨を渡そうとしてくれるノルンさんを拒むことは、わたしにはできなかった。
――……二、三か月?
そう言えば、そんなこと、ヴォジアさんも言ってたな。確か……部屋を案内してくれたときだったっけ。
預かりもの、というのなら、どうしてに三か月、なんて期限があるのだろう?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます