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 どうして、と気になるけれど、それは聞いてもいいものなんだろうか。なんの気なしに聞いた質問に対して、思った以上に重い返事があったため、ついためらってしまう。ヴォジアさんは隠してないから、ってあっさり教えてくれたけれど、これもそうとは限らない。

 わたしが疑問に思っているのに気が付いたのか、ヴォジアさんは少し迷った素振りを見せ、再び説明してくれた。


「王都の方から高ランクのテイマースキル持ちが来るのにそのくらいかかるんだよ。僕のテイマースキルのランクじゃ、他人のテイム契約の破棄ができないからな」


「テイム契約……?」


 これまた聞いたことない単語だ。なんとなく響きで意味は分かるけれど。


「テイム契約を破棄できるのは結んだ本人か、Aランク以上のテイマースキルを持っている奴だけ……って、おい。まて。お前、あのヴィルトピアの幼体とヴィルドシャッテの子供、ペットみたいな扱いかたしてるが、ちゃんとテイム契約してるんだよな?」


 寂しそうに話していたヴォジアさんの態度が一変した。

 テイム契約なんて、知るわけがない。だって、わたしはついこの間まで、ショドーとひいさまのことを普通の猫だと思っていたんだから。


「待て、待て待て待て! え、あの二匹、テイム契約していない野良なのか? 嘘だよな、嘘だと言ってくれ!」


 ヴォジアさんの慌てた様子に、「知るわけないじゃないですか」と気軽に言えなくなってしまった。でも、テイム契約とやらを結んだ記憶は一切ない。

 わたしは返事をする代わりに目線をそらした。

 それで全てを悟ったらしい。ヴォジアさんが「アンタ、正気か!?」と随分と声が裏返った悲鳴を上げた。


「ヴィルトピアの幼体とヴィルドシャッテの子供なんて珍しいモンとテイム契約してるな、とは思ったが、テイム契約していないなら話は別だ! 幼体や子供だから脅威がない、なんて言ってる場合じゃ――あ、ノルン、お前!」


 いつの間にかノルンさんの姿がない。逃げたのかな、と思ったら、カウンター越しにしゃがんでいるのが見えた。隠れているつもりのようだが、身長の高い彼のことだから、微妙につむじが見えている。おっとりとした、物腰の柔らかい人だというのが第一印象だったが、こういうときの行動は早いらしい。


「その、ヴィルトピアっていう魔物と、ヴィルドシャッテという魔物はそんなに危険なんですか? ――あ、ショドー、おはよ」


 いつの間にかわたしの部屋から出てきていたらしいショドーがわたしの足元へすりよる。ぐにゅぐぅ、と、形容しがたい鳴き声を上げながら。これは甘えたいときの声だ。

 わたしは足元のショドーをひょい、と抱きかかえる。その行動を見ていたヴォジアさんが、小さく悲鳴を上げた。

 ……そんなにビビるほどの魔物なの?

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