それいけ!消費税マン

天主 光司

消費税マン誕生

 小高い丘の上に立つ工場で、一人のおじさんが悩んでいました。

「どうしたら、良いんだ。どうやったら効率よく、血税を集められる」

 おじさんは独り言を言いました。

 そこに一人の老婆がブルブル震えながら、奥の部屋から歩いてやって来ます。

 老婆はしばらくおじさんをジッと見ています。

「空き缶や。朝ご飯はまだかのう」

 老婆が言いました。

「朝ごはんは食べたばかりだろう。ノサヨばあさん」

 空き缶おじさんは言いました。

「そうだったかのう」

「俺はどうやったら血税を多く集められるか考えているんだ。邪魔すんな」

 そう言うと空き缶おじさんは、アンパンを焼いてみました。

 しかし、ヒーローの体になじみません。

「アンパンのヒーローは、ジャムの野郎しか作れないのか……」

 空き缶おじさんの知り合いに、アンパンの頭を持つ正義のヒーローを作れるおじさんが、遠い外国にいました。

 空き缶おじさんはそれをマネようとしたのです。しかし、失敗でした。

 空き缶おじさんは、めげることなく、食パン、メロンパン、カレーパンなどを作りましたが、やっぱりヒーローになりません。

「キー! 私の食事をよこせー」

 ノサヨばあさんが騒ぎます。

 空き缶おじさんは、ヒーロー作りに失敗した、アンパンなどをノサヨばあさんに与えました。しかし、お腹いっぱいなのに、食べようとするのでノサヨばあさんは戻してしまいました。

「空き缶や。朝ご飯はまだかのう」

 ノサヨばあさんが言いました。

「さっき食ったばかりだろう」

「お腹減ったんだよー」

「吐いたからだろう。クソばばあ」

「キー! 私の食事をよこせー」

 そう言うと、目をカッと見開く。

「血税を集めるには消費税を使うに決まってるだろう」

 ノサヨばあさんが突然叫ぶ。

そして、紙だか、布だが、良く分からない、なぞの物に「消費税」と書きました。そしてその消費税をヒーローの首の場所にくっつけると目と鼻と口が浮かび上がりました。

「しょうひぜいー!」

 その謎の物体は、ヒーローの体に馴染み、動き始めました。

「やったー。消費税マンが誕生したぞ」

 空き缶おじさんは大喜びします。

 こうして消費税マンは生まれました。

 その様子をノサヨばあさんはジッと見ます。

「空き缶や。昼ご飯はまだかのう」

 ノサヨばあさんの中で朝から昼へ変わりました。


「消費税マン。お前は、民衆から血税を集めるために生まれたんだ」

 空き缶おじさんは言いました。

「血税ってなんですか?」

 消費税マンは聞きます。

「そりゃ、金だよ。金」

「わかりました。金を集めれば良いんですね」

「ま、そういうことだ」

「それじゃあ、早速集めてきまーす」

 そういうと消費税マンはマントを翻し、飛んで行きました。

「思ったより速く飛べるんだな。あっぱれだ」

 そこにプルプル震えたノサヨばあさんは、じ―と空き缶おじさんを見ます。

「昼食はまだですかのう」

「昼食べただろう!」


町には、人がいっぱいいます。

「お腹へったなあ。早く食事にしなくちゃ」

 いかにもサラリーマンぽい男性が言いいました。

 その言葉を目ざとく聞いた消費税マンをやってきました。

「それなら僕の頭を食べなよ」

 そう言うと、消費税マンは自分の頭をちぎってサラリーマンぽい男性に渡します。

「これって食べられるのか……」

 サラリーマンぽい男性は躊躇します。

 とても食べられそうに見えなかったからです。

「さっさと食べろ」

 消費税マンはサラリーマンぽい男性の口に無理矢理詰め込みます。

「ペッペッ! こんなの食べられるか!」

 まずさのあまり吐き出します。

「さあ、食べたんだから血税をだせ」

「え、血税って、あんたが無理矢理ゴミを食わせたんだろう。だれが出すか!」

「なんだとう。増税パンチ」

 消費税マンは、強烈なパンチをサラリーマンぽい男性にお見舞いしました。そのせいでサラリーマンぽい男性は、鼻血を出して気を失います。

 消費税マンは気を失った男の懐から財布を取り出し、お金を取り出すと財布だけ残して飛び去りました。

「なんか小腹が減ったなあ。食べ物でも食いに行くか」

 町にいた孫正義似のおじさんが言いました。

 それを目ざとく聞いた消費税マンがやってきました。

「それなら僕の頭を食べなよ」

 そう言うと、消費税マンは自分の頭をちぎって孫正義似のおじさんに渡します。

「そんな不味そうな物食べるか。僕はグルメなんだ」

 孫正義似のおじさんは言いました。

「うるせえ。もうちぎったんだから食べやがれ」

 消費税マンは怒りの増税パンチを出します。そして孫正義似のおじさんの顔面に命中しました。

 ペチ……

「そんなパンチ効くか!」

 孫正義似のおじさんは、笑いながら言いました。

「うるせえ! 失敗しただけだ」

 そう言うと、消費税マンはもう一度パンチを繰り出します。

 それをノッソリとした動きで、孫正義似のおじさんは、増税パンチをかわします。すると孫正義似のおじさんのすぐ後ろを歩いていたホームレスにパンチが命中しました。

「ウギャー!」

 ホームレスは断末魔を上げて倒れました。

 首はあり得ない程曲り、腕や足が関節の無い箇所で折れ曲がり、血まみれになり、血の海を作ります。

「な、何をするんだ。罪もないホームレスを!」

「うるせえ! お前が避けるからだろ」

「殴られそうになったら避けるに決まっているだろう」

 消費税マンは孫正義似のおじさんに無我夢中で殴りかかります。しかし、全く効き目がありません。

 孫正義似のおじさんは気持ち悪そうに殴られています。

「おじさん。そいつは人殺しだよ。捕まえて」

 一部始終を見ていた通行人が言いました。

「お、おう」

 孫正義似のおじさんは、そう言うと、ヘロヘロなパンチを出します。

 すると消費税マンにまぐれで当たりました。

「ウギャー!」

 そう言うと消費税マンは倒れます。

 そこに通行人が通報で駆けつけた警察官がやってきました。

「ホームレスを殺したのは、こいつか!」

 警察官が、孫正義似のおじさんに尋ねます。

「そうだぞ」

「よし、逮捕だ」

「あなたが逮捕に協力してくださったのですか?」

 警察官が、孫正義似のおじさんに聞きました。

「ま、まあ成り行きで」

「ご協力感謝します。よろしかったらお名前を教えてください」

「僕は、金藻照蔵と言います」

 金藻照蔵さん、四十八歳は、月収一億二千万の大金持ちでした。

「では後ほど表彰させて頂きます」

 そう言うと消費税マンは連行されて行きました。


 消費税マンが逮捕されたと知るや否や、空き缶おじさんは、知り合いの政治家にして弁護士の妖獄おじさんに電話しました。そして、お金を渡すことを条件に、消費税マンを釈放するように頼みました。

 妖獄おじさんは、消費税マンに利用価値があると思い警察に命令して釈放させました。


「ただいまー」

 消費税マンが帰ってきました。

「お帰り。心配したじゃないか」

 空き缶おじさんは言いました。

「サラリーマンから血税を集めていたのに、金藻照蔵に邪魔されたんだ」

 空き缶おじさんは一人納得しました。

「金藻と言えば、超セレブの実業家じゃないか。お前のパンチが効くはずもない」

「どうしてですか? サラリーマンにはとても効いていたのに」

「お前のパンチは逆進性があるのだ」

 消費税マンのパンチは逆進性があるため、相手の収入が少ない程威力があがりますが、収入が多い相手には蚊が刺す程の威力もありません。

「つまり、お前のパンチは、ホームレス、ネットカフェ難民、失業者、被災者などの弱者には殺人級の威力を発揮するが、超セレブには全く効果がないのだ」

「そ、そうだったのかー」

 消費税マンは愕然としました。

「そしたらどうやって血税を集めれば良いんだ~」

 消費税マンは苦悩しました。

「バカめ。弱者にしか威力が無いのなら、弱者から血税を集めるしかないだろう」

 空き缶おじさんは言いました。

 すると消費税マンの表情が明るくなります。

「そっかー。弱者から血税を集めれば良いんだ」

「わかったら、明日からもっと血税を集めるのだ」

「わかったよ。空き缶おじさん」

「正義の道は険しいのだ。わかったな」

「がんばるよ。空き缶おじさん」

 消費税マンは新たに闘志を燃やすのでした。

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それいけ!消費税マン 天主 光司 @AmanusiKouji

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