022 尻の処女を失って得た力
よく考えなくても、これは狂っていると思う。
友人とはいえ、異性に自分の尻を
だがそう思っていたとしても、ペロロさんは止まる様子はなかった。
今俺は上半身を地面に伏せて、ひざを折り尻だけ突き出したポーズをしている。
本当に、やるのだろうか?
俺は不安と、なぜか情けなさが込み上げてくる。
「クルコン君、勘弁したまえ! これは治療行為みたいなものだよ。そう思うんだ」
「ぐっ……」
戦力を上げるためには、仕方がない。
ペロロさんの言った通り、治療行為だと思って諦めるしかない。
「僕だって、実は恥ずかしいんだ。考えてほしいんだけど、年の近い異性のズボンとパンツを降ろすんだよ? ね? 恥ずかしいでしょ?」
そのように俺を
本当は、楽しんでいるのではないだろうか?
そう考えてしまう。
くそっ、だとしてもここまできて、ウジウジしていられない。覚悟を決めるしかないか。
俺は軽く深呼吸をすると、覚悟を決めてペロロさんに声をかける。
「わかったから、もう一思いにやってくれ」
「そ、そうかい? じゃ、じゃあ、降ろすからね? ごクリ」
そしてペロロさんは、俺のズボンとパンツを途中まで降ろした。
何だろう、凄く恥ずかしい。頭がおかしくなりそうだ。
「こ、これがクルコン君の……い、入れるよ……」
「ああ……」
ペロロさんは俺に一声かけると、まずぬるぬるすっきりポーションを注入していく。
生暖かい何かが、俺の中に広がった。
まさに、最悪の気分だ。
続いて、とうとう本命の仙人河童の尻子玉を入れにかかる。
ゴルフボールより一回り大きい球体が、押し込まれていく。
「ぐっ……」
「クルコン君、頑張って! あともう少しだよ! ほら、ひっひっふー、ひっひっふー」
「そ、それは出産時の呼吸法だろ……」
「あれ? そうだっけ?」
そんなくだらないやり取りをしている間に、仙人河童の尻子玉は全部入ってしまった。
ローションが無ければ、ヤバかったかもしれない。
いや、現状もかなりヤバイ。
し、尻が熱い。
「ぐぉ!?」
「クルコン君!」
すると尻の中の球体が溶けて、体に中に浸透していく。
そして仙人河童の尻子玉が完全に吸収されると、体中に妙な感覚が出来ていた。
「だ、大丈夫だ。それより、もういいだろ」
「あっ、うん……」
俺は苦行が終わると同時に、パンツとズボンを履き直す。
終わってから思うことだが、ローションがあれば自分一人でも入れられたのではないだろうか?
いや、この話はもうよそう。もう終わったことだ。
考えるだけで虚しくなる。
そうして俺は力を得る代償として、人として何かを失ったのだった。
◆
「ごめんねクルコン君、お尻の処女だけではなく、開発までしちゃって……」
「あぁ……」
「大丈夫だよ。きっと、元に戻るはずだよ!」
「うん……」
あんな大きな球体を無理やり入れたんだ。仕方がないだろう。
今も尻の違和感が半端ないが、ぬるぬるすっきりポーションの効果で幸いにも切れてはいない。
元に戻ることを、俺は信じている。
それよりも、あれだけの代償を払ったんだ。さっそく手に入れた力を試させてもらおう。
俺は気持ちを切り替えて、体の中に増えた妙な感覚を意識する。
手に入れた能力は、水の生成と水の操作。
両手を前に出し、その中央に水の球体を生成してみる。
すると、コップ一杯分くらいの水がどこからともなく現れた。
そしてそれを目の前で見ていたペロロさんは、興奮したように声を上げる。
「す、すごいよクルコン君! これで君も水属性の魔法使い――あ」
しかし、一瞬集中が欠けた途端、水はパシャリと弾けて地面に落ちてしまった。
「ま、まぁ。最初はこんなものか……」
これでは、とても攻撃手段とは呼べない。
「だ、大丈夫だよ。練習すれば、きっとあの仙人河童みたいにできるよ!」
「そ、そうだな。諦めたらそこで試合終了だよな!」
「うん! そうだよ! 頑張れクルコン君!」
「ああ!」
俺は諦めない。あんな苦行に耐えたんだ。それがこの程度のはずがない!
それからしばらく、俺は水を生成し続けた。
だが結果として俺の水生成、水魔法はコップの水をぶつけるくらいの威力である。
更に連続使用したら頭が痛くなり、吐き気までやってきた。
これはいわゆる、MP切れというやつだろう。
そうだよな、あの仙人河童は名前に”仙人”って付くほどだから、それだけ長い間鍛えたはずだ。
手にしたばかりで成果を出せるほど、甘くはないか。
今は攻撃手段というより、どこでも水を用意できるという事を喜んだ方がいいな。
ちなみに試しに少し飲んでみたが、特に体に異変はないので飲んでも大丈夫そうだ。
「クルコン君、これ落ちていたから拾ってきたよ」
「ああ。ありがとう」
すると俺が一人練習している間に、ペロロさんが落としていた激臭の水鉄砲を拾ってきてくれた。
見た感じ破損は無く、問題なく使用できそうだ。
あの仙人河童は、おれのピンパチを奪っていた。
そのことを考えると、この激臭の水鉄砲も手に入れるつもりだったのだろう。
本来プレイヤーが死亡すれば装備品なども消えるが、もしかしたら残ったのかもしれない。
逆に俺が死亡してピンパチが消えたとき、あの仙人河童は間の抜けた表情を浮かべたのだろうか。
まあ、過ぎたことは気にしても仕方がない。
それよりも激臭の水鉄砲の水鉄砲まで失っていたら、かなりきつかったな。
戻ってきて良かった。
そう思いながらペロロさんから激臭の水鉄砲を受け取ると、ふとあることを閃く。
おもむろに、少し離れた地面に激臭の水鉄砲を撃つ。
「くさっ! な、何で今撃ったの!?」
「ごめん。少し試したいことがあるから、見ててくれ」
突然の行動にペロロさんは非難の声を上げるが、俺は一言謝ってから行動に移す。
右手を激臭の水たまりに向けると、集まるように念じる。
すると水は地面から浮かび上がり、ゆっくりと球体になっていく。
そして前方に飛ばすことを意識すると、水は壁に向けて飛んで行った。
「よしっ!」
俺はその出来栄えに満足して、喜びの声を出す。
激臭の水鉄砲は一度外すとどうしようもなかったが、これなら再利用可能だし、不意を突くことができる。
それにこの水が顔面にかかれば、大抵の相手は無力化することが出来るからな。
激臭の水鉄砲の弾数を気にする必要はあるが、十分凶悪なコンボと言える。
「流石クルコン君! さすクルだね!」
「その褒め方はやめてくれ……」
「ふふっ、冗談だよ。それにしてもこのコンボは酷いね。避けたと思って安心したところに受ければ、たまったものではないと思うよ」
ペロロさんは少しふざけながらも、このコンボの凶悪性には気が付いたようだ。
イベントはまだ続くし、このコンボが活躍する時がいずれ来るだろう。
俺は激臭の水鉄砲を頬にしまうと、続いて小さなバックからペットボトルを取り出す。
若干もったいないが、中身を捨てる。
水生成で飲水は用意できるし、問題ないだろう。
そして壁にぶつけた激臭のする水を、水操作で集めてなんとかペットボトルに入れる。
これは実験だ。
本来激臭の水鉄砲から発射された水は、時間の経過で消えてなくなる。
可能性としては低いが、こうして再利用することができれば弾数を節約できるはずだ。
俺はペットボトルのふたを閉めると、小さなバックに入れてから頬へと戻す。
しばらく時間が経ったら、消えていないか確認してみよう。
さて、ボス戦も終わったことだし、あとは脱出するだけだが……。
「転移の魔法陣、現れないな……」
「うん、どうしよっか……」
本来ボスを倒した時、出口が無ければ脱出用の転移魔法陣が現れる。
しかし、仙人河童を倒したのにもかかわらず、それが現れる気配がなかった。
これは、マジで困ったな。
俺とペロロさんはこの洞窟から脱出するための方法を、改めて考えることになった。
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