021 苦難の成果
俺は今、滝の裏にある洞窟内で正座をしていた。
「クルコン君、僕は悲しいよ。いくら勝つためとはいえ、僕のお尻の処女を奪うなんて」
「……申し訳ない」
あの時は仕方がなかったとはいえ、ペロロさんのお尻に尻穴爆竹の串を刺したのは事実だ。
最初は自分自身に刺そうと考えていたのだが、隙が大きくなり行動も遅れてしまう。
なので効率を考えたら、ペロロさんのお尻を使うしかなかった。
「今も血が出ている気がするよ! どう責任を取ってくれるんだい?」
「えっと……これを」
ペロロさんがお尻を痛がっていたので、俺は頬からぬるぬるすっきりポーションを取り出す。
このローションを使えば、内部が浄化され保護される。
痛みが引くことは、俺自身が試して知っていた。
「えっ? ろ、ローション? もしかして責任って、そういう意味? クルコン君、それはあまりに鬼畜すぎるよ!」
しかし、その効果を知らないペロロさんは勘違いを始める。
「い、いや、待ってくれ。このローションには、特別な効果があるんだ!」
俺がそう弁明して慌てると、ペロロさんはニヤリと笑みを浮かべた。
「ふふっ、分かってるよ。ありがとう。使わせてもらうね」
ペロロさんはそう言うと、俺からローションを受け取る。
どうやらペロロさんは、このローションを知っていたらしい。
おそらく、男色ゴブリンのぬるぬるダンジョンの放送を見ていたのだろう。
俺はそれを自覚して、恥ずかしくなった。
つまり、あの痴態を見られていたということである。
「えっと、こうかな? 意外と温かいね。浄化されるみたいだし、大丈夫だよね?」
ペロロさんはローションを指の先に垂らすと、自身のスカートの中に手を入れた。
俺の前なのに、恥ずかしくないのだろうか。
いや、どのみち放送で見られているのだし、割り切っているのだろう。
「んっ、……これ、すごい。痛くない。見た目はあれだけど、使ってよかったよ」
痛みが引いたことで、ペロロさんの機嫌が良くなった。
このローション、最初はハズレアイテムだと思ったんだよな。
けれども、実際には超有用アイテムだった。
時間経過で中身も補充されるし、今後も活躍することだろう。
そうしてペロロさんのお叱りも同時に終わり、次の行動へと移る。
「やっぱり、だめだったか」
仙人ガッパに盗られていたピンパチは、爆発に巻き込まれて無惨にも壊れていた。
本来なら破損しても、ダンジョンクリア後に直すことができる。
だがあまりにも破損が激しいと、その度合いによって確率でロストしてしまう。
実際ピンパチの残骸に触れた途端、光の粒子になって消えてしまった。
色合いはあれだったけど、結構気に入っていたのにな……。
「クルコン君……」
「大丈夫だ。こうなることも予想はしていたし、仕方がない」
ピンパチはロストしてしまったが、代わりに生き残ることができた。
武器はまた次の物を探せばいい。
けどまあ、ようやく買った鉄の剣を盗まれた時よりも、悲しい事に違いはないな。
ピンパチは、それだけ活躍していた。
俺は光になったピンパチの前で軽く手を合わせると、洞窟の奥へと足を進める。
そして最奥に辿り着くと、中央に何故か銀製色の宝箱が鎮座していた。
「えっ? 宝箱だよ! それに銀色! 凄い!」
宝箱を見つけると、ペロロさんは興奮して声を上げる。
しかしそれも仕方がなく、銀製の宝箱はトッププレイヤーでもほぼ見かけることがないからだ。
人によっては、あまりの出なさに都市伝説のような扱いである。
けれども一応動画には残っているため、存在だけは認識されていた。
その銀製の宝箱が、俺たちの前にある。
これで興奮しないはずがない。
「早く開けようよ!」
「わかった。けど一応罠が無いか慎重に開けよう」
「うん!」
俺たちは
素人目だが、宝箱に罠は無さそうだ。
「あ、開けていい?」
「ああ、いいぞ」
天使のような笑顔を浮かべるペロロさんに、開封を譲る。
あの笑顔を見て、断れるはずがない。
そして、銀製の宝箱が開く。
宝箱の底には、ゴルフボールを一回り大きくしたような水色の玉が鎮座していた。
「これ、何だろう?」
「見ただけじゃ分からないな。ここは鑑定してみよう」
「そうだね」
俺はそう言って頬に入れていた小さなバックから、新たに買い足しておいた鑑定虫メガネを取り出す。
次に宝箱から水色の玉を取り出して、どのような物なのか鑑定をした。
名称:仙人河童の尻子玉
レア度:HR
【効果】
尻に入れることで使用者に吸収され、以下の能力を得る。
・水の生成
・水の操作
・尻弱点
これは、色んな意味で凄いな。
あの仙人ガッパ、正式名称仙人河童の能力が手に入るらしい。
しかしその代償として、尻が弱点になるようだ。
更に能力を手に入れるには、この玉を尻から入れる必要がある。
そう、ゴルフボールよりも一回り大きなこれを。
「ね、ねえ。僕にも見せてよ!」
「あ、ああ。けど、効果については口に出さないでくれ」
「わ、分かってるよ!」
鑑定虫眼鏡は、動画視聴者からは見ることはできない。
だからこそ、少しでも情報は隠すべきだ。
特に尻弱点は黙っていれば、気づかれる可能性は低い。
俺はそう考えながら、ペロロさんに鑑定虫眼鏡を渡す。
それを受け取ったペロロさんは、キラキラした瞳で覗き込んでいた。
にしても、レア度
今のところプレイヤーの間で知られているレア度の中では、一番高い。
そもそも、見つかる宝箱はほとんどが木製だ。
続いて稀に、銅製が見つかっている。
木製は、レア度
対して銅製は、レア度
この流れから考えると、銀製はHRのもう一つ上まで出てくると考えられた。
つまり今回銀製の宝箱から出てきたのは、レア度的には中間に位置する。
ここまでの苦難を考えると、少し落胆してしまうのは仕方がない。
「これ、凄いね……けど、まぁ……クルコン君に譲るよ」
「え“?」
「だって、僕は嫌だよ。分かるよね? それにクルコン君は武器を失っているし、今回のMVPはクルコン君だからね。僕は潔く辞退させてもうらよ」
「そ、そうか……」
ああ、またこの流れか。
俺とダンジョンを共にした人物は、このようにアイテムや装備品を譲ってくれることが多い。
道中のトラウマや、デメリットを考慮した結果なのだろう。
まあお尻を刺された後に、これを入れるのは嫌だよな……。
俺も嫌なのだが……。
「それに僕は前衛だし、ちょうど良いはずだよ。ぶっちゃけ、クルコン君より前衛として僕の方が強いからね」
「ぐっ……」
その通りだが、少し悔しい。
「あとこれを受け入れるなら、さっき僕のお尻の処女を奪ったことを許してあげるよ。まさか、断らないよね?」
「わ、分かった……」
そのことを持ち出されてしまえば、受け入れるしかなかった。
どのみち俺が使った方が、パーティとしてのバランスが良くなる。
仙人河童のように水を操れるようになれば、かなりの戦力になるだろう。
「それじゃあ、ローションとお尻を出してね?」
「え?」
「一人じゃ難しいでしょ? 僕が入れてあげるよ。それに、次は僕がクルコン君のお尻の処女を貰う番だからね?」
「まじか……」
やっとの思いでボス戦を乗り越えたのに、まさかそれ以上の試練が待ち受けているとは……。
俺は、自分の瞳からハイライトが消えたような気がした。
本当に、今度こそ誰か助けてくれ……。
「ふふっ、それじゃあ、お楽しみの時間だよ?」
「くっ、殺せ……」
そして渋々取り出して渡したぬるぬるすっきりポーション片手に、ペロロさんは良い笑顔で俺にゆっくりと近づいて来るのだった。
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